SCHIZOPHRENIA/Voices

SCHIZOPHRENIA.jpgベルギーの4人組メタル・バンドのデビューEP。

2010年にアントワープで結成されたスラッシュ・メタル・バンドHAMMERHEADを前身バンドとする。
活動中に2枚のEPをリリースしたHAMMERHEADはその間にメンバー交代を経ていて、その最終ラインナップが16年にSCHIZOPHRENIAと改名したのだという。
HAMMERHEADが最終ラインナップで何年活動していたのか知らないが、SCHIZOPERENIAは16年にスタートした新しいバンドと言いつつも、メンバーにはそれなりのキャリアがあるワケだ。
ちなみにSCHIZOPHRENIAとなってからも17年にメンバー交代があり、現在のバンドはリッキー・マンドッツィ(ベース、ヴォーカル)、ロメオ・プロモス・プロモパウロス(ギター)、マーティ・ファン・ケルクホーフェン(ギター)、ロレンツォ・ヴィソル(ドラム)の4人。
HAMMERHEADからのオリジナル・メンバーはリッキーとロメオの二人。
ベルギーのバンドながら、いかにもベルギー人らしい名前なのがマーティ一人というのがなんだかユニークだ。
リッキーとロレンツォは多分イタリア系、ロメオはギリシャ系ではなかろうか。

2016年に新たなバンドとしてスタートして、現在の編成に固まったのが17年、そしてデビュー・シングルをリリースしたのが19年10月。
このEP「Voices」が母国ベルギーでリリースされたのは今年1月とのこと。
わざわざ改名しただけあって、新たなバンド名の下で演りたい/演るべき新たな方向性というのを突き詰めるのにはかなり時間をかけたようだ。

その方向性というのは、オールド・スクールなデス・メタルとスラッシュ・メタルを融合したブルータルなメタルということになるだろう。
リッキー・マンドッツィの歌唱は、いわゆるデス声/グロウルとスラッシュ特有の吐き捨てヴォーカルの中間に位置するようなスタイルで、かつ随所にブラック・メタル的なヒステリックさやCELTIC FROST的な「ウッ!」という押し殺した叫びが入っていたり。
演奏の方はドンカンドンカン突っ走る80年代B級スピード・メタルを現代風なサウンドとテクニックで再構成するような、メロディックな要素のない暴虐のメタル。
良くも悪くも一本調子な爆走サウンドながら、80年代のスラッシュや初期の洗練されないデス・メタルが好きな人にはかなりアピールするのではないかと。

国内盤にはバンドのテーマ曲とも言える「Schizophrenia」のデモ音源がボーナス・トラックとして収録されている。
『Voices』、7月1日リリース。

摩擦原因/BLAZING! MASATSUGENIN

摩擦原因.png大阪の爆走R&Rトリオ摩擦原因、2017年の前作『SEX DRINKIN' ROCK'N'ROLL』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201710article_27.html)から約3年ぶりとなる4thアルバム。

現在のパーソネルはKIYOSHI NAGATA(ヴォーカル、ギター)、Mr.P(ベース、コーラス)、KO-SHO-Good Sun(ドラム、コーラス)の3人。
前作のラインナップからドラムが交代した模様。
しかし基本的な音楽性は変化なく、疾走するパンク・ロックにルーツ・ミュージックを絶妙に混ぜ込んでいる。
作を重ねる毎にカントリーやブルーズの要素がちょっとずつ後退し、逆にストレートなR&Rの部分がちょっとずつ増している感もありつつ、根底にやっぱりルーツ・ミュージックがあって、曲によってはジョージ・サラグッドあたりに通じるようなテイストも。

1曲目「YOU FUCKIN FAKE」イントロからRAMONESっぽくて嬉しくなる。
4曲目「DARK COOL BERLIN」イントロのベースはTHE DAMNED初期のキャプテン・センシブルあたりを思わせたりもするし。
一方その「DARK COOl BERLIN」の歌詞に”テクノが流れるイキな街で/足の悪い老人が歩いてく”とあるように、彼らにとってパンク・ロックもルーツ・ミュージックも伝統芸能的な古色蒼然としたモノではなく。
彼らのR&Rは最新型のエレクトロ・サウンドと同じ地平で、あくまでも現在進行形の音楽として鳴らされている。

「YOU FUCKIN FAKE」に続いて「FUCKIN GO TO HELL」、更に「YOU'RE RIGHT!! I'M WRONG」と、腐った奴らにノーを突きつける姿勢も変わらず。
一方で「I'M JUST A MAN」や「SILLY BOY」ではダメな自分も馬鹿な自分も直視して、”そんな奴でも成長はするぜ”(「SILLY BOY」)と愚直に前に進もうとする。
悪態をつく曲でもポジティヴな曲でも、いかにもそれ風な通り一遍のポーズじゃなく、根底に市井の生活者/労働者としての視点があり。
キャッチーさやユーモアのセンスもたんまり。

前作同様に女性ヴォーカルやサックス、それにオルガンやアコーディオンといったゲストも参加して、アレンジに幅を持たせている。
グルーヴィーなオルガンをフィーチュアしてR&Bテイストな「WHITE SNAKE SKIN GIRL」なんかは、曲名に通じるイギリスのあのバンド、およびそこのヴォーカリストが在籍していたあのバンドを思い出したり。
(歌詞に”BLACK NIGHT”とある…)
サックスを重ねてロカビリーとジャズをミックスしたようなインストゥルメンタル「MAD DOG MARGARITA」もおしゃれでカッコいい。
(そしてKIYOSHI NAGATAの確かな腕前もよくわかる)

2009年の1stアルバムから11年でアルバム4枚。
多作とは言えないものの、日々の生活を回しながら続けているインディペンデントなバンドとしては寡作とも言い切れないだろう。
コロナ禍でレコ発ツアーはほぼ潰れた格好になっているようだが、今後も着実に続けてほしいバンドです。
ライヴ随分観てないな。


9日より絶賛発売中。

19年待ったアレが

BLUE OYSTER CULT SYMBOL.jpg先日BLUE OYSTER CULTのブートCDを紹介して、新作オリジナル・アルバムのリリースを祈念したばかりだが。
そこになんともタイムリーなニュース。
10月に新作出るんですって。

新作を制作中ということ自体は数年前から聞き知っていたが。
いよいよ出ますか。
正式なリリース日や内容の詳細は明らかになっていないものの、タイトルは『THE SYMBOL REMAINS』だという。
”シンボルは残る”か。
なんとも意味深長というか…。

前作『CURSE OF THE HIDDEN MIRROR』(2001年)から実に19年ぶりとなる。
現在のメンバーはエリック・ブルーム(ヴォーカル、ギター他)、ドナルド”バック・ダーマ”ローザー(ヴォーカル、ギター)、リッチー・カステラーノ(キーボード、ギター他)、ダニー・ミランダ(ベース)、ジュールス・ラディーノ(ドラム)の5人。
最早オリジナル・メンバーはエリックとバック・ダーマの二人しか残っていないが、奇しくも『HEAVEN FORBID』(1998年)と『CURSE OF THE HIDDEN MIRROR』に参加していたダニーが出戻っていて、ベーシストは近年のスタジオ盤3作連続してダニーということになる。
『AGENTS OF FORTUNE』40周年記念ライヴでも素晴らしい働きをしていたリッチーの存在を考えても、良作になる予感。

エリック・ブルーム75歳。
バック・ダーマ72歳。
(新作リリース後の11月には73歳)
二人の年齢を考えても、新作にしてラスト・アルバム、という可能性は低くない。
ともあれ期待して待ちたい。

それにしても、現在のバンドにオリジナル・メンバーが二人しかいないとはいえ、オリジナル・メンバーで亡くなっているのはアレン・ラニエ(キーボード、ギター他)一人。
他はみんな存命なだけでなく、脱退したブシャール兄弟もまだ現役(のはず)。
みんな意外と元気。
『IMAGINOS』(1988年)の時みたいに全員再集合…はもうかなわないこととはいえ、何かやってくれんかね…。