
以前にも何度か書いたが、90年代初頭~半ばぐらいの俺は、それまで熱心に聴いていたへヴィ・メタルへの関心がやや薄れ、一方で後に買いまくるようになるガレージやサイケもまだそんなに突っ込んで聴いてはいなかった。
メタルと並行して入れ込んでいたパンクは相変わらず聴いていたものの、GASTUNKの解散を機に日本のインディーズをあまり聴かなくなり。
で、何を聴いていたかを簡単に言えば、当時CROSSBEATなんかに載っていたような音楽、ということになる。
ROLLINS BANDを筆頭に、SONIC YOUTH、DINOSAUR Jr.、NIRVANA、MUDHONEY、BUTTHOLE SURFERS、SMASHING PUMPKINS…そしてFISHBONE。
(もちろんMOTORHEADとイギー・ポップとBLUE OYSTER CULTはいつでも聴き続けていたけど)
俺が初めて聴いたFISHBONEは、FMでかかった「Lyin' Ass Bitch」だった。
デビュー・ミニアルバム『FISHBONE』(1985年)収録曲。
軽快でユーモラスなスカあるいはスカ・パンク。
それから数年後、当時の彼女に聴かされたのが『THE REALITY OF MY SURROUNDINGS』(91年)。
ヘヴィかつ弾力に富んだリズムとグルーヴに、ハードにしてラウドなギター。
ハード・ロックにレゲエにファンク、なんでもござれの強力過ぎる楽曲。
そして随所に溢れるユーモアのセンス。
ぶっ飛ばされた。
『THE REALITY OF MY SURROUNDINGS』リリースと同じ1991年に『FISHBONE』が廉価再発されたので、それを買い。
リアルタイムでリリースされたFISHBONEの作品で初めて買ったのが、今日紹介するこのアルバムだった。
フルアルバムとしては4作目になる。
そしてFISHBONE史上最もヘヴィなアルバム。
ハード・ロックというよりもメタル色が一気に強まり。
スピード・ナンバーはあっても、前作「Sunless Saturday」のような疾走感はなく。
ずっしり重い。
スカ/レゲエのリズムはあっても、初期のような軽快さはなく。
本当にヘヴィ。
ホーンズも以前ほどフィーチュアされなくなっていて。
歌詞もそれまでになくシリアスなムードのモノが多い。
そんなワケで、評価は分かれるらしい。
初期の軽快で明快なスカ・パンク/ミクスチャー・ロック路線を好む人には重過ぎるようで。
個人的には大好きな1枚。
アルバムの出来としては『THE REALITY OF MY SURROUNDINGS』にはかなわないと思うが、イイ曲がそろっているし。
単にヘヴィなだけでなく、音の厚みや緻密さもFISHBONEのアルバム中で一番だろう。
特に「Properties Of Propaganda」や「Nutt Megalomaniac」といったP-FUNK風の重量級ファンク・ナンバーが実にカッコいい。
「Lemon Meringue」には、実際P-FUNK一派のビリー“ベース”ネルソンがバッキング・ヴォーカルでゲスト参加している。
あと、クリス・ダウド(キーボード、トロンボーン)のヴォーカリストとしての活躍が印象的な1枚でもある。
特に彼が作曲して歌っている「Black Flowers」…イントロのメロトロン音から引きずり込まれる。
(ライヴでもクリスがキーボードを弾きながら歌っていた)
このアルバム前後の来日を2回観ているけど、ホントにカッコよかったなー。
特にアンジェロ・ムーア(ヴォーカル、サックス)の、川崎CLUB CITTAのフロアの一番後ろまで観客の頭上を泳いで行ったり、新宿LIQUID ROOMでPAスピーカーの上からフロアにダイヴしたりといったパフォーマンスは凄まじかった。
あと、何故かドラムセットを横向きに設置して、ニヤニヤしながら叩いてたフィリップ“フィッシュ”フィッシャーのたたずまい。
アメリカで売れなかったのが信じられん。
(『THE REALITY OF MY SURROUNDINGS』の全米99位が最高)
で、メタル路線を牽引していた張本人、ケンダル・ジョーンズ(ギター)は、このアルバムを最後に脱退。
以後のアルバムにはここまでのヘヴィさはなくなる。
一方ケンダルの脱退で、途中でジョン・ビガム(ギター)が加わる以外は結成以来不動だったオリジナル編成が崩れ。
そのことで失われたモノは小さくなかったのかも知れない。
ケンダル脱退の翌年、1994年にはクリス・ダウドも脱退。
以後メンバー交代が相次ぐことに。
ただ、一時期オリジナル・メンバーがアンジェロ・ムーアとジョン・ノーウッド・フィッシャー(ベース、ヴォーカル)だけになったりしたものの、近年ウォルター・A・キビーⅡ(トランペット、ヴォーカル)とフィッシュが戻っているそうで。
(2025.3.3.改訂)