
(https://lsdblog.seesaa.net/article/500095417.html)
こちらはその20年ほど前のライヴ。
MC5の解散後にドラッグの取引で収監されていたウェイン・クレイマーは、出所するとパンクで沸き返っていたイギリスで温かく迎えられ、しばらくはそこで活動していた。
その時期のライヴ。
ウェイン・クレイマー(ヴォーカル、ギター)を支えるメンバーは、ラリー・ウォリス(ギター:元PINK FAIRIES、MOTORHEAD)、アンディ・コルホーン(ベース:元WARSAW PAKT他)、ジョージ・バトラー(ドラム:THE LIGHTNING RAIDERS)。
このアルバムの邦題は”ミーツ・ピンク・フェアリーズ”となっているが、確かにアンディもジョージもその後PINK FAIRIESのメンバーとして活動したものの、正確に言えばこの時点でラリーたち3人が”PINK FAIRIES”というワケではなかった。
ともあれラリーたち英国勢が元MC5のウェインと活動することにエキサイトしていたのは間違いなかったし、ウェインの方もデトロイト・ロックの影響を70年代のロンドンで醸していたPINK FAIRIES~MOTORHEADのメンバーであるラリーと一緒に演奏出来たことを喜んだはずだ。
ともあれしばらく刑務所で暮らしていたウェイン・クレイマー…ライヴをやるにあたって充分なオリジナル曲はなかった。
そこでここでは、「Kick Out The Jams」「Looking At You」というMC5のレパートリー、ウェインが当時リリースしていたシングル「Ramblin' Rose」(1977年:https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_581.html)から「Ramblin' Rose」(コレも元々はMC5のレパートリーだ)と「Get Some」、「The Harder They Come」(79年:https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_2176.html)から「The Harder They Come」と「East Side Girl」、そして数々のカヴァー曲でステージを構成している。
上記以外の曲はモーズ・アリスンの「Goin' Up To The City」、ボブ・シーガーの「Heavy Music」、トラディショナルにウェインの語り風ヴォーカルが乗った「Cocaine Rap」、GRAND FUNK RAILROADもカヴァーしていたジェリー・ゴフィン&キャロル・キングの「Some Kind Of Wonderful」、テキサスのソウル・シンガー、レオン・ヘイワードの「Freaky」、そしてこれまたMC5のレパートリーでもあったチャック・ベリー「Back In The U.S.A.」となっている。
「Ramblin' Rose」と「The Harder They Come」もカヴァーなので、全12曲中、純然たるオリジナルは「Get Some」「East Side Girl」の2曲だけだったことになる。
MC5のレパートリーだった「Kick Out The Jams」にしても「Looking At You」にしても「Back In The U.S.A.」にしても、ヴォーカルがロブ・タイナーではなくウェイン・クレイマーということで、物足りなく感じられるのは仕方ないかも知れない。
(しかもテープがなかったのか、ラストの「Looking At You」は途中でブツッと切れてしまう)
しかし、THE DAMNEDが「Looking At You」をカヴァーしていた当時のロンドンにあって、そのオリジネイターたるMC5のメンバー:ウェインは、当地のパンクスに熱狂的に迎えられていたことだろう。
そして「Kick Out The Jams」はMC5末期のヴァージョンに近いスピーディーなアレンジで演奏されている。
何より注目すべきはボブ・シーガーのカヴァー「Heavy Music」かも知れない。
現在では”ハートランド・ロック”などという括りに入れられているボブが、かつてイギー・ポップにも影響を与えたデトロイト・ロックのアイコンのひとつだった…そのことを、ウェイン・クレイマーは70年代末の英国のキッズに改めて知らしめるように、熱くヘヴィにプレイする。
ちなみに初期のEDDIE AND THE HOT RODSもボブの「Get Out Of Denver」をカヴァーしていて、1990年の発掘ライヴ盤『GET YOUR BALLS OFF』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_618.html)で聴くことが出来る。
そしてこの後、ウェイン・クレイマーはもう一人の元祖パンクであるジョニー・サンダースとのGANG WARで短期間活動するのだった。