
カート・コベインの遺書に歌詞を引用“されてしまった”ニール・ヤングと、カートと同時代のシアトルで活動して“置いて行かれてしまった”PEARL JAM。
必然としか言いようのない邂逅だった。
契約の関係だろうが、PEARL JAMの名前は何処にもクレジットされていない。
エディ・ヴェダーが1曲で作詞を手伝った以外は全曲がニール・ヤングの作詞作曲。
レコーディングに参加したのはニール・ヤング(ヴォーカル、ギター、オルガン)、マイク・マクレディ(ギター)、ストーン・ゴッサード(ギター)、ジェフ・アメン(ベース)、ジャック・アイアンズ(ドラム:当時はまだPEARL JAMの正式メンバーではなかったはず)、エディ・ヴェダー(バッキング・ヴォーカル)、そしてプロデューサーのブレンダン・オブライエンもギターを弾き。
(「I'm The Ocean」などで聴ける印象的なピアノもブレンダンによるモノ)
ギターだけで4人もいる一方、エディの参加が最小限にとどめられているのはやはり契約絡みか。
オーヴァーダブなしのスタジオ・ライヴ一発録りで、制作期間は2週間足らず、レコーディング自体は4日で行なわれている。
一気呵成に仕上げた勢いが、完全にプラスの方向のみに作用。
制作期間からして曲作りもあっという間だったはずなのに、インスタントな感じは全くせず、いずれも粒ぞろい。
スローでヘヴィな「Song X」(サビがちょっとロシア民謡っぽい)から始まるが、「Big Green Country」をはじめとしてニール・ヤングの曲としてはファストな感じの楽曲も多く、グランジというよりはむしろパンク。
(いわゆるパンク・ロック的な楽曲はないとはいえ)
重層的なギターが分厚くヘヴィに絡み合い。
ジャック・アイアンズのヘンテコなオカズもユニーク。
一方でラストの「Fallen Angel」はニールのオルガン弾き語りでしめやかに終わる。
この頃まで、CROSSBEATなんかに載っているような(?)当時の現行の第一線のバンド(ROLLINS BANDとかFISHBONEとかMINISTRYとか)をリアルタイムで追いかけていたのが、その後興味の中心がサイケデリックとガレージに移り。
(もちろんMOTORHEADとイギー・ポップとBLUE OYSTER CULTはずっと追いかけ続けていた)
PEARL JAMのアルバムもあらかた処分してしまったのだが。
このアルバムは今聴いてもグッとクる。
(もちろん手元にあるニール・ヤングのアルバムはどれを聴いてもグッとクる)