
あれ?…燻裕理じゃなくて“くんゆうり”になってるな…。
その昔、村八分は“ひらがなのロック”と言われたモノだが、バンド名は漢字だったので、燻裕理がくんゆうりになってしまったらもうコレこそ最強のひらがなのロックではないか(?)。
今回はニプリッツ時代の楽曲のセルフ・カヴァーを中心に、新曲も含む40分16曲。
燻裕理としての1stアルバム以来変わらず、本人がヴォーカルとギターとベースとキーボードを一人で演奏して重ね、ドラムはここ数作で叩いているBLONDnewHALFのCozが継続して参加。
前から何回も言ってるけど、この人のレコーディング風景がどんなのか、一度見てみたい。
脱力しきった歌詞とヴォーカルにこっちも全身が弛緩してしまう、ゆる~い8ビートのR&R、しかし全曲分のギター(リード&リズム)とベースとキーボードを一人で演奏して重ねるなんて、絶対根気が要るに違いない…はず。
しかも空間をぐにゃりと、いやふにゃりと曲げるキーボードに、サイケデリックで鋭いギター、シンプルながらよくドライヴするベース…全部一人でって。
多分天才に違いない。
Coz嬢(しばらく前のEL ZINEにインタヴューが載っていた)のドラムも、他の楽器全員(しかし実は一人)と「せーの」で録ったみたいにしか聴こえないし。
とにかくこの歌詞とヴォーカルの、あまりに独自過ぎるセンス。
“唄を忘れたカナリアが/おぼんのキリコをさらってみれば/唄を知らないカナリアも/おぼんをぐらりとまわします”(「夜話」)
“ビートの中おばけのギターはさかさにとんだ/本にはさまれ言葉うめこみドーナツたべた”(「人生は」)
“まほうのじゅうたんだいへんたい/イラク軍のこうげきだ/アメリカ軍は逃げ出すが/スパイダーマンでまきかえし”(「大戦場」)
「ろっかじった」に至っては“あっぱらっとつかまうゆ/ぱろうじゃなけろうさ/やっぱろれったあらゆべー/ろっかじったばっかびっとぶー”って…。
あと今回は、裸のラリーズの代表曲「夜、暗殺者の夜」の改作「白い夜」も聴きモノ。
あのリフはそのままに、ラリーズと違って4分ちょっとで終わってしまうのだが、60年代ガレージみたいなオルガンと咆哮するギター・ソロが実にカッコいい。
それにしてもなんというか人間がサイケデリック。
基本的にはとてもポップで人なつこい音楽だと思うのだが、一方で随所に毒を含んでいて、一筋縄どころか二筋縄も三筋縄も行かないロック。
多分天才に違いない。
『なめたおれ』、10月1日発売。
リリース元のいぬん堂とライヴの物販のみの取扱で、250枚限定とのこと。