CAMEL/LIVE IN HOLLAND 1984(2019)

CAMEL.jpg俺が初めてCAMELを聴いたのは、1984年。
80年代最後のオリジナル・アルバム『STATIONARY TRAVELLER』(全英57位)とライヴ盤『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』がリリースされた年だ。
(ぐわっ、40年前!)

刷り込みのようなモノもあるのだろうが、俺は『STATIONARY TRAVELLER』が大好きでしてね。
で、コレはまさにその時期のライヴ音源。
1984年5月15日、オランダでTV放送用に演奏・録音された約3時間・29曲(!)のライヴから、約1時間半・17曲(アンコールの「Rhayader」~「Rhayader Goes To Town」はチャプター分けされていないので、クレジット上は16曲)を収録したCD2枚組。
会場名はクレジットされていないが、ユトレヒトだったという。
ロンドンのHAMMERSMITH ODEONで『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』に収録されるライヴが行なわれた、その4日後。

当時のパーソネルは唯一のオリジナル・メンバーとなったアンドリュー・ラティマー(ギター、ヴォーカル、フルート、キーボード)、出戻った(?)コリン・バス(ベース、ヴォーカル、キーボード)、KAYAKのトン・スケルペンゼール(キーボード)、THE ALAN PARSONS PROJECTでも活躍したクリス・レインボウ(ヴォーカル、キーボード)、マディ・プライアーやMANDALABANDのアルバムに参加していたリッチー・クローズ(キーボード)、10ccで有名なポール・バージェス(ドラム)の6人。
ポール以外の5人が専任か兼任で鍵盤を担当するという、SAGAを凌駕するような(?)編成。
(ジャケットにはリッチーを除く5人しか見当たらないが)
CAMELがオランダで3時間にも及ぶTV用ライヴを行なったのは、トンの凱旋的な話題性があったのかも知れない。

『STATIONARY TRAVELLER』に伴うツアーということで当然同作からの楽曲を中心に据えつつ、当時LP1枚ものでリリースされた『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』に入らなかった曲が「Never Let Go」「Lady Fantasy」など4曲もある。
(『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』が2009年にCD化された際には「Never Let Go」や「Lady Fantasy」なんかも追加収録されたが)

『RAIN DANCES』(1977年:全英20位)からのシャキッとした「Unevensong」で始まるのがカッコいい。
MCを挟んで『CAMEL』(73年)の名曲「Never Let Go」に行くのも「うおお」となる。
編成が編成だけに鍵盤群のサウンドは厚いし、ポール・バージェスも10ccではおよそ聴けなかったようなパワフルな叩きっぷりだし。

しかしやっぱりね、『STATIONARY TRAVELLER』楽曲ですよ。
特に『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』にも収録された「West Berlin」。
暗くて地味な曲と思われるかもだけど、いやコレ大好きなんです。
あとオリジナルの『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』には入ってなかった「Stationary Traveller」も。
(アンディ・ラティマーの泣きのギターがもうたまらん)
侘しい「Fingertips」とかも。
ここまでのCAMELのアルバム中でも多分最も重くて暗かったコンセプト・アルバム『STATIONARY TRAVELLER』…その重さは90年代に復活して以降の作品群にも継承されることになったと思う。

しかもただ重くて暗いだけでなく、アンディのメロディ・メイカーぶりはいつだって映えている。
MTV向けポップス全盛の1984年に重くて暗くて地味な『STATIONARY TRAVELLER』が全英57位って、けっこう凄いぞ。
同時期にGENESISやYESはもっとバカスカ売れていたけど、CAMELと違って音楽性は全然変わっちゃってたからね。
もちろんCAMELも旧態依然のサウンドではなく、当時ならではのモダンな方向性を聴かせていたワケだが。

で、”重くて暗くて地味”を連呼してきたが、もちろん最後はお約束、『MUSIC INSPIRED BY THE SNOW GOOSE』(1975年:全英22位)からの「Rhayader」~「Rhayader Goes To Town」でガッツリ盛り上がる。
いやあ、CAMELって本当にいいもんですね。


リッチー・クローズはCAMELでプレイした後、コリー・ハートやマリリン・マーティンやABCやBIG COUNTRYなどのアルバムに参加し、セッションマンとして活躍していたが、1991年6月に39歳の若さで亡くなっている。
ポール・バージェスはリッチーと一緒にコリーのアルバムに参加したりして、近年はクリス・ファーロウのバンドや10cc(なんとライヴ活動を続けている)で活躍し、74歳の今も現役らしい。

EURO-ROCK PRESS Vol.103

EURO-ROCK PRESS Vol.103.jfifはい、EURO-ROCK PRESS最新号、本日発売です。


表紙と巻頭はジョン・アンダーソン。
リッチー・カステラーノ(BLUE OUSTER CULT)率いるTHE BAND GEEKSを迎えた新作…は聴いてないんだけどさ。





ともあれ今回もレヴューたくさん書きました。


AC/DC
AEROSMITH
BARQUE OF DANTE
BEDLAM
CARPENTERS
CHARLOTTE WESSELS
DARK TRANQUILLITY
ELVENKING(×3)
GONG
GRAND MAGUS
JUDAS PRIEST
MACHETE TACTICS
MICHAEL SCHENKER
MOTORHEAD
NIGHTWISH
OPETH
ORANSSI PAZUZU
SADE
SAMMY HAGAR
SIMONE SIMONS
WIND ROSE
WINTERSUN
WITHERING SURFACE
WOLFCHANT


26枚。
途中で他の仕事が忙しくなって断ったりもしたので、いつもよりちょっと少なめか。

あと、先月亡くなったポール・ディアノの追悼記事も書きました。


他の記事は、XOXO EXTREMEのライヴ・レポートとか。
YESのライヴ・レポートとか。
KORPIKLAANIのライヴ・レポートとインタヴューとか。
ビル・ブルーフォードのインタヴュー後編とか。
KING CRIMSON『RED』50周年記念盤についての記事とか。
欧州70年代ジャズ・ロック特集の後編とか。
GOBLINのドラマーとして知られるアゴスティーノ・マランゴロのインタヴューとか。
ARTI & MESTIERIのインタヴューとか。
シモーネ・ムラローニ(DGM)のインタヴューとか。
今回も読みごたえありです。


(2024.12.1.改訂)

『心がフッと軽くなる 老子の言葉』

心がフッと軽くなる 老子の言葉.jpg多分『介護の「困った」「知りたい」がわかる本』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202206article_2.html)以来となる宝島社TJ MOOKの仕事。
老子の言葉をわかりやすく解説した本。
”執筆協力”として参加しています。

4月に出た『人生のあらゆる悩みを2時間で解決できる! ブッダの教え見るだけノート』(https://lsdblog.seesaa.net/article/503141010.html)も好評だったらしく。
それで今回は老子か。

「無知こそ最強と知る」「今の自分に満足する」「他人と比較しない」「フレキシブルに生きるコツ」「戦国の現代を生き抜く」「豊かさの意味を知る」の全6章で、老子の教えがシンプルでわかりやすい言葉で解説されています。
(まあ老子は”フレキシブル”とか言ってなかったけどさ)
老子と言ったら高校の社会科でも必ず習う”無為自然”で有名だけど、老子が残した(とされる)『老子』(老子道徳経)は、実はけっこう難解なことでも知られる。
それをかみ砕いて平易な言葉で、イラストと一緒に読みながら楽しく理解出来るような1冊。

それにしても老子は面白いじいさんだ。
「みんなキラキラしているけど私一人だけ田舎くさい」とか、ぼやいているのかなと思ったら、「でも”道”を守ってるのは私だけ」みたいな強い自負を感じさせる言葉に続いていたり。
”柔弱謙下”のイメージが強い一方で、「みんなに理解されないのは私がそれだけ尊いから」なんて言ってもみたり。
あと老子、儒家をけっこうディスってる。
ともあれ、今回の本を読んで、それから元の『老子』に行くのもイイと思います。


26日から発売中。