星条旗よ永遠なるか

HOT TUNA.jpgHOT TUNAが、NBAの試合前のセレモニーで、アメリカ国歌「Star Spangled Banner」を演奏したんですって。
「ふーん」と思った。
ミュージシャンだのシンガーだのの誰それがどこそこのセレモニーでアメリカ国歌を演奏しました、というニュースは時々見かけるけど。
その度に「ふーん」と思う。

その「ふーん」という思いについて以前このブログで書いたのは、両側にネックの付いたギターを両手でピロピロ弾きまくる曲芸ギタリスト(?)、マイケル・アンジェロがやはり何処かのセレモニーでアメリカ国歌を演奏した、というニュースを見た時だったと思う。
かつてジミ・ヘンドリックスがヴェトナム反戦の想いをこめて国旗を引き裂くように奏でたあの「Star Spangled Banner」のイメージがどうしてもあるもんで。
ロックの人が批評性も何もなしにどや顔で(いや、どや顔かどうかは知らんが)国歌を歌ったり演奏したりというのに、どうしても違和感があるんですよ。
(↑老害)
ましてHOT TUNAといえば、かつてのカウンター・カルチャーの旗頭たるJEFFERSON AIRPLANEのメンバーのバンドじゃないですか。
(まあそのJEFFERSON AIRPLANEもその後STARSHIPで単なる産業ロックになっちゃったんだけど)

でまあ、そのHOT TUNAのアメリカ国歌を動画で観たんですが。
うわー、何コレ。
ゆっるー。
ジャック・キャサディこそは相変わらず歪んだベースをブンブン鳴らしてるものの。
ヨーマ・コウコネンのギターのヨレ具合ときたら。
国歌の威厳も何もねえな。
コレ逆に怒られたりしないんですかね?

…と、なんだか微笑ましい気分になってしまったのだった(笑)。

メキシコ・オリンピックでトミー・スミスとジョン・カーロスに拳を突き上げさせたアメリカ国歌。
ジミ・ヘンドリックスがずたずたに引き裂いたアメリカ国歌。
半世紀以上前の話だ。

ELECTRIC WIZARD/WITCHCULT TODAY(2007)

ELECTRIC WIZARD.jpgCATHEDRALと並ぶ…というか、CATHEDRALが解散して以降は英国ドゥーム・メタル唯一にして真の帝王とも言うべき存在。
6thアルバム。

英国ドーセットでジャスティン・オボーンによって結成されたのは1993年。
俺がこのバンドを知ったのは、初期の2作が2000年にビクターから国内発売された時で。
1stアルバム『ELECTRIC WIZARD』(94年)はそれなりという感じだったのが、続けて2ndアルバム『COME MY FANATICS…』(97年)を聴いてぶっ飛ばされた。
前作とは比較にならない、そのとんでもないヘヴィネスに。
「何かあったんですか?」と思った。
同時期に聴いていたSLEEP『JERUSALEM』(98年)と並んで、ドゥーム・メタル/ストーナー・ロックの極北と思わされたモノだった。

その後も『DOPETHRONE』(00年)『LET US PREY』(02年)『WE LIVE』(04年)と、アルバム毎にそれぞれヘヴィなサウンドを聴かせてはいたが、やはりというか『COME MY FANATICS…』のインパクトが大き過ぎ。
そこに登場した6thアルバム。
前作から美貌のギタリスト、エリザベス・バッキンガムが参加して4人編成となっていたELECTRIC WIZARD。
4人編成での2作目となるアルバム.
前作(およびそれ以前)とまた少し様子が違う。

当時のメンバーはジャス・オボーン(ギター、ヴォーカル、シタール)、リズ・バッキンガム(ギター、オルガン)、ロブ・アリッサ(ベース)、ショーン・ラッター(ドラム)の4人。
このアルバムで、バンドは初めてロンドンのトー・ラグ・スタジオでリアム・ワトソンを迎えて録音している。
THEE HEADCOATSやTHE KAISERSといった幾多のRAWなガレージ系バンドのレコーディングでおなじみのスタジオとエンジニアの組み合わせ。
録音機材はすべてヴィンテージのアナログ機材。
メタル系のバンドでリアムとレコーディングしたバンドは、今に至るまでELECTRIC WIZARDくらいでは?

トー・ラグ録音の効果なのか、必要十分なヘヴィネスとダークネスはありつつ、奇妙な丸っこさというか柔らかさを持つサウンドに仕上がっている。
『COME MY FANATICS…』のような衝撃的な重さではなく、聴きやすそうでいて精神的には思いっきり邪悪とでもいうか。
もっとも、聴きやすいというのもこのバンドにしてはという話で。
BLACK SABBATH直系の引きずりまくるリフはどの曲も同じように聴こえるし、ダメな人はダメだろう。
しかしそれは別にこのアルバムで始まったワケではなく前からで。
アルバムによってはむしろわざと同じような曲を集めているのではと思わされることも。
その点ではこのアルバムなんかはけっこう幅のある内容だろう。
H.P.ラヴクラフト愛が丸出しの「Dunwich」なんて曲がある一方で、2分ほどのインストゥルメンタル「Ruptus」があるかと思えば、黒ミサのサウンドトラックみたいな(?)「Black Magic Rituals And Perversions」も。
「Satanic Rites Of Drugula」はもちろん映画『Satanic Rites Of Dracula』(新ドラキュラ/悪魔の儀式)へのオマージュだろうが、‟Drug”ulaって…。

バンドはこのアルバムのリリース直後に初来日を果たす。
(俺は行けなかったけど)
ジャス・オボーンはトー・ラグ・スタジオのサウンドを大いに気に入ったらしく、以後8thアルバム『TIME TO DIE』(2014年)までリアム・ワトソンとのアルバム制作を続けた。
リズム・セクションは交代が相次いだものの、ジャスとリズ・バッキンガムのフロント二人は03年以来不動のまま、バンドは現在も活動を続けている。

EL ZINE VOL.41

EL ZINE VOL.41.jpgはい、隔月刊の安定したペースで発行されるようになって久しいEL ZINE、最新号です。


俺の連載「LASHING SPEED DEMONS」、今回は山路編集長の提案により、ちょっと変わったネタ(?)で行ってみました。
題して"70'sパンクのEL ZINE的断面”。
SEX PISTOLSだのTHE CLASHだのといった、今更EL ZINEで取り上げる必要もなさそうな有名70'sパンク・バンドを、‟EL ZINEっぽい切り口”(って、なんだそれは)から改めて紹介するという記事。
探り探りで書き始めたんだけど、結果的になかなか面白い読み物にはなったと思うので、皆様是非お読みください。


表紙と巻頭はベルギーのハードコアやストリート・パンク他の特集。
ベルギーのグラインドコアやクラストの先駆的なバンド、AGATHOCLESとPRIVATE JEJUS DETECTORが、どちらも異口同音にグラインドやクラストというカテゴリーに押し込められることに対する不快感を語っているのが興味深い。
あと岡崎のPROLETARIARTのインタヴューとか。
(前号のマグダラ呪念と死神四郎のインタヴューで中学生棺桶の名前が出ていたが、今度は例のKの名前が出ている…)
70'sパンク系バンドBLACK AND WHITEのインタヴューとか。
前号に続くTHE TITSのアメリカ・ツアー・レポートとか。
多分EL ZINE初登場ではと思われるいぬん堂氏によるTHE STALINについての記事とか。
メキシコのパンク・バンド、敗北(ええっ、メキシコのバンドがこのバンド名?)のインタヴューとか。
今回もいろいろ濃厚です。


EL ZINE VOL.41、28日発売。
俺は既に次の号の準備に入っておりますよ…。