MUSTANG JERX/EASTER MONDAY

画像MUSTANG JERX、前作『ハカノナカ』(2013年)から5年ぶりとなる新作アルバム。
先月リリースされたモノだが、先日のライヴ会場で入手。
『ハカノナカ』を入手したのが昨年12月にライヴ観に行った時で、近いうちに旧譜レヴューで紹介しよう…と思っていたら、新作が出ていた。

パーソネルは2009年のアルバム『MOJO LIGHT』から不動の高森サトル(ヴォーカル、ギター)、利果(ベース)、マグ(ドラム)。
オリジナル・メンバーは高森一人だが、現編成で既に10年。
帯には“GOD SPEED! 10 Songs 22Min 22Sec!”とあるが、CDプレイヤーの窓には22分20秒と表示される。
1曲平均2.2分。

初期はステージ上でロックの神を下ろす儀式(?)を行ない、イギー・ポップがギターを持って歌っているようなライヴを見せていたMUSTANG JERXだが。
その後はブラック・ミュージックに接近し、『MOJO LIGHT』そして『A』(2011年)でねっとりとした黒いグルーヴを聴かせた。
『ハカノナカ』でややパンク/R&Rに揺り戻した感があり。

新作では、パンクやデトロイト・ロック、ブルーズやR&Bの要素がイイ塩梅にミックスされた感がある。
黒くてブルージーだけど渋くなくて、ハードで疾走感あるけど飄々としてる。
今の編成で10年醸されたグルーヴ。

録音は1日(イースターの月曜日)、ミックスも1日。
まさに“録って出し”という感じの音。
“マスタリングby中村宗一郎”みたいな爆音でもなく、Lo-fiの極みみたいなRAWサウンドでもなく、実にナチュラル。
ステージでの迫力には及ばないながら、本当にナチュラル。
言うなればパブ・ロック的。
それでいい、それがいい。

『MOJO LIGHT』にも収録されていた代表曲中の代表曲「Choo-Choo Train Of Tears」がボーナス・トラック扱いで再録されている。
9年を経ての再録。
加入当初ほぼ初心者だった利果の成長ぶりを実感出来る。
10年間醸された今の3人のグルーヴが堪能出来る。

しかし、言ってみればコレはレパートリーが収められたカタログ。
このバンドの真髄はやはりライヴにアリ。
8月4日に新宿red clothでライヴありますから、興味持たれた方は是非。
(俺は残念ながら行けない可能性大だが…)


『EASTER MONDAY』、6月27日より発売中。


(2025.5.14.改訂)

「DIRTY SCUM PARADE Vol.3」@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR

画像ブログ書けないぐらい忙しいのに、全然行けなかった6月の反動のようにライヴに出かけてた7月。
(…と言ったって6本だけどね。毎月10本以上観てた00年代前半とは比較にならない)
ともあれ29日。
このブログでも紹介した流血ブリザードのベスト・アルバム『歩くオリモノ』(ホントひでえタイトルだな…)のレコ発。

用事済ませてHEAVEN'S DOORにたどり着いたのが開演予定時刻の16時間際。
さて入りますか…と思ったら、階段に行列。
えーっ。
やっとフロアに入ると…うわー、パンパンだ。
こんなに人が入ったHEAVEN'S DOOR、久しぶりに見たな。
で、DJがIRON MAIDENなんか回してるぞ、なんて思ったら流血ブリザードのユダ様その人だったという…。

一番手として一人でステージに立ったのは十四代目トイレの花子さん。
俺が彼女を観るのは約5ヵ月ぶり、3回目となる。
フロアには彼女を目当てに早い時間からやって来た知り合いも何人か。
用意していた“ネタ”を家に忘れて来てしまったとのことで、本人的には100%の出来ではなかったのかも知れないが、以前観た時には少なからず感じられた間延びしたところがなく、良いパフォーマンスだったと思う。
(まあ、疲れたとか言って途中で曲止めちゃったりするんだけど)
小学生のように小さな体躯(身長150cm)に似合わぬ気合の入ったシャウトと、ふにゃふにゃしたMC(一方で、時にファンを罵倒しまくる)のギャップたるや。
あと、シャウトに較べて弱過ぎると思っていたノーマル声での歌唱が以前よりもかなりきちんと音程を追えるようになってきていて、成長を感じさせたりも。
まあなんだかんだ言っても、結局終盤の腐りかけ食材まき散らし&トマトジュースのシャワーで地獄絵図なんだけどね。
今回は人多過ぎて後ろに逃げ切れず、顔やらあちこちにちょっとトマトジュースがかかってしまった。
(フロアはトイレの脇まで物販ブースが並んでいて、「ここでアレやるのか、マジか…」と思った)
そして最後はみんなで掃除、フロアはすっかりきれいに。

二番手は大阪の4人組、Theサード。
ファンキーなところもある、キャッチーでストレートなパンク/R&R。
十四代目トイレの花子さんの後ではインパクトは弱かったが(ってか、そんなところで勝負してどうする)、関西のバンドらしい盛り上げ上手なステージングで楽しく観られた。
レパートリーの中に「明日ある世界」という曲があり、そういうポジティヴさこそがこのバンドの信条なのだろう。

三番手、名古屋のVanishing。
ベース兼ヴォーカル、ギター、ドラムのトリオ。
いわゆるヴィジュアル系な見た目だが(髪の毛いっぱいあっていいなあ)、音楽的にはむしろ骨っぽくスラッシーでハードコア色もあるヘヴィ・メタル。
ルックスはカッコつけ全開だけど、ステージングにはカッコつけたところはなく、楽しそうに笑顔を見せながらプレイしていたのが印象深い。
ちなみに十四代目トイレの花子さんのパフォーマンスで被害を被ったのはこのバンドのグッズであった…。

四番手にMAD3。
MAD3!
この2018年にMAD3のライヴを観る時がこようとは。
もちろんMAD3名義で活動を再開していたのは知っていたし、実はアルバムのリリースに際してインタヴューを依頼されたけどスケジュールが合わなくて断わってしまったなんてこともあったのだが。
正直、懸念はあった。
名前は同じでも、“あの”MAD3ではないのだから。
かつてのMAD3のバッド・コピーだったらどうしよう…と。
結論から言えば、“今のMAD3”として十分納得なステージだった。
現在の編成は今年に入ってからだそうだけど、新しいリズム・セクションは腕利きぞろい。
ガレージ界を席巻した往時の編成のような、メンバー全員がカリスマ性を放ちながらせめぎ合う…というパフォーマンスではなかったものの、MAD3の名を汚さない演奏だったと思う。
フロアの若い観客からも「カッコいい!」「最高!」と声が飛んでいた。
音楽性も焼き直しに終わらず、18年のMAD3を提示出来ていたと思うし、エディのギターは昔より更に上手くなっていたし。
マイクスタンドはステージ脇に置かれてMCにしか使われず、全曲がインストゥルメンタル。
そしてエディがユダ様に捧げたジミ・ヘンドリックスのカヴァー「Little Wing」。
“あの”MAD3はもう戻らない。
しかしエディは18年に、今のMAD3をやっている。
なんだかいろいろな意味で泣きそうになった。

泣きそうなのはともかくとして、フロアに入ってから1バンドにつき1杯ずつ律儀に(?)ビールを飲み続け、まだ19時台だというのに、五番手のJET BOYSが登場する頃にはけっこう回って来ていた。
JET BOYS、1年半ぶりくらいに観る。
「嘘でもいいから盛り上がってくれ!」と絶叫するオノチンをはじめとして、全員がやりたい放題の大暴れ。
フロア前方も大暴れ。
俺もつい暴れてしまった。
(通院中のおっさんが…)
豆乳やらビールやらでステージ上はたちまちびしょびしょに。
ドラムの上によじ登ったオノチンが転落するのと同時にドラムセットも崩壊。
シンバルスタンドの脚は折れていた。
(ああ、弁償だな…)
しかし委細かまわず裸になりヌンチャクを振り回しギターで大根をすりおろすオノチン。
(この前観た時もだったけど、やっぱり最近は全裸にはならないのね)
還暦超えてもこのままでいてください。

HEAVEN'S DOORのスタッフがてきぱきと片づけを行ない、ステージ上はたちまちきれいに。
六番手として現れたのはT.C.L。
俺は全然知らなかったけど、もう10年以上やっている横浜のバンド。
サウスポーのベースをはじめとして、厚みと音圧が凄い。
何コレ本当に3人で演奏してる音なの?
そしてそんな演奏に乗って吠えまくる怒涛のツイン・ヴォーカル。
(MCは凄く和やか)
カッコよかった。

このへんから更に酔いが回ってぐわんぐわんになってくる。
(記憶もかなり怪しい)
トリ前はCOCOBAT。
初めて観た。
ユダ様もよくコレだけ豪華なメンツを集めたもんだなー。
これまたへヴィでラウドでゴツい。
アルバムはしばらく出してないと思ったけど、司令塔TAKE-SHIT(ベース)を中心にまだまだ活動中。
貫録の横綱相撲。
何しろ結成が1991年。
トリの流血ブリザードが影も形もなかった頃だ。
(まあそれ言ったらMAD3なんて80年代の結成だけど)

そして今夜の主役・流血ブリザード(画像)。
よせばいいのに酔いに任せてステージ前に。
そしてひたすら暴れてました。
(通院中のおっさんが…)
見ればステージど真ん前で十四代目トイレの花子さんがキレッキレのヘッドバンギングをカマしている(笑)。
フロア前方はみんな大暴れで、眼鏡を飛ばされてる奴複数。
(俺は死守)
イヴェントのタイトル通り、ダーティーでスカムなパンク・ロックのオンパレード。
しかし、物を投げたりの演出はわりと控えめで、この晩はかなり演奏に集中していた感じ。
(ユダ様も全裸になったりとかしなかったし)
最後はお約束の「I Love Me」でハッピーな幕切れ。
全8バンド(というか7バンド+1アイドル)、開演から6時間経過していた…。


酔っぱらってヘロヘロで帰宅。
まあ帰ってからまた飲んだけどね。
まだ通院してますよ。


(2025.5.14.改訂)

D・O・T + MUSTANG JERX@四谷OUTBREAK

画像2日続けてヘンな時間(?)にブログ書いてますが。
まあそれはそれとして。

27日。
約5ヵ月ぶりのOUTBREAK。

定刻を5分ほど過ぎて、D・O・Tが登場。
D・O・Tが一番手とは、なんと贅沢なイヴェントでしょう。
約1年ぶりに観たのだが…なんと今年最後のライヴ(!)なのだという。
冒頭からHIROSHIのベースの音が不調。
幸いすぐに回復したが、何しろ演奏陣はベースとドラムのみ、アンプリファイされている楽器はベースだけなワケで、それが音出ないとなったら致命的だからねこのバンドの場合。

ともあれ音が安定したら、あとはもう唯一無二のアラビック・ハードコアが炸裂しまくる。
フロアも最初から大盛り上がり。
バリバリ鳴りまくるHIROSHIのリード・ベース。
(以前よりアクションも派手になってた気が)
相変わらず白いシャツの襟を立てて、速いのに重いドラムを叩きながら更にコーラスも取るMARU。
(フィルインがアルバムとかなり違ってる曲があった。手数増えている!)
そして歌いながら踊りまくり、合間にステージ脇に置いてあるいろいろな“鳴り物”をとっかえひっかえするNEKO。
(ステージ上は音が回っていたのか、モニターしづらそうにしている時もあったが)
もちろん、NEKOがフロアに突入してのダンスも飛び出した。

前にも書いたけど、観る度に曲目も曲順も演出もアレンジも変えてくるのがD・O・T。
一方で激しくもハッピーなステージングは不変。
来年の再始動に期待。


お客さんの平均年齢高めだったのか(?)、D・O・Tの出番が終わると、フロアが椅子で埋め尽くされてしまう。
こんなOUTBREAK初めて見た。
ともあれ二番手は約7ヵ月ぶりに観るMUSTANG JERX(画像)。
レジェンドなメンバーがそろったD・O・Tの次とは…と思ったら、元々一番手でオファーされたのが、マグ(ドラム)の仕事の都合で間に合わない、となったんだそうで。

お客さん大半座ってるし、ちょっとアウェイ感アリか、という状態で始まったステージだったが。
高森(ギター、ヴォーカル)が上半身裸になると、相変わらずの黒っぽくもファストなR&Rで快調に飛ばしていく。
D・O・Tや他のバンド目当てのお客さんも大いに盛り上がっていた。
ヘンテコな(?)右手の動きで鋭いカッティングを聴かせながら、左手小指にはスライドバーがはまったままでギュインギュイン唸りまくる高森のギター。
小さな体を反らせて指弾きの粘っこい音を紡ぐ利果のベース。
シンプルなドラムセットからはみ出した巨体でパワフルにぶっ叩くマグ。
ラスト「チューチュートレイン」の前まではMCなしで、高森と利果のジャンプと共に次々と曲が切り替わる。

今の編成でもう10年ぐらい経つ。
俺が初めて観た頃のギラギラした感じは薄れたけど、飄々としつつも別に渋くはなっていないMUSTANG JERX。
そして仕事を抜けてきたマグは仕事に戻って行った…。


さて、この日のイヴェントは“オーストラリアのP.J.ハーヴェイ”なんて呼ばれたりもするペニー・アイキンジャー(カタカナ表記は“イキンジャー”になってるけど、こないだラジオで聴いたら“アイキンジャー”って発音してた)がメインだったんだが。
仕事がアレだったんで、MUSTANG JERXまで観て泣く泣く退出。
でも2バンドだけでも満足度高かった。
(最後まで観られたらもっと楽しかったんだろうけどさ)
なんか凄くいろんな人に会ってアガりました。


追記:
ペニー・アイキンジャー、この時点で知らなかったと思ってたんだけど。
CD棚にありました。
BARN HOMESあたりで買っていたらしい…。

(2025.5.13.)