音楽と人生と商売

画像2010年にTHE STOOGESが“ロックの殿堂”入りを果たした時、スピーチでイギー・ポップが語った「音楽は人生であり、人生は商売じゃない」という発言は、本当にイギーならではのクールな言葉だったと思う。
この発言はTHE STOOGES/IGGY AND THE STOOGESのドキュメンタリー映画『ギミー・デンジャー』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201706article_10.html)でもフィーチュアされていたし、ネット上でも畏敬と共に引用されていたりするのをよく見かける。

で、イギー・ポップ最高だなあと思ったりする一方で。
このブログでは、あまり脚光を浴びることなく長い間サイドとかバックとかで活動してきたミュージシャンを何度か取り上げてきた。
COLOSSEUMやTEMPESTで知られる一方、ビリー・スクワイアやTHE MONKEESのバックも務めたマーク・クラークとか。
https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1319.html
MANFRED MANN'S EARTH BANDで長く活動した後に長らく渡り鳥生活を続け、近年AC/DCに電撃復帰(?)を果たしたクリス・スレイドとか。
https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1305.html
THE VIBRATORSにROXY MUSICにADAM AND THE ANTSにFIXXと謎の振り幅を見せたゲイリー・ティブスとか。
https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1257.html
中心メンバーじゃなかったり、雇われだったりした人たち。
ピラミッド構造の音楽業界では、むしろそういう人たちの方が数は圧倒的に多かったりするワケで。
彼らにとっても、多分音楽は人生のはず。
反面で彼らの演奏能力は、多くの局面で専らメシのタネ=商売道具として機能してきたのではないかと。

それでもマーク・クラークは還暦過ぎてソロ・アルバムを出し。
クリス・スレイドもゲイリー・ティブスも、一応リーダー・バンドをやっていたことはある。
(クリスはAC/DCのトリビュート・バンドだったけど…)


ここで引き合いに出すのが適切かどうかわからないんだけど、たとえばニール・マーレイなんかどうだろう。
名手ではありつつ、やっぱりというか「人生は商売じゃない」なんて言いそうに見えないタイプのミュージシャン。
COLOSSEUM ⅡやBRUFORDやNATIONAL HEALTHで活動していた70年代後半(ニール20代後半)は、多分プログレ/ジャズ・ロックの世界でひとかどの存在になってやろうと思っていたのでは。
しかしその時代にプログレだジャズ・ロックだでビッグになれるはずもなく。
結局WHITESNAKE(画像)に正式加入。
このあたりからニールの“割り切り人生”が始まったような。

特にPHENOMENAとかGOGMAGOGとかFORCEFIELDとか、諸々のプロジェクトに関わるようになってからは、場当たり感(?)が加速。
ランディ・カリフォルニアに石川秀美と無節操感バリバリ。
VOW WOWのベーシストとしては素晴らしい働きをしていたと思うけど、NATIONAL HEALTHで活動していたニール・マーレイにとって、ヘヴィ・メタルが本当にやりたい音楽だったとは思えない。
(いや、実際のところは知らんけどさ)

しかしニール・マーレイは活動を続けた。
シンガーがリー・ハートに代わったFASTWAY、ブライアン・ロバートソン(元THIN LIZZY~MOTORHEAD)のMONA LIZA OVERDRIVE、そしてBLACK SABBATH(!)にブライアン・メイ。
更にはポール・ディアノ&デニス・ストラットンの元IRON MAIDEN組のバック。
コージー・パウエルにピーター・グリーンにマイケル・シェンカー…。

ニール・マーレイにここまでソロ・アルバムはなく、リーダー・バンドもない。
人生が音楽、かつ商売。
しかし誰がそれを否定出来るだろう。
彼のような無数の人たちが、音楽業界を支えている。


追記:
ニール・マーレイ、2025年8月には75歳。
いまだソロ作やリーダー・バンドはない。

(2025.4.18.)

山下ユタカ近況

画像今や本人がスマホでツイッターやってる(一時期からは想像もつかない…今じゃ一応パソコンだって持ってるんだぜ。ただしスマホはしょっちゅう壊す)ということもあり、最近このブログでは御無沙汰だった“山下ユタカ近況”。

昨夜我が地元埼玉は宮原ヒソミネ(そんなところにライヴハウスあったんだ!)で山下ユタカ=ハッチがヴォーカルを務めるゲルチュチュのライヴがあり。
都内で用事済ませてから向かったところが宮原近辺で沿線火災があって電車が止まり。
ヒソミネに着いた時にはイヴェントは無事終了しておりました(苦笑)。
とりあえず1ヵ月ぶりで山下氏に会って路上飲み。
一応元気でした。

何でこのタイミングなのかは知らないけど、出世作(?)『ノイローゼ・ダンシング』(画像)が無料公開され。
新作ネームは公式サイト(http://yamashitayutaka.com/)やnote(https://note.mu/yutaka_yamashita)で発表されていたのが、新たに60ページの新作読み切り「狂い咲き産業道路」のネームが本人のツイッター(https://twitter.com/yutaka_yamasita)で公開されたり。
新作が雑誌に載ることこそないものの、山下ユタカ、実は話題は途切れてない。
(バンド活動も盛んにやってる)

「狂い咲き産業道路」は持ち込んだ先で「需要がない」とか言われたそうだけど、山下ユタカテイストがバリバリの、ファンならたまらなそうなお話。
(ツイッターからだとかなり見づらいが)
他にも新しいネームが幾つもあるんだそうで。
相変わらずの旺盛な創作意欲。

しかし…ペン入れされて完成した作品は、残念ながら「残像のラプソディ」(クラウドファンディングで制作された作品だったが、今ではnoteで読める)以来皆無なんだよなあ。
(『カリスマ』もあったけど、完結してない以上“完成”とは言えんだろう)
それが一番の問題だ。
どうにかなりませんかいのう。

毎回言ってるけど、“需要がない”んだったら、魂売ってでも(苦笑)需要がある作風で1本やれないかな。
これまた毎回言ってるけど、本人の作家性が全然出ないような請負仕事でも、あの絵で描いたら絶対面白くなると思うんだが。


2年前から漫画原作の仕事もやってる俺が今妄想してるのは、いつか原作:大越よしはる、作画:山下ユタカ…でやれないかな、と。
それで売れたらお互いウィンウィンだ(笑)。


追記:
原作:吉良大介、作画:山下ユタカってのもアリだぜ。

(2025.4.18.)

IGGY POP/HEROIN HATES YOU(1997)

画像アリスタ時代のイギー・ポップについてはしばらく前に編集盤『POP SONGS』を紹介したが。
https://lsdblog.seesaa.net/article/201711article_9.html
正直言って、スタジオ作が今ひとつピリッとしない時期…真髄はライヴにあったと言えるだろう。
(ってか、イギーの真髄はいつだってライヴにありなんだけど)
そうすると突き当たるのはやはりブートを含むライヴ音源。

で、コレは割と有名な1979年リリースのブートLPをCD化したモノ。
オリジナルのLPは2枚組で、A~C面が79年11月30日LAでのライヴ、D面のみ77年9月23日パリでのライヴを収録していたが。
(79年11月のライヴを12月にはブートLPとしてリリースする早業)
このCDではA~C面の内容を70分余り収録している。
KROQの放送用音源がソースで、音質は極上。
しかもCD化に際してプロのエンジニアがリマスタリング、不鮮明ながら写真満載のブックレット、クレジット完備。

当時のパーソネルはイギー・ポップ(ヴォーカル)、ブライアン・ジェイムズ(ギター:元THE DAMNED)、アイヴァン・クラール(ギター、キーボード:元PATTI SMITH GROUP)、グレン・マトロック(ベース:元SEX PISTOLS)、クラウス・クルーガー(ドラム:元TANGERINE DREAM)。
ある種スーパー・グループと言えるラインナップ。
(クラウスを除く)
当時の“バンマス”はアイヴァンだったようだが、彼はギターよりもキーボードに回ることが多い。
というか、1曲目「Real Cool Time」をはじめ、キーボードの影も形もなかったオリジナルのTHE STOOGES楽曲でもキーボードを弾きまくっていて、「Funtime」に至ってはシンセ・ソロ垂れ流し状態(苦笑)。
リード・ギターは基本的にブライアン。

ともあれ「I Wanna Be Your Dog」をはじめとするTHE STOOGESの曲、「China Girl」をはじめとするソロの曲、そしてカヴァー曲。
(この頃のライヴでは、何故かIGGY AND THE STOOGES時代の曲は演奏されていない)
ライヴでのイギー・ポップは、同時期のスタジオ盤とは別人のようにワイルドでアグレッシヴ。
スタジオ盤では軽過ぎたクラウス・クルーガーのドラムも、ライヴではかなりマシ。
(しかしBLONDIEのクレム・バークが叩いていた音源と較べてしまうと、分が悪過ぎる)
オリジナル・アルバムでは浮き沈みのあったイギーだが、ライヴではいつでもハッスルしていたのがよくわかる1枚。


(2025.4.18.改訂)