
80年代最後のオリジナル・アルバム『STATIONARY TRAVELLER』(全英57位)とライヴ盤『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』がリリースされた年だ。
(ぐわっ、40年前!)
刷り込みのようなモノもあるのだろうが、俺は『STATIONARY TRAVELLER』が大好きでしてね。
で、コレはまさにその時期のライヴ音源。
1984年5月15日、オランダでTV放送用に演奏・録音された約3時間・29曲(!)のライヴから、約1時間半・17曲(アンコールの「Rhayader」~「Rhayader Goes To Town」はチャプター分けされていないので、クレジット上は16曲)を収録したCD2枚組。
会場名はクレジットされていないが、ユトレヒトだったという。
ロンドンのHAMMERSMITH ODEONで『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』に収録されるライヴが行なわれた、その4日後。
当時のパーソネルは唯一のオリジナル・メンバーとなったアンドリュー・ラティマー(ギター、ヴォーカル、フルート、キーボード)、出戻った(?)コリン・バス(ベース、ヴォーカル、キーボード)、KAYAKのトン・スケルペンゼール(キーボード)、THE ALAN PARSONS PROJECTでも活躍したクリス・レインボウ(ヴォーカル、キーボード)、マディ・プライアーやMANDALABANDのアルバムに参加していたリッチー・クローズ(キーボード)、10ccで有名なポール・バージェス(ドラム)の6人。
ポール以外の5人が専任か兼任で鍵盤を担当するという、SAGAを凌駕するような(?)編成。
(ジャケットにはリッチーを除く5人しか見当たらないが)
CAMELがオランダで3時間にも及ぶTV用ライヴを行なったのは、トンの凱旋的な話題性があったのかも知れない。
『STATIONARY TRAVELLER』に伴うツアーということで当然同作からの楽曲を中心に据えつつ、当時LP1枚ものでリリースされた『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』に入らなかった曲が「Never Let Go」「Lady Fantasy」など4曲もある。
(『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』が2009年にCD化された際には「Never Let Go」や「Lady Fantasy」なんかも追加収録されたが)
『RAIN DANCES』(1977年:全英20位)からのシャキッとした「Unevensong」で始まるのがカッコいい。
MCを挟んで『CAMEL』(73年)の名曲「Never Let Go」に行くのも「うおお」となる。
編成が編成だけに鍵盤群のサウンドは厚いし、ポール・バージェスも10ccではおよそ聴けなかったようなパワフルな叩きっぷりだし。
しかしやっぱりね、『STATIONARY TRAVELLER』楽曲ですよ。
特に『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』にも収録された「West Berlin」。
暗くて地味な曲と思われるかもだけど、いやコレ大好きなんです。
あとオリジナルの『PRESSURE POINTS: LIVE IN CONCERT』には入ってなかった「Stationary Traveller」も。
(アンディ・ラティマーの泣きのギターがもうたまらん)
侘しい「Fingertips」とかも。
ここまでのCAMELのアルバム中でも多分最も重くて暗かったコンセプト・アルバム『STATIONARY TRAVELLER』…その重さは90年代に復活して以降の作品群にも継承されることになったと思う。
しかもただ重くて暗いだけでなく、アンディのメロディ・メイカーぶりはいつだって映えている。
MTV向けポップス全盛の1984年に重くて暗くて地味な『STATIONARY TRAVELLER』が全英57位って、けっこう凄いぞ。
同時期にGENESISやYESはもっとバカスカ売れていたけど、CAMELと違って音楽性は全然変わっちゃってたからね。
もちろんCAMELも旧態依然のサウンドではなく、当時ならではのモダンな方向性を聴かせていたワケだが。
で、”重くて暗くて地味”を連呼してきたが、もちろん最後はお約束、『MUSIC INSPIRED BY THE SNOW GOOSE』(1975年:全英22位)からの「Rhayader」~「Rhayader Goes To Town」でガッツリ盛り上がる。
いやあ、CAMELって本当にいいもんですね。
リッチー・クローズはCAMELでプレイした後、コリー・ハートやマリリン・マーティンやABCやBIG COUNTRYなどのアルバムに参加し、セッションマンとして活躍していたが、1991年6月に39歳の若さで亡くなっている。
ポール・バージェスはリッチーと一緒にコリーのアルバムに参加したりして、近年はクリス・ファーロウのバンドや10cc(なんとライヴ活動を続けている)で活躍し、74歳の今も現役らしい。