
CATHEDRALと並ぶ…というか、CATHEDRALが解散して以降は英国ドゥーム・メタル唯一にして真の帝王とも言うべき存在。
6thアルバム。
英国ドーセットでジャスティン・オボーンによって結成されたのは1993年。
俺がこのバンドを知ったのは、初期の2作が2000年にビクターから国内発売された時で。
1stアルバム『ELECTRIC WIZARD』(94年)はそれなりという感じだったのが、続けて2ndアルバム『COME MY FANATICS…』(97年)を聴いてぶっ飛ばされた。
前作とは比較にならない、そのとんでもないヘヴィネスに。
「何かあったんですか?」と思った。
同時期に聴いていたSLEEP『JERUSALEM』(98年)と並んで、ドゥーム・メタル/ストーナー・ロックの極北と思わされたモノだった。
その後も『DOPETHRONE』(00年)『LET US PREY』(02年)『WE LIVE』(04年)と、アルバム毎にそれぞれヘヴィなサウンドを聴かせてはいたが、やはりというか『COME MY FANATICS…』のインパクトが大き過ぎ。
そこに登場した6thアルバム。
前作から美貌のギタリスト、エリザベス・バッキンガムが参加して4人編成となっていたELECTRIC WIZARD。
4人編成での2作目となるアルバム.
前作(およびそれ以前)とまた少し様子が違う。
当時のメンバーはジャス・オボーン(ギター、ヴォーカル、シタール)、リズ・バッキンガム(ギター、オルガン)、ロブ・アリッサ(ベース)、ショーン・ラッター(ドラム)の4人。
このアルバムで、バンドは初めてロンドンのトー・ラグ・スタジオでリアム・ワトソンを迎えて録音している。
THEE HEADCOATSやTHE KAISERSといった幾多のRAWなガレージ系バンドのレコーディングでおなじみのスタジオとエンジニアの組み合わせ。
録音機材はすべてヴィンテージのアナログ機材。
メタル系のバンドでリアムとレコーディングしたバンドは、今に至るまでELECTRIC WIZARDくらいでは?
トー・ラグ録音の効果なのか、必要十分なヘヴィネスとダークネスはありつつ、奇妙な丸っこさというか柔らかさを持つサウンドに仕上がっている。
『COME MY FANATICS…』のような衝撃的な重さではなく、聴きやすそうでいて精神的には思いっきり邪悪とでもいうか。
もっとも、聴きやすいというのもこのバンドにしてはという話で。
BLACK SABBATH直系の引きずりまくるリフはどの曲も同じように聴こえるし、ダメな人はダメだろう。
しかしそれは別にこのアルバムで始まったワケではなく前からで。
アルバムによってはむしろわざと同じような曲を集めているのではと思わされることも。
その点ではこのアルバムなんかはけっこう幅のある内容だろう。
H.P.ラヴクラフト愛が丸出しの「Dunwich」なんて曲がある一方で、2分ほどのインストゥルメンタル「Ruptus」があるかと思えば、黒ミサのサウンドトラックみたいな(?)「Black Magic Rituals And Perversions」も。
「Satanic Rites Of Drugula」はもちろん映画『Satanic Rites Of Dracula』(新ドラキュラ/悪魔の儀式)へのオマージュだろうが、‟Drug”ulaって…。
バンドはこのアルバムのリリース直後に初来日を果たす。
(俺は行けなかったけど)
ジャス・オボーンはトー・ラグ・スタジオのサウンドを大いに気に入ったらしく、以後8thアルバム『TIME TO DIE』(2014年)までリアム・ワトソンとのアルバム制作を続けた。
リズム・セクションは交代が相次いだものの、ジャスとリズ・バッキンガムのフロント二人は03年以来不動のまま、バンドは現在も活動を続けている。