V.A./FRIDAY AT THE HIDEOUT(2001)

画像60年代半ばのデトロイトで、金曜の夜限定でオープンしていたクラブ・HIDEOUT。
主宰のデイヴ・レオーンはクラブと同名のレーベルもやっていて、HIDEOUTに出演していたバンドたちのレコードもリリースした。
それらのシングル音源を集めたのがこのアルバム。
48分半で21曲も収録されている。
(21曲中5曲が2分以下)

以前紹介したオムニバス『WHAT A WAY TO DIE』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1787.html)に収録されていたPLEASURE SEEKERSもHIDEOUTからのリリースで、PLEASURE SEEKERSはこのアルバムにも2曲収録されている。
クレジットを見ると、その2曲ともデイヴ・レオーンの作詞作曲。
PLEASURE SEEKERSに限らず、このアルバムに収められているUNDERDOGS、FOUR OF US、FUGITIVESもデイヴの曲を演っていて、デイヴが単なるクラブ経営者/レーベル・オーナーではなかったことが窺われる。
しかもUNDERDOGSの7inchはリプリーズからもリリースされていたりして。

アルバムのサブタイトルは“BOSS DETROIT GARAGE 1964-67”となっている。
その通りの音が聴ける1枚。
MC5やTHE STOOGESが登場するちょっと前の、若くてプリミティヴな熱に溢れたバンド群。
後にプロデューサーに転向するダグ・ブラウン率いるDOUG BROWN AND THE OMENS(ボブ・シーガーが在籍していた時期も)とか。
あのグレン・フライが在籍していたこともあるというMUSHROOMSとか。
スージー・クアトロを輩出したPLEASURE SEEKERSとか。
(それにしても美人ぞろい。特にキーボードの子)
SRCの前身バンドに当たるFUGITIVESとか。
大して有名にもならず、後に有名になるメンバーがいたワケでもない他のバンドも良い。
ボブ・ディランやTHE BYRDSのカヴァーを演っているフォーク・ロック風のFOUR OF USも、洗練されない素朴さがなんとも言えません。
そう、ファズ・ギターがバリバリ鳴るようなイカレたサウンドのバンドがない代わり、どのバンドも素朴で一生懸命な感じ。

60年代末のHIDEOUTには、MC5なんかも出るようになっていたそうで。
クラブが何年までやっていたかはよくわからないんだけど、レーベルとしては70年代半ばまで活動していて、このアルバムには収録されていないボブ・シーガーはもちろんのこと、BROWNSVILLE STATIONやあのファントム(!)なんかもリリースしている。
デイヴ・レオーンは1999年に心臓発作で亡くなったとのこと。
そのへんが詳細に書かれている故ビリー・ミラーのライナーノーツも読み応え大。
ただ、さっきAmazonで見たらかなりの値段…。


追記:
PLEASURE SEEKERSのキーボードはクアトロ姉妹の長女・アーリーン。
最年長の彼女はバンドがCRADLEに移行するとミュージシャンをやめてマネージャーに転身。
あと、2017年のAmazonではけっこうな値段が付いていたこのアルバム、今はあちこちでとりあえず普通の値段で出ている。

(2025.2.8.)

「TAREME NIGHT」@新宿カバチヤ

画像29日。
MONE¥i$GODのヴォーカリスト、カンの奥方であるカコ嬢が主催する「TAREME NIGHT」第1回。

所用のため到着が遅くなり、一番手のTHEうんこに間に合わず。
俺がお店に着いた時には、二番手のポコンチの演奏が終わるところだった。
カバチヤは、“広島SOUL酒場”を標榜する雰囲気の良いお店。
一時期はカコ嬢がレギュラーでカウンターに立っていた時期もアリ。
もっと早く訪ねる予定だったのだが、随分遅くなってしまった。

で、カコ嬢の手になる美味しい明石焼きがお客さんたちに振舞われた後、トリのももづか怪鳥(画像)が登場。
ソフトレスラーズでのライヴを最後に観たのはもう10年ほども前のことだ。
お馴染みのジャイアント馬場風な赤いパンツ姿。
顔にはバカボンパパ風のメイク、両腕にはその日の日付とイヴェント名が書いてある。
で、弾き語るのだけど。
コレが抱腹絶倒。
コミック・バンドの名鑑みたいな本に載ったこともあるソフトレスラーズ/ももづか怪鳥、この夜も絶好調だった。
意味不明だったり明瞭だったりする歌詞のすべてが笑えて、それだけでなくももづか怪鳥の歌い方や表情まで含めて、もうおかしくてしょうがない。
シャネルズ「ランナウェイ」の替え歌でアントニオ猪木のことを歌ったり、ボブ・ディランやTHE STREET SLIDERSの影響を受けて作ったという曲が見事にそれ風な一方で歌詞が思いっきりくだらなかったり。
実にお見事でした。
このイヴェント、不定期ながら今後も開催予定というんで、都合が付いたらまた行きたい。

お客さんの中には、実に新潟からわざわざ来たという人も。
カコ嬢の人徳が窺われます。

イヴェント終了後も楽しく話しているうちに、サクッと電車逃す。
あとは朝まで新宿を彷徨。
そして電車で寝落ちしてあやうく山手線を1周しかかったり。
相変わらずダメ人間ぶりを存分に発揮。


(2025.2.8.改訂)

BORED!/PIGGYBACK

画像昨年12月のリリースで、春先に入手してたんだけど、最近まで聴けず。
80年代末~90年代前半のオージー・パンク界で気を吐いたバンド、BORED!…の、コンピレーションに提供した曲やシングルB面曲や未発表曲を集めたLP2枚組。

BORED!はデイヴ・トーマス(ヴォーカル、ギター)を中心に、1987年に結成。
バンド名はDESTROY ALL MONSTERSの曲名に由来。
『NEGATIVE WAVES』(1989年)、『FEED THE DOG』(91年)、『JUNK』(92年)と3枚のオリジナル・アルバムをリリースした後、93年にアウトテイクとライヴ音源を収録した編集盤『SCUZZ』をリリースして、94年に解散している。
このLPは91~94年の録音を集めたモノで、デイヴとラッセル・バリセヴィック(ベース)以外のメンバーは録音毎に違い、トリオ編成だったりギター2本の4人編成だったり。

ラッセル・バリセヴィック加入以前には一時期元GODのティム・ヘメンズレー(故人)がベースを弾いていたりもして、音楽性はGODやTHE YES-MENあたりにも近い、デトロイト・ロックとハード・ロックとグランジ/オルターナティヴの影響を混ぜ合わせたようなハイエナジーなロック。
で、このアルバムではカヴァー曲も多くて、そのチョイスが非常に興味深い。
THE VELVET UNDERGROUND「Waiting For The Man」、70年代オージー・パンクのCHOSEN FEW「There's A Lot Of Going Around」、THE WIPERS「Over The Edge」、更にはD.O.A.「Disco Sucks」にHUSKER DU「Pink Turns To Blue」、RUDIMENTARY PENI(!)「Rotten To The Core」、THE SAINTS「Demolition Girl」と。
一番びっくりしたのは、AMERICAN SOUL SPIDERS「Teenage Jesus」のカヴァー。
録音は1991年。
そんな早い時期にAMERICAN SOUL SPIDERSのカヴァーを演っていたバンドが、オーストラリアにいたなんて!

リリース元であるスペインのBANG!レコーズは、最初のリリースが『NEGATIVE WAVES』の再発。
そしてこの『PIGGYBACK』は、レーベルにとって記念すべき100番目のリリース。
BANG!の、このバンドに対する思い入れが嫌でも伝わるというモノだ。

見開きジャケットの2枚組LPで、デイヴ・トーマス自身によるライナーノーツ、未発表の写真の数々と、気合入ったリリース。
限定500組だけど、このへんのバンドがそれほどバカ売れするとも思えないんで(苦笑)、まだ入手可能か?


…ってか、80年代後半以降のオージー・パンク/ガレージのバンドを紹介し続けてる日本のブログって、ここぐらいなのかなあ。
そんなこのブログも、ウェブリブログに引っ越して1年が経過しました。
この1年でアクセス総数が実に8万件ちょっとです。
皆様、ありがとうございます。


追記:
リリースから8年後、Discogsでは流石にそれなりの値段が付いている。

(2025.2.7.)