「ブリティッシュ・ジャズ・シーン小考」@80's

SOFT MACHINE.jpgここのところ度々話題にしている1981年のFOOL'S MATE VOL.17。
新連載が始まっている。
「ブリティッシュ・ジャズ・シーン小考」。
書き手は指田英二という人。
第1回のネタは1981年3月にリリースされた、SOFT MACHINE(当時)最後のアルバム『LAND OF COCKAYNE』(画像)。
コレが滅法面白い。

『LAND OF COCKAYNE』というアルバムは、今では誰もが知る通り、SOFT MACHINEという名義で出ただけの、カール・ジェンキンスのソロ・アルバムに限りなく近い作品だ。
SOFT MACHINE史上でも評価は低い。
FOOL'S MATEの記事でも、ぶっちゃけ全然褒めてないんだけど、しかしコレは読ませる文章だ。
何より詳しい。

指田英二という人は、現在ではほぼ完全に忘れられてしまっているが、当時英国ジャズ/ジャズ・ロック/プログレなどの分野で活躍したライター/音楽評論家だった。
LPのライナーノーツなどの他、「ROCKIN' BALLS」などのファンジンでも執筆している。
(俺はROCKIN' BALLSを読んだことは一度もないんだけど)
何より特徴的なのは、1980年前後としてはとても信じられないような、バンドやミュージシャンやシーンに関する該博な知識。
当時HAWKWINDをはじめとして、ピート・フレイムもびっくりな詳しいファミリー・ツリーを幾つか残している。
(英国バンドだけでなく、70年代の日本のバンドなどにも詳しかったらしい)

しかし、FOOL'S MATEの「ブリティッシュ・ジャズ・シーン小考」は続かなかったらしい。
俺がVOL.17の次に持っているバックナンバーは、同じ1981年のVOL.19なのだが、そこにはもう載っていないのだ。

俺が80年代に南郷7丁目の「文教堂書店」でFOOL'S MATEを買った頃、指田英二氏が何者かを知る術はまったくなかった。
しかし今ではインターネットという利器がある。
検索してみた。
情報は少なかったものの、幾つかのサイトにたどり着いた。

…早くに亡くなっていたらしい。

https://otonashiokamae.blogspot.com/2018/10/blog-post_13.html

指田英二氏の思い出を語った上記のブログによると、1989年の時点で既に七回忌を終えていたらしく。
ということは、82年頃にはもう亡くなっていたのか。

残された文章からしても、指田英二氏がもし長生きしていたら、ジャズ・ロックをはじめとする英国ロックを語るうえで、絶対に外せないような存在になっていたのでは、と思う。
(存命なら多分70代、EURO-ROCK PRESSに寄稿していたかも知れない)
しかし運命は残酷だ。


FOOL'S MATE誌上で、指田英二氏は”ブリティッシュ・ジャズに興味をお持ちの方連絡ください”というコメントと共に、埼玉県所沢市南住吉の住所を掲載している。
指田氏は他でも住所や電話番号を公開していた。
今では考えられないね。

指田英二氏が亡くなってから、多分40年以上経過しているはずだ。
試しにGoogle Earthで見たら、所沢市南住吉の住所には一軒家が存在することが確認出来たが、多分そこに”指田さん”はもう住んでいないだろう。
(上記のブログに登場したお母様も、もう存命のはずがない)
今はSOFT MACHINEを聴いている。

天才の今

国民クイズ.jpg『ロダンのココロ』で知られる漫画家・内田かずひろが一時ホームレス状態だった…というのは、コロナ禍真っ最中の3年半ほど前に書いた話。
https://lsdblog.seesaa.net/article/202104article_15.html

で、こっちは昨日の「日刊SPA!」に載っていた話。
『国民クイズ』(画像)『バカとゴッホ』『惑星スタコラ』で知られる加藤伸吉が、現在は生活保護を受給しているという。

https://nikkan-spa.jp/2042261

マジか…。

30年ほど前に『国民クイズ』の連載が始まった時、「とんでもねえのが出てきたなあ…」と思った。
まあ『国民クイズ』は、原作者は別にいたんだが、加藤伸吉の絵のインパクトも凄かった。

それが、生活保護ですか…。
今度世に出る読み切りが、実に9年ぶりの漫画作品だとか。


俺の周りにも、特に知り合いとかじゃなくて、一度会って飲んだことがあるとかいう人も含めて、漫画家が何人かいる。
雑誌の表紙を飾ったりで大儲けしている人、作品が映画化されたりでかなり成功している人、堅調に仕事を続けている人、赤貧にあえいでいる人、今何をやっているかわからない人、廃業した元漫画家など。
超シビアなピラミッド構造、本当に大変な仕事だよなあ。
しかし加藤伸吉は、若い人にはどんどん漫画家を目指してほしいという。

ところで加藤伸吉って、STEELY DANのファンだったのね…。


ちなみに内田かずひろも活動を続けている。

ORANGE SUNSHINE/HOMO ERECTUS(2001/05)

ORANGE SUNSHINE.jpg”オランダのBLUE CHEER”ことORANGE SUNSHINEについては、これまでに2ndアルバム『BULLSEYE OF BEING』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_266.html)と3rdアルバム『LOVE=ACID SPACE=HELL』(https://lsdblog.seesaa.net/article/501946090.html)を紹介したが。
満を持して(?)1stアルバムも行ってみよう。

オランダで500枚限定のLPとしてリリースされたのが2001年。
俺の手元にあるのは北浦和のリーフ・ハウンド・レコードから05年に出たCD。
LPは全6曲だったが、CDではボーナス・トラックを含む全8曲となっている。

邦題は、付けも付けたり、ズバリ”サイケデリック”。
CDの帯では”99年に結成されたヘヴィ・サイケ/アシッド・ガレージ・バンド”と、一応種明かしされているが。
ライナーノーツには、”本ライナーは、’69年リリース時のものをそのまま掲載しております”なんて書いてある(笑)。
コレまでにも書いたけど、ORANGE SUNSHINEの諸作が本当に60年代末~70年代初頭にかけて録音されたモノだと信じてしまった人は、けっこういたらしい。

実際には、前述の通り1999年にハーグで結成されている。
このアルバムの時点では、ギイ・タヴァレス(ドラム、ヴォーカル)、アーサー・ファン・バーケル(ギター)、トーマス・ファン・スローテン(ベース)のトリオ。

それにしても、本当に2001年のリリースとは思えないような、ヴィンテージ感覚あふれるヘヴィ・サイケを聴かせている。
次作以降で聴かれるような大曲はなく、ボーナス・トラック含む全曲が4~5分台とコンパクトにまとめられ。
一方でオリジナル曲のみの楽曲は、次作以降に較べるとまだまだ、な感じがしないでもない。
カヴァー曲(DEEP PURPLEやCREAMをBLUE CHEER風にカヴァーするとか…)を交えるようになった次作以降の方が、面白みはよりあるような気も。
ともあれアホみたいに歪んだギターをフィーチュアしたブルーズ・ベースのヘヴィ・ロックは痛快。

『HOMO ERECTUS』と同時期にレコーディングされながら更にヘヴィな『BULLSEYE OF BEING』、何故かR&Bガレージに揺り戻したような『LOVE=ACID SPACE=HELL』と、どれもユニーク。
前にも書いたけど、このバンドをはじめとしてヘヴィでアシッドなバンドばかりを精力的にリリースしていたリーフハウンドが2008年頃を最後にぱったり活動を停止してしまったのは残念。