THE STOOGES/SEARCH AND DESTROY RAW MIXES VOL.3(1989)

STOOGES RAW MIXES VOL.3.jpg名義はTHE STOOGESとなっていて、ジャケットにはオリジナルのSTOOGES(ロン・アシュトンがギターを弾いていた時代)のロゴが用いられているが、タイトルを見ればわかる通り、実際には『RAW POWER』(1973年)を録音したIGGY AND THE STOOGES(ジェイムズ・ウィリアムソンがギターを弾いていた時代)のレア音源集。

以前このブログで紹介した1994年の『ROUGH POWER』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201806article_17.html)と同じような内容ながら、『ROUGH POWER』より5年も前、イギー・ポップ自身による『RAW POWER』のリミックス盤(96年)より実に7年前のリリース。
当時西新宿をうろついていて入手したと記憶するが、初めて聴いた時には驚いたモノだった。

特に”Raw Power unmixed”とクレジットされた前半5曲。
それまでLPで聴いていた『RAW POWER』と本当に違う。
1曲目の「Shake Appeal」から、フェイドアウトしないで完奏してるし。
「Search And Destroy」での”ヘイッ!”とか、「Raw Power」での”ウ~”とか、それまでに聴いたことのないようなコーラスが入っていたり、「Search And Destroy」でドラムがバシャバシャと前面に出ていたり。
音質の悪さを凌駕して迫りくる、まさに”Raw Power”。

後半の4曲はオリジナル・アルバム未収録の4曲。
これまた音質は良くないものの、「Rubber Legs」や「I Got A Right」と言った楽曲の勢いに改めてぶっ飛ばされる。
当時俺の車にはカーステレオがなかったのだが、小さいラジカセを買って助手席に置き、このCDからの「I Got A Right」やら何やらをダビングしたミックス・テープを突っ込んで、爆音で鳴らしていたモノだった。

同じ年にリリースされた『RAW MIXES VOL.1』『RAW MIXES VOL.2』がフランスのイーグルというレーベルからのリリースだったのに対して、このVOL.3だけは同じフランスのカーティスというレーベル。
カーティスというレーベル名義ではこのCDしかリリースされていないようで、当時のデタラメな権利関係が窺われる。

そのデタラメなあれこれの元になっていたと思われるのがロン・アシュトンで、同時期のリヴェンジ・レコーズからの発掘リリースを含め、このあたりの音源はロンが流出させていた様子。
それを反映してか、このCDでのロンのクレジットは、RON”KING of ROCK'n'ROLL”ASHETONとなっている(苦笑)。
(リヴェンジのリリースでも見られたクレジット)
表ジャケットにもロンの姿がひときわ大きく写っているし、ピクチャー・ディスク(!)のレーベル面もロン一人。

それはさておき。
AllMusicでは星ひとつの評価だが、そんなこたあありません。
今はともかくとして、1989年の時点では大いに興奮させられた1枚。
(って、もう31年前か…)

Land Of Confusion

GENESIS BEST.jpg相変わらずというよりもどんどんひどくなる諸々の状況。

11月に予定されていたGENESISの再結成ツアーが延期。
昨今のフィル・コリンズの体調が万全とはとても思えないので、残された時間がそう多くはない、と考えるといろいろ不安。
GENESIS本体に限らず…ピーター・ゲイブリエルやスティーヴ・ハケットら元メンバーたちも、今の状況では身動きとれまい。

ビリー・アイリッシュの来日延期。
エディ・ジョブソンのファン・コンヴェンションは再延期。
(そりゃそうだろう…)
ONE OK ROCKのギタリストToruが新型コロナウイルス感染。

音楽関係に限らず。
大相撲では阿炎がタニマチとキャバクラか何処か行ってたようで、強制的に休場となり。
(力士に夜の付き合いは付きものだろうが、この時期はダメでしょ…)
吉野家ホールディングスは大量閉店の見込みという。
(吉野家HDにははなまるうどんとか海鮮三崎港とかフォルクスとかステーキのどんとかもあるので、吉野家自体が激減するワケではないと思うが…)

で、遂にコロナ禍の影響で倒産する医療機関が出始めた。
この流れは今後も続くだろう。
コロナ禍に関連する企業の休廃業は5万件を超える恐れという。


そして29日には全国の1日あたりの感染者が1000人を超え。
今日の東京都の感染者は過去最多を更新。
コロナ清浄の地(?)だった岩手県にも遂に感染者が出た。
東京都知事は選挙に勝った後は毎日感染者数を発表するだけでなんにもせず。
(俺は都民じゃないけどさ。東京アラートってのは何だったの?)
総理大臣は何をしてるかわからず、官房長官は相変わらず韓国の悪口に忙しい。
多くのライヴハウスが今も廃業の危機と闘い続けている。

嗚呼、まさにLand Of Confusionである。
この曲はフィル・コリンズ脱退前最後のGENESISのアルバムとなった『WE CAN'T DANCE』(1991年)リリース後のツアーで1曲目を飾っていた。
(そして話は最初に戻ってループする)

OUT/OUT

OUT.jpg先月のリリースだが、紹介遅くなった。
札幌で2012年に結成されたというトリオの1stアルバム。

メンバーは橋本昌徳(ヴォーカル:ギター:元やぎ、KARMA他)、渡部徹(ヴォーカル、ベース:元ライナスの毛布他)、岡田亜土(ドラム:元パラフレーズ、やぎ、KARMA他)の3人。
このブログを読んでいる人で、上記の元〇〇、というところに反応する人はどれぐらいいるのだろうか。
ってか平均年齢は何歳だ…と思わずにはいられない、80年代札幌インディーズ・シーンの古強者が集まったバンドとなっている。

年齢を感じさせない、初期衝動という言葉を使いたくなる勢いと、一方で年輪を感じさせる確かな技術と表現力。
11曲で27分しかない。
4分以上の曲は2曲しかなく、2分以下の曲が4曲。

大半の楽曲は橋本昌徳と渡部徹がそれぞれに作詞・作曲していて、それぞれ自分が作った曲を自分で歌っている様子。
(「二重少年」のみ二人の共作で、ツイン・ヴォーカルが掛け合う)
ちょっと遠藤ミチロウあたりを思わせる橋本、ドスの利いた叫びを聴かせる渡部、各々のヴォーカルの対比がユニーク。
CDの帯にある”狂ってる あいつは 俺の心臓めがけて 刺す”というのは橋本作「刺す」の歌詞。
この曲のサビの歌詞”Hello my paranoia”に、かつて札幌で”Hello my schizoid”と歌っていたFALSE CHARGEを思い出す…のは俺だけだろう。
(必ずしも歌詞が聴き取りやすい曲ばかりではないので、歌詞カードがあるとよかったのだが)

空間系のエフェクトを多用したギター。
ゴリゴリしたヘヴィなベース。
タイトで乾いたドラム。
鋭く疾走する楽曲にはFRICTIONあたりに通じるモノを感じたり。
スローな曲でのフリーキーでドロドロした感覚は、やはり80年代のアンダーグラウンドなシーンを通り抜けてきた人たちならではと言った印象。
ラストはレトロなリズム・ボックスに乗せて独特な叙情っぽさを漂わせる「Derweze」でシメる。
「Derweze」は橋本昌徳の作詞・作曲で、このアルバムのリリース元もDerweze Recordsとなっている。
(”Derweze”というのは、天然ガスが燃え続けている”地獄の門”と呼ばれる場所があるトルクメニスタンの村のはず)

俺が札幌に住んでいた80年代、渡部徹がやっていたライナスの毛布のライヴを何度も観たモノだった。
ライナスの毛布はかなり長いこと活動していたのに正式なアルバムはリリースしていないはずで(MARBLE SHEEPとの連名作が1枚ある)、この2020年になって元メンバーの新しいバンド(と言ってももう8年経っているが)のアルバムを聴く機会が巡ってきたことには驚かされた。
HAWKWINDや初期PINK FLOYDあたりの多大な影響を感じさせたライナスの毛布とこのOUTの音楽は随分違うものの、80年代の札幌でライヴハウスを賑わせていた人たちが今も活動を続けて、今の自分たちの音を鳴らしているのは実に喜ばしい。
そういえばあのバンドのあの人とか今はどうしているのだろう…などと思いつつこのアルバムを何度も聴いている。
(何しろ27分しかなくてすぐ聴き終わるので)


『OUT』、6月6日より発売中。