
SONIC'S RENDEZVOUS BAND解散後、スコット・モーガンは80年代にBROTHERS OF THE ROAD、SCOTT MORGAN GROUP、SCOTT MORGAN BAND、90年代に入るとTHE RATIONALSの一時的な再結成を経てSCOTTS PIRATES…と、地味ながらもコンスタントに活動を続けていた。
(それにしてもバンドが長続きしない人である)
そんなスコット、1996年にDODGE MAIN名義でデニス・テック(元RADIO BIRDMAN)、ウェイン・クレイマー(元MC5)と組んで以降、デニスと一緒に活動することが増え。
一方で、元々は直接的な関わりがなかったはずのTHE STOOGES/IGGY AND THE STOOGESの楽曲をライヴのレパートリーに取り入れるようになる。
(スコット以外のSONIC'S RENDEZVOUS BANDがイギー・ポップのバック・バンドとしてツアーしている間、デトロイトに残ったスコットが始めたのがBROTHERS OF THE ROADだった。ロードに出ないでデトロイトで活動していたスコットのバンドがBROITHERS OF THE ROADとは、なかなか皮肉じゃないか…)
故フレッド”ソニック”スミスの代わりにデニスを入れた再結成SONIC'S RENDEZVOUS BANDとも言うべきTHE RENDEZVOUS BAND(99年)、TEK, MORGAN & 3 ASSASSINS(2001年)など。
(一方でスコットはHELLACOPTERSのニッケ・ロイヤルら北欧勢とも一緒にやっていたが)
そんなスコット・モーガンが、DODGE MAIN、THE RENDEZVOUS BAND、TEK, MORGAN & 3 ASSASSINSに続いてまたしてもデニス・テックと組んだ1枚。
(時系列的には大体上の通りだが、リリースの順番は前後してたりもするんでややこしい)
ジャケットを見ての通り、スコットの当時の新バンド・POWERTRANEにデニス、更に元THE STOOGESのロン・アシュトンが加わった格好。
正式な(?)名義は”SCOTT MORGAN'S POWERTRANE FEATURING DENIS TEK WITH SPECIAL GUEST RON ASHETON”(なげえよ!)。
2002年4月13日と11月10日、デトロイトのTHE BLIND PIGでのライヴ。
(凄い名前のハコだね…)
SCOTT MORGAN'S POWERTRANEのメンバーは、スコット・モーガン(ヴォーカル、ギター)、ROB TYNER BANDやミッチ・ライダーのバックで活動したロバート・ギレスピー(ギター)、元MAZINGA(バンド名はもちろん『マジンガーZ』から)のクリス”ボックス”テイラー(ベース、ヴォーカル)、2001年のTHE HYDROMATICSでもスコットと一緒にやっていたアンドリュー・フロスト(ドラム)。
デニス・テック(ヴォーカル、ギター)は全編で演奏に参加しているので、最初からギター3本。
HYDROMATICSの楽曲やRADIO BIRDMANの楽曲、それにSONIC'S RENDEZVOUS BANDの名曲「Dangerous」やROB TYNER BANDの「Taboo」などが次々に放たれる。
フロントの二人はもちろん、バック陣の力量もまったく問題なく(しかもラウドで分厚いサウンド)、実にカッコいい。
しかし、スコット・モーガンには大変失礼ながら、ライヴのハイライトはロン・アシュトン(ギター)が加わっての終盤、「1969」「I Wanna Be Your Dog」「Down On The Street」「No Fun」「TV Eye」というTHE STOOGESナンバー5連発。
そのうち4曲では元CULT HEROES(
https://lsdblog.seesaa.net/article/201610article_6.html)の黒人シンガー、ハイアワーサ・ベイリーが歌い、ステージ上にはギター4人を含む7人がいたことになる。
ハイアワーサの歌唱はイギー・ポップに迫れるようなモノではないながら、STOOGES楽曲を歌いこなすのはスコットにもデニス・テックにも難しかったはずで、当然ながら専任ヴォーカルが必要とされたのだろう。
(「1969」を歌っているのはデニスだと思うが、やはり弱い)
そしてロンの強力なギターがかつてのままなのは、その後の再結成STOOGESで証明された通り。
ここでは曲によりロンとデニスのリード・ギターが左右のチャンネルから襲いかかり、スコットとロバート・ギレスピーがリズム・ギターを聴かせたりしているので、ギター・パートに限って言えば再結成STOOGESのライヴより凄いかも知れない。
(常に4人がギターを弾いていたワケではなさそうなのは、「No Fun」でハンドクラップが聴こえることからも明らか)
もっとも、自分の新バンドのライヴの終盤がTHE STOOGES祭りになってしまったスコット・モーガンの心中や如何に(苦笑)。
「I Got A Right」ならスコット自身も歌っていたレパートリーだが、ジェイムズ・ウィリアムソンの曲である「I Got A Right」を、ロン・アシュトンを含む編成で演るのは無理だったろう。
もっとも、このライヴがこうしてCDになったのも、ロン・アシュトンの参加あったればこそではなかったかと。
その後デニス・テックがRADIO BIRDMANを再結成したせいか、スコット・モーガンとデニスのコラボレーションは行なわれなくなった(はずだ)が、スコットはTHE SOLUTIONでニッケ・ロイヤルと組んだりする一方で、単にPOWERTRANEと名乗るようになったバンドで00年代末まで活動。
07年にはPOWERTRANEとしてのスタジオ・アルバム『BEYOND THE SOUND』をリリースしている。
スコットは10年に、60年代以来のキャリアで初となるソロ・アルバム『SCOTT MORGAN』をリリース。
(残念ながら近年は健康に問題を抱えていると聞く)
クリス・テイラーはTHE AVATARSに参加し、アルバムを1枚リリースして解散。
アンドリュー・フロスト(POWERTRANEでの演奏を聴く限り、無名ながら素晴らしいドラマーだったと思う)は、10年に亡くなっている。
POWERTRANEと同時期に再びミッチ・ライダーとも活動していたロバート・ギレスピーは、どうしていることか。