
NAZARETHについては、このブログを始めて間もないころに1977年のアルバム『EXPECT NO MERCY』を紹介したが。
(
https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_261.html)
次はあのアルバムを取り上げるかな、それともアレかな、とか思っている間に、13年も経った(…)。
で、1971年の1stアルバム。
俺の手元にあるのは1988年にアメリカのA&Mから初CD化された時の盤で。
昔前橋にあった輸入盤屋(わりとすぐ潰れた)で、新品で500円だったと記憶する。
スコットランドで1968年に結成されたNAZARETH。
メンバーはその後90年まで不動の4人、ダン・マカファーティ(ヴォーカル)、マニュエル・チャールトン(ギター)、ピート・アグニュー(ベース)、ダレル・スウィート(ドラム)。
(その間にギタリストがもう一人入ったり抜けたりしているが)
ゲスト陣がナニゲに豪華、かつ異質な感じ。
ピアノが当時KEEF HARTLEY BANDにいたピート・ウィングフィールド。
パーカッションに元THE SPENCER DAVIS GROUPで、当時HARDIN & YORKで活動していたピート・ヨーク。
スライド・ギターは当時何処にでも顔を出していた(?)名手B.J.コール。
オルガンが当時EGGで、のちにHATFIELD AND THE NORTHに参加するデイヴ・ステュアート。
そしてストリング・アレンジは、THE TROGGSのプロデューサーとして知られるコリン・フレッチャー。
プロデューサーは当時EAST OF EDENやCARAVANを手掛けていたデイヴィッド・ヒッチコックで、エンジニアは当時まだ無名だったロイ・トーマス・ベイカー。
更にストリングスのオーヴァーダブに当たって、のちにROXY MUSICやDOCTORS OF MADNESSやJAPANのプロデューサーとして活躍するジョン・パンターが参加している。
ゲスト陣や制作陣の顔ぶれからも想像出来る通り、この時点のNAZARETHのサウンドは、のちのけたたましいハード・ロックではない。
確かにハード・ロックっぽい曲もあるんだけど。
ダン・マカファーティは、1曲目「Witchdoctor Woman」あたりを別とすると、この時点ではあまり声を張らず、80年代以降アクセル・ローズなんかに影響を与える人とは思えない歌唱スタイル。
そして、ストリングスをフィーチュアしたソフトな曲が目立つ。
一方この時点で後々まで変わらないのは、アメリカ志向。
何しろバンド名自体、THE BAND「The Weight」の歌詞に由来するという…いわゆるハード・ロックには珍しいですね。
その後ジョニ・ミッチェルのカヴァー「This Flight Tonight」がヒット、THE EVERLY BROTHERSのカヴァー「Love Hurts」が大ヒットするし、『EXPECT NO MERCY』でもランディ・ニューマンの「Gone Dead Train」、ハーラン・ハワード/レイ・チャールズの「Busted」をカヴァーしていたが。
この1stアルバムではティム・ローズの「Morning Dew」を取り上げている。
…で、ラストの「King Is Dead」は、イントロから壮麗なストリングスがリードする。
方向性が定まっていなかったNAZARETHは、続く2ndアルバム『EXERCISES』(1972年)ではロイ・トーマス・ベイカーをプロデューサーに迎え、ストリングスを更に大々的にフィーチュアしたソフト・ロックを演ってしまうのだった。
ロジャー・グローヴァー(当時DEEP PURPLE)のプロデュースによるエネルギッシュなハード・ロックでバンドのスタイルを完全に確立するのは、その次の『RAZAMANAZ』(73年)まで待つことになる。
その後、マニー・チャールトンが1990年に脱退し、99年にはダレル・スウィートが死去。
2013年にはバンドの顔だったダン・マカファーティが健康を害して脱退(引退)。
そしてマニーとダンは昨年相次いで亡くなっている。
現在のNAZARETHでは元PERSIAN RISK(!)のカール・センタンスがシンガーを務めている…というのは以前も書いた通り。
バンドは唯一のオリジナル・メンバーとなったピート・アグニュー(77歳)を中心に、結成から55年を経た今も活動を続けている。