DEMON/NIGHT OF THE DEMON(1981)

DEMON.jpgDEMONについては8年ぐらい前にピクチャー7inchを紹介したことがあった。
その7inchの曲はA・B面ともこの1stアルバムに収録されているが、以前にも書いたとおり「One Helluva Night」はアルバムとシングルでテイクが違う。
そして「One Helluva Night」にはオムニバスに収録されたこれまた別テイクがあり。
俺はそれら全部持っているうえに、このアルバムもアナログとCD両方持っているという。
それぐらい「One Helluva Night」が好き。
(ちなみに一番好きなのはシングル・ヴァージョン)

ともあれDEMON。
スタフォードシャー州ストーク・オン・トレント出身。
(つまりレミーと同郷)
70年代にHUNTERというバンドでアルバムも出していたレス・ハント(ギター)とクリス・エリス(ベース)が、IRON CROSSというバンドで活動していたデイヴ・ヒル(ヴォーカル)、マル・スプーナー(ギター)、ジョン・ライト(ドラム)と結成。
これまた以前に書いたはずだが、キャリアの点ではアルバムを出したことのある元HUNTER組(音楽学校出身)に一日の長があったはずながら、この1stアルバムでは全曲をデイヴとマルが書いている。
バンドを結成して間もない間にイニシアティヴが移行した様子。

不思議なのはこのバンドのマネージメントを手掛けていたのがUKハードコアの牙城クレイ・レコーズを主宰していたマイク・ストーンだったこと。
マイクは当時このバンドを相当熱心にプッシュしていたらしい。

バンド名といいジャケットのデザインといい、そして悪魔の被り物を着用したデイヴ・ヒルが聖書を破るというステージでのパフォーマンスといい、イメージ的にはのちのブラック・メタルに直結という感じ。
針を落とせば“Rise…Rise…”という不気味な声による「Full Moon」から始まり、いかにもそれ風。
歌詞を見ても、タイトル曲では“わかるか、これぞディーモンの夜/魂が高く駆け上がる時”、「Into The Nightmare」では“お前は悪夢へと入り込む/この悪夢が今宵お前の命を奪うであろう”なんて感じなのだが。

しかし音の方は全然禍々しくない。
New Wave Of British Heavy Metalど真ん中のバンドらしい疾走感こそありつつ、楽曲はむしろヘヴィ・メタルというよりもブルーズの根っこを引きずった、渋くてオーソドックスなハード・ロック。
(初期のSAMSONあたりともまた違う)
ドスの利いたデイヴ・ヒルのヴォーカルは中音域主体で、いかにもメタル然としたハイトーンは出てこない。
(UFOのフィル・モグを思いっきり暑苦しくしたような感じ)
「Into The Nightmare」にしても「One Helluva Night」にしてもメロディはキャッチーで、曲調は全然暗くないし。
「Decisions」なんて、歌詞を見ると“選択の時だ/より善き日のため/この悪夢から学び/俺たちは再び愚かになることはない”…なんだ、えらい前向きじゃねえか。
ホント、不思議なバンドです。

個人的にはこの1stアルバムが一番好きだけど、マル・スプーナー在籍時の初期3作はどれも素晴らしい。
しかし1984年にマルが肺炎で急死してからはラインナップが崩壊。
バンドを脱退したレス・ハントは何故かDISCHARGEのEP「Ignorance」に参加することに。
(マイク・ストーンの引きだったのだろう。一方でレスはONSLAUGHTやANGEL WITCH他のプロデュースも手掛けている)
DEMONはオリジナル・メンバーがデイヴ・ヒル一人となりつつも、現在に至るまで良作を出し続けている。

映画『えんとこの歌 寝たきり歌人・遠藤滋』

えんとこの歌.jpg世田谷区梅ヶ丘で周囲に支えられながら“一人暮らし”を続ける脳性麻痺の“寝たきり歌人”遠藤滋の暮らしを捉えたドキュメンタリー映画。
1999年に同じ監督(伊勢真一)が制作した映画『えんとこ』の、20年ぶりの続編にあたる。

遠藤滋は1947年生まれ、今年で72歳。
(イギー・ポップと同い年)
1歳の時に脳性麻痺と診断され、症状の悪化に伴って寝たきりとなってから既に30年以上。
現在は24時間体制の“全介助”が必要な体。
しかし介助者たちの助けを借りながら、今も“自立”した生活を続けている。
“えんとこ”とは“遠藤滋のいるところ”であり、“縁のあるところ”でもある。

監督の伊勢真一は1949年生まれ。
遠藤滋の大学時代の後輩にあたる。
90年代に遠藤と再会し、3年に渡って遠藤を追ったドキュメンタリー『えんとこ』を制作したのが99年。
2016年に神奈川県相模原市で起きた障害者大量殺傷事件を機に、再び“えんとこ”を訪れ、再びカメラを回し始める。
遠藤の障害は悪化し、話すことも食べることも困難になっていた。
一方で遠藤は50代後半から短歌を詠み始め、日々言葉を紡ぎ続けていたのだった。

時系列は敢えてバラされている。
撮影当時70歳だった遠藤滋の毎日と、50歳前後だった『えんとこ』当時の映像、そして少年時代や青年時代の写真が交互に登場する。
長く寝たきりの生活を送っている遠藤だが、元々寝たきりだったワケではない。
20代の頃は自分の足で歩き、伊勢真一と共に学生運動にも参加し、養護学校で教壇に立ってもいた。
しかし障害の程度は次第に悪化し、やがて歩いたり教壇に立ったりすることは不可能となる。

遠藤滋は特別な存在ではない。
彼もかつては不自由ながら動き回ることが出来た。
そして今現在五体満足と思っている人でも、病気や事故でいつ身動きが取れなくなるとも限らない。
しかし相模原の事件の犯人は障害者を“不幸しか生まない存在”と断じ、一部与党議員は人間を“生産性”で切り分けようとする。
この映画はそのような分断の思想に対する強烈なアンチテーゼとなっている。

ただしこの映画は、いわゆるプロテストの映画ではない。
(少なくとも俺はそう思う)
この映画では遠藤滋と、彼を24時間介助し続ける人たちの営みが描かれているのだが、それはもちろん大変でありつつも、楽しい日々でもあり。
主として胃ろうから栄養を得ているものの、遠藤は寿司も食うし、コーヒーも酒も飲む。
24時間誰かの助けを借りながら生きていく日々が、ごく当たり前のモノとして捉えられている。
改めて言う、コレは特別な誰かの日々ではない。
俺にもあなたにも、明日訪れるかも知れない日々なのだ。

そして映画の中にフィーチュアされる、遠藤滋の短歌の数々。
思うに任せない体と向かい合いつつ、中には恋の歌も。
遠藤が日々関わる誰に恋したのか知らないが、体が不自由で全介助だろうが70代だろうが、恋は出来る。
生きてさえいれば、なんとかなる。
(多分…)
年齢に関わらず「人生とは…」と悩み続けている人には、是非観てほしい1本だ。


俺がこの映画を観たのは、遠藤滋の地元である梅ヶ丘パークホールでの上映会だった。
伊勢真一や遠藤自身が登壇し、介助者の一人である“FUCKER”こと谷ぐち順(Less Than TV)他のライヴもあって、大いに盛り上がった。
今後も各地で上映予定。
是非ともチェックしてみてほしい。
もう一度言う、遠藤は特別な存在ではない、明日の俺やあなたかも知れないのだ。


(C)いせフィルム

ゴールデン街で隙間DJ

KIMG0179.JPGはい、26日(金)「昭和ラヂカセ劇場」@ゴールデン街Heavy Gauge、多数御来場いただきありがとうございました!
多数過ぎて、入店を待ったり、座れなかったり、後から来るお客さんと入れ替わるために短時間で出ざるを得なかったり…といった皆様、どうもすいません、御不便おかけしました。
(何しろ狭い店なもんで…)

…というワケで、狭い店内はイヴェント開始直後から人でいっぱい。
主催・ゆっこのDJに続いて、Heavy Gaugeの店主でもある成瀬昭のライヴ。
(画像)
彼はHeavy Gaugeのカウンターに立ちつつ、アルバムを何枚も出しているミュージシャンでもあるが、今回はイヴェントの趣旨を重んじ、オリジナル曲ではなく昭和の名曲群をカヴァー。
「木綿のハンカチーフ」とか「酒と泪と男と女」とか。

DJ RYDERに続いて、広島出身のシンガーソングライター仲街よみのライヴ。
こちらはオリジナル主体ながら、曲の雰囲気がモロに昭和。
「ネオン街」なんて、本当に昭和っぽい。
本人はギリギリ昭和生まれ、完全に平成育ちというのに。

そして俺のDJ。

1st SET
Boys Jump The Midnight/THE STREET SLIDERS
どうしようかな/村八分
ビュンビュン/外道
ふざけるんじゃねえよ/頭脳警察
二人のブルース/DEW
Long Tall Sally/THE OUT CAST
バン!バン!バン!/ザ・スパイダース
Born To Ride/NICKEY & THE WARRIORS
レモンティー/サンハウス

…俺的にはベタベタでコテコテなつもりだったんだけど、この晩のお客さんたちにはそうでもなかったかも。
それにしても…今までHeavy Gaugeで何度かDJしたが、その後DJブースがカウンター内に移り。
実際に入ってみたら…予想以上に狭い!
ほとんど身動きが出来ないレベル。
DJブースというか、隙間だ!

そしてナカジマノナカのライヴ。
ずんぐりした外見に似合わぬ(?)透明感のあるきれいなハイトーンで歌う人。
昭和だけに限定せず、秦基博のカヴァーなんかも演っていた。
俺はDJを終えた後カウンター内から出られず、その場に直立不動で聴いていた。

RYDERの2回目の出番に続き、俺も2セット目。

2nd SET
セルナンバー8/バトルロッカーズ
Public Image/脳不安
生きてるって言ってみろ/友川かずき
ファム・ファタール~妖婦/細野晴臣
Rydeen/YELLOW MAGIC ORCHESTRA
セシールの雨傘/飯島真理
Dead Song/GASTUNK

元々全然違う選曲を考えていたのが、新しく来店した客層を考えて急遽変更。
そして再び直立不動で仲街よみの2回目のセットを聴く。
Heavy Gaugeは朝まで賑わったのでした。


それにしてもちょっと狭過ぎるかな…。
ともあれ8月もDJ2回入ってます。
(もっと広いところでやります)
告知は後日改めて。