ARGUS(2001)

ARGUS.jpgイングランドのスケグネスで結成されたというバンド、ARGUS。
活動中に音源リリースはなく。
コレは30年近く経ってリリースされた発掘音源。

当時のレーベル宣材では、WISHBONE ASHがこのバンドの影響を受けて、アルバムのタイトルにまでしてしまった…という話だったが。
それ本当?
逆じゃないの?

メンバーはケン・ルイス(ヴォーカル)、デル・ワトキンス(ギター)、ミック・パール(ベース)、デイヴ・ウォグスタッフェ(ドラム)の4人。
デル・ワトキンスはRARE AMBERというバンドで1969年にアルバムを出していて。
その後JULIAN'S TREATMENTで活動。
(こちらは当時音源がなく、ARGUS同様のちに発掘されている)

このCDに収録されたのは1973年にロンドンで録音されたというデモ音源5曲。
1曲目「Friend Of Mine」は、FREEを思わせるような、タメの効いたブルーズ・ロック。
ただしドラムがやたらと手数多く叩いている。
2曲目「Road To Life」は一転して疾走するハード・ロック。
なかなかカッコいい。
ドラムだけでなく、ギターもベースもかなりの腕前だったことがわかる。
ヴォーカルだけは素人臭さが否めない、かつ英国ロックによくいるタイプの熱くなり切らない歌唱。
3曲目「Twenty-four Hours」はLED ZEPPELIN「Since I've Been Loving You」っぽいブルーズ。
4曲目「Same Old Story」で1曲目みたいな引きずるリズムのブルーズ・ロックに戻る。
5曲目「Superstition」はBECK, BOGERT & APPICEのカヴァー。
腕に自信、だったであろうメンバーにはふさわしい選曲だ。
ただ、やっぱりヴォーカル…なんというか、昔EURO-ROCK PRESSで誰かがデイヴィ・パティソン(元GAMMA~ROBIN TROWER他)を評した”ブルーズ的な歌い回しでメロディから逃げ回る”みたいな。
ヴォーカルがコレじゃなかったら、もっとカッコいいカヴァーになったと思うんだけど。

ARGUSには当時エルトン・ジョンのロケット・レコーズとの契約話があったというが。
しかしバンドは解散してしまい、デモ音源しか残らなかった。

で、CDの後半にはデイヴ・ウォグスタッフェがその後結成したANACONDAのライヴ音源が収録されている。
(実はこっちの方が長い)
1977年ロンドンでの演奏。
デイヴ以外のメンバーはランディ・スペンス(ギター、ヴォーカル)、ロッド・ニューイントン(ベース)、”マッド”レグ(フルート)。

1曲目は「Funk Song」というタイトルだが、リズム・セクションは確かにファンキーに跳ねてはいるものの、いわゆるファンクという感じじゃないな。
2曲目「Why Can't They Leave Us Alone?」も、「Funk Song」とほとんど同じようなリズム・パターン。
ランディ・スペンスが暑苦しい系のヴォーカルを聴かせる一方で、フルートがフィーチュアされていることからもわかる通り、歌よりはむしろインストゥルメンタルを重視したバンド。
スローに始まる3曲目「Take No Chance」は8分以上もあり、途中で変態的なキメフレーズを経てテンポがアップ。
長いギター・ソロではランディがかなりの速弾きを披露する。
ARGUS以上の演奏巧者が集まったバンドだったことがよくわかる。
4曲目「Drum Thing」は曲名から丸わかりの、デイヴ・ウォグスタッフェのドラム・ソロを中心とする1曲。
(こちらも8分超え。そのうち5分近くがドラム・ソロ)
やはりというか、デイヴの上手さはARGUSよりも更に際立つ。
5曲目「Jubilee Shuffle」は、これまた曲名通りのシャッフル/ブギーで、ランディがギターを弾きまくるインストゥルメンタル。
そして6曲目・7曲目は組曲「77 St Thomas' Road(Pts 1&2)」。
組曲といってもプログレみたいな長大なやつじゃなくて2部構成、BUDGIEの「Napoleon Bona-Part 1/Part 2」みたいな、というか。
こちらもフルートとギターを前面に出したインストゥルメンタル。
これまたかなりテクニカル。

しかしこの、フルートとギターをフィーチュアしたプログレッシヴ・ブルーズ的な音楽性…1977年にコレは、シーンに居場所はほとんどなかったのでは。
結局ANACONDAもリリースに至らず解散。
なかなか惜しいバンドだったと思う。

デイヴ・ウォグスタッフェを除くANACONDAのメンバーは、その後名を成すことはなく。
元ARGUSのミック・パールはなんとポール・ヤングで知られるTHE Q TIPSに参加し、バンド解散後はポールのソロ作でもベースを弾いている。
デイヴはQUASARやLANDMARQといったバンドで活躍し、ジョン・ウェットンやスティーヴ・ハウ、オリヴァー・ウェイクマンなどとも活動。
デイヴだけは今も現役の模様。

「無機質な狂気 第13夜」@新大久保EARTHDOM

無機質な狂気.jpg29日。
午後、酷暑の炎天下を(日陰伝いに)向天神橋から梅ヶ丘まで30分歩いて死にそうになる。
ともあれ小田急線で世田谷区を離れ、新宿。
新宿から新大久保まで再び(日陰伝いに)歩く。
ビールは手放せない。
時間があったので、新大久保の「パリミキ」で眼鏡をクリーニングしてもらったら、女性店員がサングラスに顔面ピアスに手首タトゥーで驚いた。
まあ都心のお店でだけOKなんだろうな。
(埼玉県内のパリミキでそんな店員見たことない。件の女性店員は地方転勤とか言われたら会社辞めるのかも)
それはさておき吉野屋で早めの夕食。

4ヵ月ぶりのEARTHDOM。
フロアではDJ Zが裸のラリーズを回しまくっていた。
「無機質な狂気」は2018年11月の”第七夜”(https://lsdblog.seesaa.net/article/201811article_4.html)以来約5年ぶり。
ところが、今回が最後の開催になるのだという。

一番手は浜松のUP-TIGHT。
某SNSではずっと以前からつながっていたんだけど、ライヴを観るのは初めて。
ドラマーは女性、ベーシストは座ったままなので俺がいたフロア後方からはほとんど見えない。
最小限の照明の中で炸裂する爆音のギターと語るようなヴォーカルには、誰もが裸のラリーズを連想するだろうが、実際にはラリーズとはかなり違う”間”の感覚を持った、独特なサウンド。
バンド名がTHE VELVET UNDERGROUNDに由来する通り、リフなど随所に『WHITE LIGHT/WHITE HEAT』の頃のVELVET UNDERGROUNDを思わせるセンスが。
カッコよかった。

ZさんのDJに続いて、the GOD。
バンドが音を出し始めると、眼の周りと鼻筋に奇妙なメイクを施したNON(ヴォーカル)が登場。
昨年観た時はNONが数曲でアコースティック・ギターを演奏していたが、今回は全曲で歌に徹していて。
その分アクションが派手なのが良い。
チャック・ベリー~THE ROLLING STONES風のリフが随所で聴かれる日本語のR&R…は村八分の系統と言えるのだろうけど。
しかしずっしりした演奏に乗るNONの軽妙で味わい深いヴォーカルは、やはりこのバンドならではのオリジナルなモノだ。
ずっしり感じるのはツボを押さえたHAGAL(ベース)とキヨシ(ドラム)のリズム・セクションによるモノだろう。
KINちゃん(ギター)は髪型や服装が前回観た時以上にジョニー・サンダースに寄っていた。

Zさんがキャ→とか回して盛り上がったところに、アレルギー登場。
俺が宝島誌上でアレルギーの名前を知ったのは、彼らが解散した頃だ。
40年近く経ってアレルギーをナマで観る日が来るとは…。
(TVでDe-LUXを観ていた頃には想像もしなかったよ)
アレルギー自体は10年ほど前から活動を再開しているが、宙也(ヴォーカル)以外は全員入れ替わっている。
しかし宙也を支える2023年のアレルギーは、内藤幸也(ギター)、オカジママリコ(ベース)、小松正宏(ドラム)という超強力メンバー。
特にベースが女性というのは重要。
で、想像以上にアレルギーそのものの音だった。
宙也のヴォーカルにも衰えなし。
(ルックスも60代には見えない)

残念ながら都合によりアレルギーのステージ半ばで退出したが。
充分堪能しました。
Zさんもお疲れさまでした。

真夏の死

SINEAD OCONNOR.jpg1日に九里一平が亡くなったとのこと。
死因は不明。
83歳。
元・タツノコプロ社長にして漫画家/アニメーター。
タツノコアニメのあの特徴ある絵、そして永遠に記憶に残り続ける作品の数々を作り上げた重要人物の一人だった。
『昆虫物語 みなしごハッチ』『マッハGoGoGo』『科学忍者隊ガッチャマン』『タイムボカンシリーズ』『宇宙の騎士テッカマン』『新造人間キャシャーン』『ゴワッパー5 ゴーダム』『未来警察ウラシマン』…お世話になりました。
特に『みなしごハッチ』…母親によると、幼児期の俺は『みなしごハッチ』を観ては毎回泣いていたという。

21日にトニー・ベネット。
長くアルツハイマーを患っていたことはよく知られるところだろう。
96歳。
「Blue Velvet」「Stranger In Paradise」「I Left My Heart In San Franciso」といった往年のヒット曲もさることながら。
アルツハイマーに罹患しながら90代半ばまで現役を続行したという偉業は、誰にも真似出来まい。
レディー・ガガと仲良しの90代のおじいちゃんとか、すげえな。

24日、ブラッド・ハウザーが。
死因は不明。
62歳。
EDIE BRICKELL & THE NEW BOHEMIANS他のベーシスト。
THE NEW BOHEMIANSの後は全然チェックしていなかったんだけど、テキサスをベースにずっと活動し続けていたんだな。
(ってかNEW BOHEMIANSも再結成していたのか)
しかしこのへんももう還暦前後という。
イーディー・ブリッケルももう57歳なんだって…。

そして26日にシネイド・オコナーが亡くなったという。
思わず声が出た。
死因は公表されていないが、長くメンタルヘルスの問題を抱えていたのは周知のこと。
56歳。
大ヒット、法王批判に対するバッシング。
度重なる結婚と離婚。
自殺未遂と入院。
イスラム教への改宗。
息子の死。
波乱万丈にもほどがある人生だった。
近年は別人のように老け込んでいたものの、かつての神がかった美貌と透明感あふれる歌声を思い出す人は多いだろう。
それにしても56歳とは…。


さても殺人的な暑さ。
皆様御自愛ください。
まあ俺はもう何年もエアコンなしの生活だけどな。