映画『アメリカン・ミュージック・ジャーニー』

画像アメリカのポピュラー・ミュージックの伝統と今を総まくりするドキュメンタリー40分。
40分!
そう、この映画、40分しかないのだ。
TV番組サイズ。
そして、何故か日本語吹き替え版での公開。
しかし、実によく出来ている。
原題は“AMERICAN MUSIC JOURNEY”ではなく“AMERICA'S MUSICAL JOURNEY”。
なるほどという感じ。

“主役”に当たるのは2013年に故アヴィーチーとのコラボレーションによる「Wake Me Up」をヒットさせたアロー・ブラック。
(若い人かと思ったら、もう40歳近いのか)
彼が地元LAを離れ、新曲「My Story」にアメリカの多様な音楽スタイルのエッセンスを持ち込もうと旅をする、その間に触れる様々な音楽とミュージシャン…みたいなお話。
アメリカ音楽の多様性、そしてそれらがかつて奴隷だったアフリカ系アメリカ人や、アイルランドやキューバからの移民といった実に多様な民族の文化から織りなされてきたことに主眼が置かれているので、パナマからの移民2世であるアローの起用は実に納得。

ニューヨークでルイ・アームストロングの偉大さを偲び。
黒人やフランス系移民やネイティヴ・アメリカンが混じり合うニューオーリンズで結婚パレードに加わり。
ブルーズの街シカゴでラムゼイ・ルイスと語り合い。
カントリーの都ナッシュヴィルで18歳の天才的バンジョー奏者ウィロー・オズボーンと演奏し。
エルヴィス・プレスリーを輩出したメンフィスでケヴ・モとR&Rを楽しみ。
デトロイトでゴスペルに触れ。
マイアミでグロリア・エステファンに出会い。
そしてアロー・ブラックはワシントンDCに辿り着き、国会議事堂をバックに「What A Wonderful World」を歌い上げる。
さて彼の新曲の出来や如何に…。

何しろ40分しかないので、深みの様なモノはあまり期待出来ない。
それにしても、40分という短い尺でよくもまあこれだけいろいろ詰め込んだモノだ。
グロリア・エステファンを別とすれば、基本的に50年代までのいわゆるルーツ・ミュージックに焦点を当てた作品と言えるが、それだけではなくヒップホップのダンスやEDMのフェスティヴァルの模様なども映し出される。
昔の写真と動画を時にCGと不可分にミックスしたダイナミックな映像も見応えアリ。
一方ダンスその他のパフォーマンスを見ると、その身体能力の高さに驚かされてしまったり。

本当に短い映画なんで、内容的には公式サイト(http://americanmusicjourney.jp/)に説明されていることでほぼすべてと言っていい。
しかし実際の音と映像は、多くの音楽好きの心に響くことだろう。


『アメリカン・ミュージック・ジャーニー』、11月16日(金)よりイオンシネマ、新宿武蔵野館他で2週間限定公開。


(C)VisitTheUSA.com

EL ZINE VOL.33

画像はい、EL ZINE最新号発売です。
ゾロ目の33号だけど、VOL.0から始まってるんで、実際には通巻34号。
来年夏にはなんと10周年ですよ…。


今回はPINK FAIRIESについて書きました。
前号まで3回続いたMOTORHEADの続きと言えなくもない。
ところでMOTORHEADがなくなって3年経つのに、PINK FAIRIESは今年新作をリリースしているという…。
基本的には70年代の3作を押さえればいいバンドだと思うけど、最新作ではMOTORHEADの初代ドラマー、ルーカス・フォックスが参加しているというサプライズが。

他の記事も濃いです。
特集は“WOMEN in HARDCORE”。
更にマレーシアでカセット中心にリリースするレーベル、ブラック・コンフリック・レコーズのインタヴューとか。
フィンランドのデス・メタルを語る座談会とか。
前号でインタヴューが載ったカメラマンYoshi Yubai氏の作品とか。
(あれっ、コレは「バーチャファイター」の“デュラル”…?)
茨城県のクラスト・パンク・バンドATARAXIAのインタヴューとか。
TOM AND BOOT BOYSのカナダ・ツアー・レポート第2弾とか。
(やっぱり写真が小さい…)
パンクスが他に存在しない兵庫県但馬(何処?)で活動するD-Beatバンド・BARROWSのインタヴューとか。
(コレは実に興味深い)
このブログでも以前ライヴの模様を紹介した酢酸カーミン・ナカムラルビイ嬢のインタヴューとか。


今年はここまで完全に隔月刊ペースで発行されたEL ZINE。
そうすると次は年末ということになりそうだけど。
山路編集長が今引越し中らしく、今のところ次号の原稿依頼は来てません。
さあ、どうなるでしょうか。


EL ZINE VOL.33、31日発売。

UTOPIA紙ジャケSHM-CD

画像はい、トッド・ラングレンのUTOPIAじゃありません。
AMON DUUL Ⅱ人脈の方です。
30年以上前にキングレコードから国内盤LPが出てたけど、国内CD化は今回が初めて。
しかもダブル紙ジャケ+SHM-CD。
ライナーノーツを書きました。
(先月のAMON DUUL Ⅱ6枚と違って、残念ながら歌詞対訳はないが)

UTOPIAは当時AMON DUUL Ⅱのプロデューサーだったオラフ・クブラーとベーシストだったロウター・マイトによるプロジェクト。
アルバムは1973年のコレ1枚。
演奏にはクリス・カーラー(ギター)、ジョン・ヴァインツァール(ギター)、ダニエル・フィッシェルシャー(ドラム)といったAMON DUUL Ⅱのメンバーはもちろんのこと、PASSPORTやHABOOBやEMBRYOといった当時のミュンヘン人脈が寄ってたかって参加。
(もちろんAMON DUUL Ⅱ諸作で印象的な鍵盤類を聴かせたジミー・ジャクソンも)
リリース年を見てわかるとおり、『CARNIVAL IN BABYLON』(72年)、『WOLF CITY』(72年)、『VIVE LA TRANCE』(74年)当時のAMON DUUL Ⅱにかなり近いサウンドが聴ける。
1曲目「What You Gonna Do?」ではAMON DUUL Ⅱのレナーテ・クナウプが歌っているし、『WOLF CITY』収録曲「Deutsch Nepal」の別ヴァージョン(この曲で演奏しているのはほとんどAMON DUUL Ⅱのメンバー)も聴けるしというワケで、AMON DUUL Ⅱ番外編と言ってもイイ1枚。
その後『VIVE LA TRANCE』の時点ではロウターとダニエルが脱退していて(ロウターは1曲ゲスト参加)、続く『HIJACK』(74年)以後はオラフもAMON DUUL Ⅱのプロデュースから離れることに。

昨年ドイツのロングヘアからプラケースのCDで再発された時もそこそこ話題になったけど、今回はLP発売時の見開きジャケットが再現されているのが嬉しい。
もっとも、このサイズだと中ジャケットのクレジットは小さ過ぎて全然読めない…。
しかしインサートには1曲毎の参加メンバーがきちんと表記されています。


『UTOPIA』、25日より発売中。


(2022.10.24.改訂)