間々田優弾き語り3マン公演 女男女~色鬼遊び@下北沢Laguna

間々田優20191230.jpg30日。
先日アルバム『さよなら平成』を紹介した死神紫郎。
…を経由して、彼とよく共演している間々田優という人のことを知り。
その両者のライヴがあるというので、2019年のライヴ納めに行ってきたのです。

前売は完全ソールドアウト。
開場時間近くに到着してみると…げっ、行列が出来ている。
男女比が9対1ぐらいで、年齢層がやけに高い。
(俺も人のことは言えない)

Lagunaは初めて。
小さいハコ。
ステージも狭いが、フロアも狭い。
その狭いフロアの前方に椅子席が3列、後方が立ち見。
椅子はほとんど埋まっていたが、幸いなことに最後列に空きを見つけて座ることが出来た。
俺が椅子をゲットしてからも受け付けを通る列は途切れず、立ち見スペースがぎっしり埋まっていく。
超満員。
なんかえらいところに来てしまった。

お客の入場が終わらず、定刻を5分ほど過ぎて一番手、中村ピアノが登場。
小旗を振りながら登場すると、ファンの皆さんが一斉に同じ旗を振る。
なんだかアイドルの現場みたい。
名前の通り、鍵盤弾き語り。
あとに登場する死神紫郎と間々田優が“怖い”ので、自分はかわいさで勝負するという(笑)。
実際、楽曲はポップでキャッチーでかわいらしい。
なのに、歌詞がけっこうエグい…。
どうも声が本調子ではなかった様子ながら、初見の俺にはまったく気にならなかった。

続いて死神紫郎。
アルバム『さよなら平成』は散々繰り返し聴いたが、彼のライヴを観るのは5年ぶり。
以前観た時同様、(アンプを通しているとはいえ)異様にアタックの強い大音量のアコースティック・ギターに乗せて、実に朗々としたイイ声で、陰々滅々とした世界を歌い上げる。
単なるギター弾き語りにとどまらず、演劇的なアクションも込みでのパフォーマンス。
もの凄く独特の世界。
ギターを弾きながらボディを叩いてパーカッシヴな演奏をしたり、弦をスクラッチする不気味な音だけで歌の伴奏を付けたりと、技術も相当のモノがある。
(時々琵琶のようにも響くギターに、遠藤賢司を思い出したりも)
独自の間を活かしたダイナミズムはアルバムの比ではない。
残念だったのは、このLagunaというハコ、階下にあるDaisy Barの演奏(というかバスドラやベースなどの低音)がかなり漏れ伝わってくるので、死神紫郎が合間合間に作り出す静寂の間が邪魔されてしまうところか。
ともあれ緊密なテンションに支配された演奏と歌唱が続いた。
しかしセットにあと1曲を残したところで、動悸がするとのことで切り上げ。
同じ頃にフロアでも具合の悪くなった人がいたようで、どうやら超満員の店内が酸欠状態となっていたらしい。

しばしドアを開放して換気。
煙草を吸うため出入りしていると、意外な人たちに会う。
ともあれトリが間々田優。
“突き刺し系シンガーソングライター”という物騒な異名を持つ人。
きりっとした美人さんなのだが、アコギをガシガシ弾いてもの凄くパワフルに歌い叫ぶ。
女性の生理や情念…だけではない、歌の方向性は幅広いながらも、とにかく押し出しが強いギターと歌。
ほとんど“弾き語りハード・ロック”の趣。
ファーのベストだかショールみたいなのを羽織っているのが、またなんだかテッド・ニュージェント感というかブルーザー・ブロディ感というか…。
この頃になると店内の熱気も凄まじく、間々田優の肩から腕、首元なども汗まみれに。
本編が終わるとすぐに熱狂的なアンコールがかかり。
中村ピアノと二人で登場し、死神紫郎「牛は屠殺を免れない」カヴァーに中村ピアノ「東京ディスコティック!!」、そして自作の「ニューシネマ・パラダイス」で終了。

いいライヴだったけど、人があまりにも多くて椅子の間隔もみっちり、途中からは暑さで少々へばった。
しかし座れたのも、席が最後列端の方で動きやすい位置だったのもラッキーだった。
アンコール終了すると、物販開始を待つ人たちを尻目にすぐ退出。


今年のブログはコレが最後です。
皆様、今年もお読みいただきありがとうございました。
来年もヨロシクです。

ALICE COOPER/BREADCRUMBS

ALICE COOPER.jpg紹介が遅れたが。
“ショック・ロックの帝王”アリス・クーパーがここに来てデトロイト・ロックのルーツに回帰した…このブログ的には絶対に無視出来ない1枚。

もっとも、それはいきなりではなかったのだ。
このEPの1曲目「Detroit City 2020」は、アリス・クーパーが2003年のアルバム『THE EYES OF ALICE COOPER』に収録していた楽曲の再録。
モータウンやイギー・ポップやMC5やテッド・ニュージェントやスージー・クアトロなどの思い出を歌った1曲だが、俺はその時点でアリスが60年代のデトロイトを歌っていたとは、まったくチェックしていなった。
(何しろ80年代末以降のアリスはすっかりメタル界の人と思っていたので…)

で、今回のミニアルバムでは60~70年代デトロイト・ロックへの回帰がもの凄く露骨。
何しろリード・ギターがGRAND FUNK RAILROADのマーク・ファーナー(!)で、ベースがJAZZANOVAのポール・ランドルフ、ドラムがMITCH RYDER & THE DETROIT WHEELSのジョニー“ビー”バダニェック(!!)。
BOB SEGER & THE LAST HEARD「East Side Story」カヴァー、スージー・クアトロ「Your Mama Won't Like Me」カヴァーにTHE DETROIT WHEELS「Devil With A Blue Dress On」カヴァー(ちょっとジャズ風)、MC5「Sister Anne」カヴァー。
新曲「Go Man Go」ではMC5のウェイン・クレイマーがギターを弾いている。
そればかりかTHE DIRTBOMBS「Chains Of Love」をカヴァーしていてミック・コリンズがバッキング・ヴォーカルで参加しているという、60~00年代デトロイト・ロック満艦飾状態。
しかもそれらの楽曲を、アリス・クーパーの全盛期を演出したあのボブ・エズリンがプロデュースしているというのだから。
(ボブはキーボードやパーカッションやバッキング・ヴォーカルも担当)

GRAND FUNK RAILROADを離れてクリスチャン・ロック方面に行ってしまったと思っていたマーク・ファーナーのギターもかなり強力。
ジョニー・ビーのドラムもまったく問題ない現役ぶりだ。
70歳を超えたアリス・クーパーのヴォーカルも変わらずワイルド。
(しかし「Devil With Blue Dress On」のアレンジを変えたのは、流石に全盛期のミッチ・ライダーには太刀打ち出来ないと思ったのかも)

海外ではアナログ10inchという変則的なリリースだが、国内盤のみCD。
11月29日より発売中。
超お勧め。

GRAND FUNK RAILROAD/Are You Ready(1970)

GRAND FUNK RAILROAD ARE YOU READY.jpgGRAND FUNK RAILROADについては何度か紹介したが、「The Loco-motion」(1974年)以外は全部初期のパワー・トリオ時代のシングルとかアルバムとか。
やっぱりこのバンドは初期に限る。
(もちろん4人編成時代にはまた違った魅力があるけど)
アルバムで言うと『GRAND FUNK』(69年)か『LIVE ALBUM』(70年)か。
まあ較べるもんでもないか。
スタジオ作なら『GRAND FUNK』、ライヴなら『LIVE ALBUM』ってことで。

その『LIVE ALBUM』からのシングル。
A面が「Are You Ready」でB面が「Mark Say's Alright」というこの組み合わせは日本独自だったようだ。
アメリカではA面が「Mean Mistreater」でB面が「Mark Say's Alright」。
イギリスではA面が「Are You Ready」でB面が「Mean Mistreater」「I Can Feel Him In The Morning」というEPが出ていたらしい。

もちろん『LIVE ALBUM』は基本的にLP2枚組聴き通してナンボ、な作品なのだろうが、一方で当時3000円だった2枚組LPは誰もが買えるようなモノではなかったはずで、部分的ながらもライヴの勢いをシングルで伝えられれば、とレコード会社も考えたに違いない。
この頃の国内盤シングルでは、スリーヴノーツを見ても書き手が何処の誰なのかさっぱりわからないこと多かったりする(いずれも当時は有名な業界関係者だったんだろうけど)のが、この7inchでは故・今野雄二氏が解説を担当している。
私設ファンクラブの連絡先がスリーヴに掲載されているのがまた時代を感じさせたり。

LPのオープニングに入るイントロをすっ飛ばして(かろうじてMCによる“GRAND FUNK RAILROAD!!”という叫びは入っている)、いきなり始まる怒涛の演奏。
ギターもベースもドラムも、スタジオでのヴァージョンの数倍ヘヴィ。
特にメル・サッチャーのベースときたら。
当時LED ZEPPELINをぶっ飛ばしたぶっ飛ばしたといってやたら話題になったGRAND FUNK RAILROADだが、このバンドの比較対象は本来LED ZEPPELINなどではなく、THE STOOGESやMC5といったデトロイト勢だったはずなのだから。
逆に、テクニカルで湿った英国ハード・ロック勢が日本で人気を集めていくほどに、大した技術もなく基本的にはノリ一発の野蛮な大音量ロックだったGRAND FUNK RAILROAD(もちろん演歌じみたバラードもあったし後にはポップなメロディも聴かせるとはいえ)が注目されなくなるのは当然だったと言えなくもない。

B面「Mark Say's Alright」はオリジナル・アルバム未収録のインストゥルメンタル。
シンプルにして印象的なリフとドン・ブリュワーのトライバルなドラミングが反復したあとに全員で突っ走る、ジャム的なナンバー。
エンディングでマーク・ファーナー(ヴォーカル、ギター)が“Alright!”と叫んでいるからこの曲名なのだろう。

この7inch、当時はかなり出回ったようで、ネットで検索するとかなり安く売られている。
しかしまずは何より『LIVE ALBUM』だ、ということは言うまでもない。