
その7inchの曲はA・B面ともこの1stアルバムに収録されているが、以前にも書いたとおり「One Helluva Night」はアルバムとシングルでテイクが違う。
そして「One Helluva Night」にはオムニバスに収録されたこれまた別テイクがあり。
俺はそれら全部持っているうえに、このアルバムもアナログとCD両方持っているという。
それぐらい「One Helluva Night」が好き。
(ちなみに一番好きなのはシングル・ヴァージョン)
ともあれDEMON。
スタフォードシャー州ストーク・オン・トレント出身。
(つまりレミーと同郷)
70年代にHUNTERというバンドでアルバムも出していたレス・ハント(ギター)とクリス・エリス(ベース)が、IRON CROSSというバンドで活動していたデイヴ・ヒル(ヴォーカル)、マル・スプーナー(ギター)、ジョン・ライト(ドラム)と結成。
これまた以前に書いたはずだが、キャリアの点ではアルバムを出したことのある元HUNTER組(音楽学校出身)に一日の長があったはずながら、この1stアルバムでは全曲をデイヴとマルが書いている。
バンドを結成して間もない間にイニシアティヴが移行した様子。
不思議なのはこのバンドのマネージメントを手掛けていたのがUKハードコアの牙城クレイ・レコーズを主宰していたマイク・ストーンだったこと。
マイクは当時このバンドを相当熱心にプッシュしていたらしい。
バンド名といいジャケットのデザインといい、そして悪魔の被り物を着用したデイヴ・ヒルが聖書を破るというステージでのパフォーマンスといい、イメージ的にはのちのブラック・メタルに直結という感じ。
針を落とせば“Rise…Rise…”という不気味な声による「Full Moon」から始まり、いかにもそれ風。
歌詞を見ても、タイトル曲では“わかるか、これぞディーモンの夜/魂が高く駆け上がる時”、「Into The Nightmare」では“お前は悪夢へと入り込む/この悪夢が今宵お前の命を奪うであろう”なんて感じなのだが。
しかし音の方は全然禍々しくない。
New Wave Of British Heavy Metalど真ん中のバンドらしい疾走感こそありつつ、楽曲はむしろヘヴィ・メタルというよりもブルーズの根っこを引きずった、渋くてオーソドックスなハード・ロック。
(初期のSAMSONあたりともまた違う)
ドスの利いたデイヴ・ヒルのヴォーカルは中音域主体で、いかにもメタル然としたハイトーンは出てこない。
(UFOのフィル・モグを思いっきり暑苦しくしたような感じ)
「Into The Nightmare」にしても「One Helluva Night」にしてもメロディはキャッチーで、曲調は全然暗くないし。
「Decisions」なんて、歌詞を見ると“選択の時だ/より善き日のため/この悪夢から学び/俺たちは再び愚かになることはない”…なんだ、えらい前向きじゃねえか。
ホント、不思議なバンドです。
個人的にはこの1stアルバムが一番好きだけど、マル・スプーナー在籍時の初期3作はどれも素晴らしい。
しかし1984年にマルが肺炎で急死してからはラインナップが崩壊。
バンドを脱退したレス・ハントは何故かDISCHARGEのEP「Ignorance」に参加することに。
(マイク・ストーンの引きだったのだろう。一方でレスはONSLAUGHTやANGEL WITCH他のプロデュースも手掛けている)
DEMONはオリジナル・メンバーがデイヴ・ヒル一人となりつつも、現在に至るまで良作を出し続けている。