
随分前にBARN HOMESで買ったオムニバス。
タイトル通り、いわゆるクラウト・ロックを集めたモノ。
そしてサブタイトルは”Thee Fourth Incarnation Ov Thee Obscured Hungry Kraut Daddy Demon”。
このアルバムで初めて名前を知ったようなバンドばかり、そして有名バンドでもオリジナル・アルバムに入っていないような、とにかくレア度重視な1枚になっている。
(ドイツで活動していた国外のバンドもあり)
THE RAVERS「Turn In」からスタート。
RAVERSは1965年~69年にかけてアルバムを8枚も出していて、当時のハンブルクでは知られていたバンドらしい。
65年の1stアルバムでは単なるビート・グループで、R&Rのカヴァーばかり演っていたのが、その後サイケデリックに傾倒。
69年のアルバムからの「Turn In」では曲名からしてもティモシー・リアリーに感化されたと思われるドラッグ・ミュージックとなっている。
BLACKBIRDS 2000はプットリンゲン出身でアルバムを2枚出しているTHE BLACKBIRDSが改名して1970年にリリースした、改名後で唯一の、そして最後の7inchから。
けっこうワイルド。
続くJO HAMANNは「Wild Woman」という曲名ほどワイルドじゃなくてユルい。
73年の唯一の7inchからの楽曲だそうで、ライナーノーツには”ガレージでVUがCANに出会ったようなサウンド”とあるが、どうかなー。
HABOOBはわりと有名だろう。
AMON DUUL Ⅱへの参加で知られるジミー・ジャクソンら、ドイツ在住の外国人によるバンドで、1971年のアルバムからの楽曲。
BIG BERTHAもドイツ人のバンドではなく、デイヴ・ボール(ギター)、デニー・ボール(ベース)、コージー・パウエル(ドラム)ら英国人メンバーによる出稼ぎバンド。
70年の7inch。
ドイツっぽさもサイケっぽさもほぼなく(曲名は「Munich City」という)、英国ハード・ロック黎明期な感じの音。
71年にバンドが解散した後、73年には同じような顔ぶれであのBEDLAMを結成。
BARNEY WILEN & HIS AMAZING FREE ROCK BANDは、マイルズ・デイヴィスとの共演でも知られるフランスのサックス奏者バルネ・ウィランが何故かドイツでやっていたバンド。
バルネ以外のメンバーはブリジット・フォンテーヌのバックも務めたフランス人マリウス・ロレンツィーニ(ギター)、GEORGES GRUNTZ SEXTETやMANFRED SCHOOF QUINTETへの参加でも知られるギュンター・レンツ(ベース)、DON CHERRY QUARTETやROLF+JOACHIM KUHN QUINTETなどに参加していたイタリア人アルド・ロマーノ(ドラム)、KLAUS DOLDINGER QUARTETやPASSPORT、BRAINTICKETなんかで活動したヴォルフガング・パープ(ドラム)、それにヨアヒム・キューン(キーボード)という錚々たる顔ぶれ。
1968年の唯一のアルバムから。
バンド名通り、フリー・ジャズとロックを統合したアプローチを狙っていたようで、ベースの反復リフの周りで各楽器が暴れまくる。
こんなことやっていたのか。
CANNOCKは1980年と82年にアルバムをリリースしていて、その頃はニュー・ウェイヴに転じていたようだが、活動歴は長く、ここに収録されているのは74年の7inchのB面曲。
変拍子リフに乗せて、甲高くて細い声質のヴォーカルが叫ぶ、サイケにもプログレにもハード・ロックにもなり切れない感じの曲。
THE CT FOUR PLUSはシングル4枚だけ出しているバンドで、1969年の2ndシングルのB面曲を収録。
歪んだギターをフィーチュアしたインストゥルメンタル。
STUFF CARPENBORG AND THE ELECTRIC CORONAは1970年にアルバムを1枚リリースしているバンドで、ちょっと中近東風味を醸し出すとりとめのない演奏はいかにもドイツのサイケという感じ。
MIKE LEWIS & CONNY PLANK名義でここに収録されている「Voodoo Woman」は、実際にはマイク・ルイスのソロ名義の1stアルバム(1971年)の収録曲だが、実際にコニー・プランクが参加して制作されている。
マイクは70年代前半にドイツで活動していたというカナダ人キーボーディストで、なるほどサイケデリックというよりもフツーにオルガン・ロックという感じ。
DRUMは1970年(76年という話も)に7inchを1枚だけ出しているバンドで、サイケデリックというよりもいかにも60年代的なギターとオルガンを前面に出したロック。
76年だとしたら古臭過ぎる。
THE SPEEDERSは66~70年にかけてシングルを6枚出しているバンドで、ここに収録された「I Can't Get It」は70年に録音されて未発表となった最後の音源だという。
暑苦しいヴォーカルが特徴的だがやはりサイケという感じではなく、このオムニバスがジャケットほどサイケデリックな内容ではなく、とにかくレア度偏重であることが改めてよくわかる。
(確かに何処にもサイケとは書いてなくて、”オブスキュアなクラウト・ロック”と銘打っているワケで)
KARL LENFERS & PETER JANSSENSはこの連名で2枚のアルバムを出しているが、ペーター・ヤンセンスという人はソロ名義で30枚ほどもアルバムを出している、西ドイツでは有名なミュージシャンらしい。
(”サクロ・ポップ・ミュージカル”なるジャンルの創始者なのだそうで)
ここに収録されている「Jesus And The Rockesr」は1972年の連名作の収録曲で、カール・レンファースは作詞を担当。
えらくシアトリカルな楽曲で、この曲はヴォーカルじゃなくて語りが入っている。
ANDORRAは1972年に結成されたバンドだが、アルバムはリリースしておらず、ここに収録された「On My Way」はオムニバスの収録曲。
パーカッションをフィーチュアした、ラテン・ロックとハード・ロックの中間みたいな音。
JAMは70年に自主制作の7inchを1枚だけリリースしている超オブスキュアなバンド。
フルートをフィーチュアした、どんよりとしたアシッド・ロック。
ドン・ポーリンは1929年フィラデルフィア生まれの作家/シンガーソングライターで、60年代半ばにドイツに移住して、主にフォークを演っていた人だという。
70年代半ばに帰国するまでに多数のアルバムを残していて、ここに収録された「Don't Forget To Love」を含む70年のアルバムではEMBRYO他に参加していたジークフリート・シュワブがアレンジを担当している。
ドンはこの時点で41歳だが、なかなかカッコいいサイケ・ロックになっているのだった。
TUSKは1970年に7inchを1枚だけ残しているスイスのバンド。
DEEP PURPLEに対するスイスからの回答と呼ばれたとか呼ばれないとか。
実際『IN ROCK』当時のDEEP PURPLEに影響されたらしいが、むしろ初期のTHE AMBOY DUKESあたりを思わせたりもするハード・ロック。
そして出ましたTHE MONKS!
しかし聴いたことあるようなないような曲。
なんと、1965年に録音されてアセテート盤1枚しか存在しないという超激レア音源。
その後彼らのアルバムに収録される「Pretty Susanne」の原型。
「Pretty Susanne」よりヘヴィでダウナー。
続いてCANが入っているのだが、コレも聴いたことない曲。
この「The Million Game」というのは、1971年のTV番組のテーマ曲なのだという。
サックスやフルートをフィーチュアしたスピーディーな演奏はあんまりCANっぽくないのだが、エフェクトや編集はなるほどCANだ。
最後にAL CAPONEというバンドが入っている。
1972年(75年という話も)の唯一のEPの収録曲。
フルートと素人臭いヴォーカルをフィーチュアした楽曲と演奏はCANNOCKやDRUMあたりと同様、サイケにもプログレにもハード・ロックにもなり切れない感じの中途半端さ。
さて全20曲聴き終えた…と思ったら、最後の最後にヴォコーダーによる、曲とも言えないようなのが入っている。
このCDには一切クレジットがないのだが、この21曲目はフローリアン・シュナイダーによる未発表音源なのだという。
先述した通り、70年代のオブスキュアなドイツのバンドを集めたからといって、コレ全部”クラウト・ロック”で括るってどうよ?…と思わないでもないし、クォリティにはばらつきがあるものの、まあとにかく、よくここまでレアな音源ばかり集めたモノだ。
しかもライナーノーツで(フローリアン・シュナイダー以外)全バンドきちんと解説してある。
編纂者(ライナーを書いている”kain & bebel”というのがそうだろう)の異常な執念を感じずにいられない。