RUSH/HOLD YOUR FIRE(1987)

RUSH HOLD YOUR FIRE.jpgRUSHのアルバムの中で一番好きなのは、このブログで10年以上前に紹介した『GRACE UNDER PRESSURE』(1984年)だ。
https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_1216.html
その次はと言ったら、コレになると思う。
(『GRACE UNDER PRESSURE』を聴いた後、すぐに『2112』とかに遡ったけど、結局80年代のが好きだ、となった)

スタジオ作としては12枚目。
10曲で50分半という尺は、バンドがフォーマットとしてLPではなくCDをメインに考えるようになったことを象徴している。

前作『POWER WINDOWS』(1985年)ももちろん良かったが、デジタルな感触やシンセサイザーが『GRACE UNDER PRESSURE』以上に前面に出ていることに、少し違和感があった。
その点『HOLD YOUR FIRE』ではシンセのフィーチュア度が若干抑え気味になった一方で、デジタルな要素がよりこなれて自然に聴こえるようになった感があり。
(やはりというか、アレックス・ライフソンはあんまりシンセを前に出すのは嫌だったらしい)
しかも楽曲はポップでメロディアスでキャッチー。
それでいて時間をテーマにした深遠な歌詞をはじめとして、プログレッシヴな感覚は失われておらず。
あとジャケットもカッコいい。

プロデューサーは前作同様、ピーター・コリンズ。
シンセとプログラミングで、これまた前作にも参加していたアンディ・リチャーズがゲスト参加している。
この人は当時FRANKIE GOES TO HOLLYWOOD「Relax」「Two Tribes」、ジョージ・マイケル「Careless Whisper」や、PET SHOP BOYS「It's A Sin」「Always On My Mind」などの大ヒット曲に関わり続けていた、超売れっ子セッションマンだった。

ゲストと言えば、何と言っても「Time Stand Still」に客演したエイミー・マン。
TIL TUESDAYはそれほど好きでもなかったのだが、「Time Stand Still」のPVを観て「エイミー・マン、いい…」となったのは、俺だけではなかったらしい(笑)。
(この人すげえ背が高いんですってね)

意外なことに、80年代のRUSHのアルバムで、最もチャート・アクションが低いアルバムなのだそうで。
全米13位、全英10位。
暗いと言われた『GRACE UNDER PRESSURE』が全米10位、全英5位で(しかもなんとオリコンチャート72位)、『POWER WINDOWS』が全米10位、全英9位。
とはいえ全米13位なら堂々のヒット作だ。

これまた意外なことに、ネットで検索するとこのアルバムについて語っている人がけっこう多い。
(全曲の歌詞を訳して、国内盤歌詞カードの誤訳を指摘しているサイトまで)
RUSHって日本でそんなに人気あったんだっけ?
40年余りの活動の中で、来日1回しかなかったのにね。


さて、コレが2024年最後の投稿になります。
今年もどうにか生き延びた…。
皆様、良いお年をお迎えください。

たまには健康の話でも・その14

PLASMATICS.jpg仕事がとんでもないことになってきていて静かでのんびりした年末年始など過ごせそうにないのだが、そういう時に限って健康の話をしてみたりする。
(むしろ現実逃避ともいう)

食べ物は加工していなければいないほど良いとかいう。
つまり、生で食えるモノは生で食った方がイイ、みたいな。

逆に、食べ物の加工の度合いが高いほど健康には良くないんだそうで。
たとえば精製された小麦粉で作った白い食パンとか、あるいは菓子パンやホットケーキ。
マーガリンやマヨネーズ。
ハムやソーセージやかまぼこ。
それらを「超加工食品」と呼ぶんですってよ。
うーん。

食パンは毎朝食う。
マーガリンも。
ソーセージやウインナーも、けっこう買うことがある。
(生肉買って調理するより安くて早いことも多いしね)

超加工食品を多く食べている人は、たんぱく質やビタミンが不足しがちな一方で、糖質を多く摂りがちになるという。
あとハムやソーセージなどの加工肉は発癌性が指摘されてもいる。
(ハムやソーセージそれ自体が悪いというよりも、添加されている亜硝酸ナトリウムが悪いという)


しかし「白い食パンをやめて全粒粉のパンに!」「マーガリンをやめてグラスフェッドバターに!」と言われても、「そう言われましても…」と思う人は少なくないはずだ。
正直俺もそう思う。
ともあれ健康は大事。


とか言って、今は心を病んで若死にしたウェンディ・O・ウィリアムズのPLASMATICSを聴いてるんだけどね。

1981年の”新生キング・クリムゾン小考”

KING CRIMSON DISCIPLINE.jpg相変わらず仕事の合間に1981年のFOOL'S MATE Vol.19をパラパラやっている。

FOOL'S MATE Vol.19では、表紙の裏にKING CRIMSONの復活作『DISCIPLINE』の広告があり。
”ディシプリン キング・クリムゾンの復活!!”という大きなコピーが踊っている。
そして当時の編集長・北村昌士による”新生キング・クリムゾン小考”という記事も載っているのだった。

ロバート・フリップがビル・ブルーフォード(当時は”ブラッフォード”と表記されていた)と立ち上げたプロジェクト・DISCIPLINEは、商業的な意向もあって、KING CRIMSONを名乗ることになる。
それに対して北村昌士は、「当惑した」と書いている。
まあそりゃそうだろうな(苦笑)。

北村昌士は1969~74年のKING CRIMSONのサウンドについて、”それを支配する形式や公式を少なくとも音楽形態や一定の創造力からは求めることのできない、いわば圧倒的なポテンシャルを様々な角度―人材、時代性、聴衆の態度、音楽理論、形而上学的レヴェルの世界観など―から絶妙のバランスをもって組織化することでしか成立しない、実に緊密な体系的作業の結果”と定義している。
一方で81年のKING CRIMSON”復活”以前にロバート・フリップが世に出していたソロ・アルバムや参加作(ピーター・ゲイブリエルやダリル・ホールなど)については、”あの偉大なる霊性と莫大なエネルギーを秘めたキング・クリムゾンのサウンドとはかなり根本的に異質な、それとは程遠い何かまったく別なもの”と言う。
そしてKING CRIMSON”再編”に際して顔をそろえたエイドリアン・ブリュー、トニー・レヴィン、ビル・ブルーフォードについて、”少なくとも現在、キング・クリムゾンが往年のエネルギーを再び内在させるために必要なミュージシャンは、断じてこの3人ではない”と断じている。
そうですかー。

ここで北村昌士は、DISCIPLINE/新生KING CRIMSONのスタートに当たって、ロバート・フリップがアート・リンゼイやビル・ラズウェルに声をかけ、そして断られていた…という話を披露している。
えっ、そうなの?
ネットで検索しても、そのような話はまったく出て来ないのだが。
(KING CRIMSONのマニアの人とかは知ってるのかもね。俺はマニアじゃないんで…)

たとえば1981年のKING CRIMSONのメンバーがロバート・フリップとアート・リンゼイとビル・ラズウェルと、あと仮にフレッド・メイヤー(あるいはアントン・フィアとか)あたりだったら、どうなっただろうか。
うん…確かにエイドリアン・ブリューらとのバンドよりもはるかに刺激的になったに違いない。とは思う。
(往年のファンがどう思ったかは別として)

北村昌士は1981年のKING CRIMSONについて”新生にあたりクリムゾンの必須事項とされた「今日的なダイナミズム」とひき替えに、何かとても大切なものを見失ってしまったように思えてならない”と書いている。
2006年に49歳の若さで亡くなった北村氏が長生きして、ジャッコ・ジャクスジクと3人のドラマーをフィーチュアしたKING CRIMSONや、果てはロバート・フリップと愛妻トーヤの”夫婦漫才”を目にしていたら、何と言っただろう…と思う。


ってか2006年に49歳で亡くなったって…北村昌士、1981年の時点でまだ24歳だったってこと?