7月のDJ(その1)

画像はい、6月に続いて7月もDJ2本入ってます。
まずは大森発・日本一狂ったDJイヴェント(しかしその実態はプロレス団体)「CLUB-D」。
なんと60回ですってよ。
なので60回記念のスペシャルな(?)内容で開催されるそうです。
俺が参加するのは2月以来だったっけ。



SOUTH TOKYO ROCK&DJ EVENT 「CLUB-D」 Vol.60

7.25(Thu)

大森AIN'T NO#

Open 19:00
Start 20:00
Close 23:00
Charge \1,000(1Drink込み)

大森AIN'T NO#
大田区大森北1-34-14 ツインビル1F(JR京浜東北線大森駅東口徒歩5分)

Tel:09041340191

アクセスマップ
http://never13never.at.webry.info/201107/article_7.html

DJ
Die-suke
Z(高円寺海賊放送)
イガラシ(室伏)
ベースやすし(やすしーず)
大越よしはる
NATSUMI
KIMI
pulp(DISCO1990)
Agai
キャプテンCLUB-D(仮)

タイムテーブル
20:00〜20:20 KIMI
20:20〜20:40 イガラシ
20:40〜21:00 大越よしはる
21:00〜21:20 pulp
21:20〜21:40 キャプテン
21:40〜22:00 ベースやすし
22:00〜22:20 Agai
22:20〜22:40 NATSUMI
22:40〜23:00 Z
23:00〜 クローズ(Die-suke)


…というワケで俺の出番は20時40分から。
いつもよりちょっと短いけど、記念すべき回にふさわしい内容でお送りしようと思います。
皆様、是非お越し下さい。
ってかキャプテンCLUB-Dって誰よ?

夜のストレンジャーズ/STILL CRAZY(2005)

画像ブギ大臣・夜のストレンジャーズ。
本当は彼らの(一応)1stアルバム『BEAUTIFUL LIFE』(2003年)を紹介しようと思ったのだが、何故か見当たらない。
うーん、何処行った。
ともあれコレは彼らの(一応)2ndアルバム。

俺がこのバンドを知ったのはもっと前、彼らが“幻の”1stアルバム『prince of ghetto』(2001年:後に再発)をリリースした頃に遡る。
東高円寺U.F.O.CLUBで行なわれたオールナイトのイヴェント(他にどんなバンドが出ていたのか、今となっては覚えていない)に出演した、初めて聞く名前のバンド、それが夜のストレンジャーズだった。
いかにもニヒルな感じの男前なリズム・セクションを従えてステージに現れた、なんだか昭和な感じの眼鏡の男が背中を丸めてギターを弾きながら歌う、やさぐれた日本語ロッキン・ブルーズにたちまち魅了され。
終演後、眼鏡の彼=ミウラに「ジャンゴ・ラインハルトとか好きでしょ?」と話しかけ。
お互いにひどく酔っていて、二人でうひゃうひゃ笑って話した。
(話したというか、酒飲みながらひたすら二人でうひゃうひゃ笑ってた記憶が)
その時に『prince of ghetto』を入手。

彼らはすぐに都内のライヴハウス界隈で評判となり。
そうして『BEAUTIFUL LIFE』の次に出たのがこの『STILL CRAZY』。
“きっと誰かはあざ笑うだろう/きっと誰かは涙流してくれるだろう”“きっと何かは手に入るだろう/きっと何かはずっと無くしたままだろう”(「Rollin' Stone」)
“近所の学生 道いっぱいに拡がって歩く/ほんと迷惑 傍若無人な奴らだ/俺は突っ込むぜ 俺はチャリで突っ込むぜ/それが俺 それが俺/町一番の鼻つまみ者”(「ブラインドミウラストレンジャー's ブルース」)
“道化の華ならば はみだしてしまえ”(「道化の華」)
“ハイライトは俺の煙草じゃない/なんでベッドの下に落ちている”(「Who's Been Smoking In My Bed?」)
笑わせて泣かせる、まさに人間の業の肯定(by立川談志)と言いたくなるような歌詞が、ブルーズ(ブラインドミウラストレンジャーって…)やR&Bやジャズの影響を折衷した腰の据わったビートに、パンクの勢い(ミウラはTHE CRAMPSとかも好きだった)を加味して放たれる。
ライヴでの鉄板曲となった「Drunk Or Die」も収録。
大好きなアルバム。

ちょうどこのアルバムが出た頃だったか、幡ヶ谷CLUB HEAVY SICKからの帰り道、知り合いの女の子と駅に向かって歩いていたら、向こうからミウラが歩いてきた。
彼は俺を見ると駆け寄りざまに「たまきんトリオ~!」と絶叫しながら抱きついてきた。
(意味不明)
やっぱりお互い酔っていた。

その後、このバンドのベーシストが交代する頃には俺はライヴに出かけることが激減、そのまま現在に至り。
ミウラとも10年近く会っていないはず。
しかし夜のストレンジャーズは今でもロックし続けている。
年内には10枚目のアルバムを出すらしい。

映画『グッド・ヴァイブレーションズ』

画像THE UNDERTONESを輩出したことで、70年代のUKパンクをある程度掘り下げた人なら御存知であろうレーベル、グッド・ヴァイブレーションズ。
本作はそのオーナーであるテリー・フーリーの、70年代半ば~80年代初頭の数年間を切り取った、伝記的な映画。
(“伝記映画”と言うよりは“伝記的な映画”と言うべきだろう)

映画の制作は2012年で、英国で公開されたのは13年という。
けっこう前の作品だが、昨年日本国内での自主上映企画“アイルランド映画が描く「真摯な痛み」”で上映されたのをきっかけに、日本での劇場公開が実現することになったのだそうで。
(ちょっと前に紹介した映画『ノーザン・ソウル』と同じような経緯だ)

THE ROLLING STONESやTHE KINKSといった英国のロック・バンドや、THE SHANGRI-LASなどの60年代ポップスを愛する青年、テリー・フーリー(リチャード・ドーマー)。
60年代からDJをやっていて、最近になってルース(ジョディ・ウィッテカー)という素敵な彼女も出来た。
ほどなくルースと結婚したテリーは、生計を立てるためにレコード店を開こうと考える。

それだけなら何処の国の音楽好きにも共通な話だが、ただひとつ違っていたのは、テリー・フーリーが住んでいたのが北アイルランドのベルファストだったということ。
当時の北アイルランドはカソリックとプロテスタントの宗教対立による紛争の真っただ中。
テリーがレコード店グッド・ヴァイブレーションズを開店した1977年は、北アイルランドにツアーにやって来たアイルランドのTHE MIAMI SHOWBANDのメンバーたちがプロテスタント系の右派武装勢力・アルスター義勇軍に殺害されてから2年後だった。
事件の後、北アイルランドを訪れるツアー・バンドは激減、おまけに街の中は紛争のためあちこちが廃墟のような状態。
60年代は宗派の隔てなく付き合っていた友人たちも敵味方に分かれ、テリーがDJを務めるバーを訪れる者もほとんどなく。
テリーはそんな中でレコード店を開いたのだった。

一方テリー・フーリーが店を開いた1977年は、英国をパンク・ロックが席巻した年でもあり。
ライヴハウスに出かけたテリーは、そのパンクの波がベルファストにも押し寄せていることを知る。
そしてハコに出入りする未成年者を摘発しようとやって来た警官たちに、ステージ上のパンク・バンド(RUDI)とフロアを埋め尽くした若者たちが決然とノーを突きつける様に、かつてない感動を覚えることに。

レコード契約などあるはずもなかったRUDIのため、テリー・フーリーは自分の手で彼らのレコードを作ることを決意し、自身の店の名を冠したレーベル、グッド・ヴァイブレーションズを立ち上げる。
RUDIやTHE OUTCASTSのレコードをリリースした後、大して期待もせずに付き合ったTHE UNDERTONESが演奏した「Teenage Kicks」は、テリーとレコーディング・エンジニアのデイヴィー(リーアム・カニンガム)の心を激しく揺さぶり。

THE UNDERTONESのレコードを世に広めるためロンドンに渡ったテリー・フーリーだったが、大手レコード会社は何処も相手にしてくれず。
最後に訪れたBBCで、UNDERTONESのレコードはほとんど偶然のような成り行きでトップDJ、ジョン・ピールの手に渡り、そして…。
…というのが前半のあらすじ。

それにしてもこのテリー・フーリーという人…理想主義者の純粋さで一点突破し続ける熱血漢だが、逆に言えば現実が全然見えていない大馬鹿野郎でもあり。
理想主義者ゆえに大儲けなどはまったく考えず、メジャー進出することになったTHE UNDERTONESの版権も破格の安値で売り渡してしまう。
そんな具合だから店やレーベルの経営は立ち行かなくなるし、猪突猛進が過ぎて妻ルースや親友デイヴ(マイケル・コーガン)、そしてバンドたちとの関係も壊れて行き。

しかしテリー・フーリー、本当にピュアな人だ。
どうにも憎めない、愛すべき大馬鹿野郎。
店の経営を立て直すために企画した大きなギグでは、会場前に集まった金のないファンたちをあらかた無料で入場させてしまって大赤字とか(苦笑)。
万事がそんな調子なので、映画を観ている間、こっちはテリーの成功物語に涙して喜び、運命の暗転にはらはらし、事態が何とか収まるとほっと安堵し…というのを繰り返すことになる。
しかもこれが実話に基づくというのだから。
エンドロールのクレジットでは、この映画はテリーの物語に“インスパイアされた”云々…とあったので、全部が全部実話そのままではないと思うが、山あり谷ありの物語に仕立てた脚本(コリン・カーベリー&グレン・パターソン)の良さもあるのだろう。
(実際俺も途中でかなり涙を流した)

笑えて泣けて、そしてちょっと苦い後味も残る映画。
キリスト教とイスラム教どころか、カソリックとプロテスタントというキリスト教徒同士、そして元々は隣人や友人だったはずの人たちが血で血を洗う紛争を繰り返した北アイルランドの現実の重みには思わずぞっとするし。
(多くのニュース映像が用いられている)
しかも諸々がテリー・フーリーの楽天性とか楽観主義とかキャラクターで何とかなってる気がするだけで、実際には何も解決してないケースが多過ぎ(苦笑)。
それでも楽しく観られてしまう。
本物のテリーは70歳の今も元気に暮らしているそうなので、どなたも安心して観てください(笑)。

映画を彩るTHE UNDERTONESやRUDIやTHE OUTCASTS(近々来日だったよな)の楽曲も改めて素晴らしいし、それ以外の楽曲の使い方も実にナイス。
特にSUICIDEの「Dream Baby Dream」をここで使うか…というのにはちょっと笑ってしまった。
あと、元々パンク以前の音楽が好きだったテリー・フーリーの前に突然現れるハンク・ウィリアムズ、の図もユニーク。
(『アイデン&ティティ』に出てくるボブ・ディランみたいな)

それと、実在の人物たちがモデルになっている映画なんで、テリー・フーリー&ルースをはじめとして、フィアガル・シャーキー(THE UNDERTONES)やスージー・スーやジョン・ピールなんかも各々俳優が演じているワケだけど。
みんな微妙に似てたり似てなかったり、が微笑ましかったりも。

70年代UKパンクが好きならもちろん必見の映画。
いや、パンクが、というよりもロックが好きな多くの人に観てほしい1本。
8月3日(土)より新宿シネマカリテを皮切りに全国順次公開。


(C)Canderblinks (Vibes) Limited / Treasure Entertainment Limited 2012