
(映像作品はその後も出ているが)
前作『迦陵頻伽』(2016年)から約1年半ぶりとなった14thアルバム。
世の流れを王道とするならば、陰陽座の道は覇道であり、その覇道を行く明王…云々といった作品コンセプトはネット上でもインタヴューなどでメンバー自身が語っているから(瞬火によるアルバム全曲解説とかもある)、ここで俺が今更言うべきこともない。
ともあれメロディアスで多彩だった『迦陵頻伽』から一転、陰陽座の全アルバム中でも異例なまでに徹頭徹尾ヘヴィに押し切った感のあるアルバム。
全曲を瞬火が作詞・作曲し、バラードもなければ、大抵アルバムの最後に入っていたポップでキャッチーな楽曲もない。
リリース当時は、その不愛想なまでのヘヴィネスに驚いたモノだった。
しかし瞬火は、ヘヴィ・メタル・バンドとしての原点回帰などではないと断言。
何故なら陰陽座が原点から離れたことなどないから、と。
久しぶりに改めて聴き直し、かつ改めて何度も何度も聴き返してみると、確かに。
ヘヴィな音像ではありつつ、陰陽座が本来持っているメロディアスさはいささかも損なわれていない。
アルバム・ヴァージョンは‟覇道MIX”としてヘヴィに仕上げられつつも、「桜花忍法帖」(TVアニメ『バジリスク~桜花忍法帖~』OP)はやっぱりこれまでの‟忍法帖”シリーズの系譜に連なるメロディアスさだし。
「腐蝕の王」も然り。
ラスト曲「無礼講」はこれまでのアルバムのラスト曲とはまた違った意味でポップでキャッチー。
(陰陽座流のR&R、とか思った)
果たしてオリコンチャートでは11位。
『迦陵頻伽』の7位、8thアルバム『魑魅魍魎』(2008年)の9位、11th『風神界逅』(14年)の10位に次ぎ、12thアルバム『雷神創世』(14年)に並ぶチャートアクション。
陰陽座の覇道はファンたる‟式神”たちの圧倒的な支持を受けたのであった。
俺が陰陽座をまともに聴くようになったのは(そこらじゅうでかかりまくっていた「甲賀忍法帖」とかを別とすれば)2011年のシングル「紺碧の双刃」からなので、随分遅い。
正直言ってその時点でも、とっても人気のある和風メタルバンドだ、うん確かにカッコいいねえ、ぐらいな感じだった。
ズガンと持っていかれたのは、12年のDVD『絶界演舞』でだった。
ライヴ映像で観る彼ら。
黒猫…これほどまでにチャーミングなシンガーであったか、と。
もちろん他のメンバーも、映像でそのカッコよさにシビれ。
昨年遂にナマで観ることがかなった。
やっぱりシビレました。
JUDAS PRIESTを愛するベース兼ヴォーカル(瞬火)と、ロニー・ジェイムズ・ディオを範とする女性ヴォーカリスト(黒猫)。
しかし二人とも、ロブ・ハルフォードともロニーとも遠くかけ離れた声の持ち主。
そこにゲイリー・ムーアをヒーロー視する泣きのギタリスト(招鬼)と、シュラプネル系を聴きまくったテクニカルなギタリスト(狩姦)という組み合わせ。
結果として、唯一無二の妖怪ヘヴィ・メタルが完成され。
(ドラムが正式メンバーでないのは惜しまれるものの、まあそれはそれ)
そして、彼らに道を開いたであろう人間椅子の先進性をも思う。
人間椅子には何度かインタヴューしたことがあるが、BLACK SABBATHなどの英国メタルに影響されつつフロントの二人がいずれもロニー・ジェイムズ・ディオ他のメタル・シンガーのようには歌えない、その点がハンディになったか武器になったか…と尋ねた際、彼らは結果的にはそれが自分たちの特徴になったと答えた。
陰陽座においても然り、ではなかったか。
(一度陰陽座にインタヴューする話が持ち上がったけど、結局流れた。いつか実現したいモノです)
ともあれ1999年の陰陽座結成から、昨年で20年が経過した。
年齢を公表していない彼らが何歳になったのか知らないが、覇道はまだまだ続くはずだ。
(ロニー・ジェイムズ・ディオが逝ったのは67歳。ロブ・ハルフォードは68歳でまだ現役)