
その時点で前身バンドECZEMAの結成から17年、初期のプリミティヴなサウンドではなくなっていたが。
で、SATYRICONがプリミティヴなブラック・メタルを聴かせていた初期2作がリミックス/リマスターを施して再発。
28日にリリースされている。
『DARK MEDIEVAL TIMES』(画像)
1994年初頭にリリースされた1stアルバム。
92~93年にかけてサティアー(ヴォーカル他)以外のメンバーが全員脱退し、93年に加入したフロストのドラム以外はすべての楽器をサティアーが担当。
キーボードによるクラシカル/シンフォニックなアプローチは当時他の多くのブラック・メタル・バンドもやっていたが、SATYRICONの場合はアコースティック・ギターを大々的にフィーチュアしたトラディショナルなメロディで他と差別化していた。
まさに”暗い中世”というタイトル通りというか。
サティアーにとってはその暗鬱なムードこそが大切なようで、初期のブラック・メタル勢の中では珍しくというか、サタニズムを前面に押し出してはいない。
『ブラック・メタル サタニック・カルトの30年史』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201712article_20.html)にSATYRICONの名前がほとんど出てこないのはそのせいか。
それはさておき、1曲目から8分以上の曲が続く。
ドカドカ・ドラム+チェーンソー・ギター+呪わしい叫喚+キーボード類…まではわりと他にもあったスタイルながら、この長尺曲中心でアコースティック/トラディショナルなパートと行き来する展開の多さ…が初期SATYRICONの真骨頂。
音質はリマスターしてもまあこんなもんか、ぐらいな感じながら、そもそもこの時期のブラック・メタルにそんな高音質を求める人もいないだろう。
『THE SHADOWTHRONE』
1994年秋、前作から8ヵ月という短いインターヴァルでリリースされた2ndアルバム。
EMPERORのサモス(ギター)が加入し、ARCTURUSのスヴェルド(キーボード)がゲスト参加、多少バンドらしい体裁で制作されているが、音楽性自体は前作とそう変わりがない。
ただ、冒頭の8分台2連発だけでなく後半にも9分台の曲を配し、大曲志向と壮大さが更にスケールアップしている。
音質も向上し、サティアーのヴォーカルの禍々しさも増大。
前作ではブラストというよりもブラストの半歩手前(?)、みたいな感じだったフロストのドカドカ・ドラムも、このアルバムでは随所でモロにブラストしている。
一方で、専任の鍵盤奏者がゲスト参加した甲斐あってか、ピアノやチャーチ・オルガンのパートが充実。
反面、相変わらず展開は多いものの、前作を特徴づけていたトラディショナルかつ侘しいメロディはわずかに引っ込んだ感があり。
聴く人によって好みは分かれるかも知れない。
とはいえ、アコースティック・ギターを多用したSATYRICONらしさはここでも健在だし、デビュー時からアコギを前面に押し出しただけあって、この人たちは初期北欧ブラック・メタル勢の中でも最初からけっこう上手い人たちでした。
あと、この時点で「Vikingland」という曲が収録されているのも目を引く。
ともあれ、サティアーとフロストを中心に、SATYRICONはその後も試行錯誤と成長を続けていくのでありました。
そして2021年。
ECZEMAがSATYRICONと改名してから実に30年。