
FAUSTの記事があった。
そうだ、俺はNEWSWAVEのこの号を、FAUSTの記事があったから買ったのだった。
1989年、FAUSTの記事を載せる音楽誌なんて、他には当時(ほぼ)なかった(はず)。
しかし、その記事には最初から違和感があった。
タイトルは”FAUST/音の鏡”とある。
曰く、”音は鏡に似ている。もしくは、鏡は音に似ている”と始まり。
そこからFAUSTのバイオグラフィその他がつづられ。
最後に”音は鏡であり、鏡は音である。煙草は後に匂いを残し、火は消えた後に闇を残す。では鏡が取り外された後に僕たちは何を見る。音楽が終わった後に僕たちは何を聴く”と締められる。
時は1989年。
俺は87年頃に、レコメンデッド・レコーズから再発されていたHENRY COWの『IN PRAISE OF LEARNING』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_227.html)を買い、聴きまくっていた。
そのアルバムの裏ジャケットには、“ART IS NOT A MIRROR-IT IS A HAMMER”とあった。
”アートは鏡ではない、それはハンマーである”と。
同じ頃、やはりレコメンデッド盤で入手したFAUSTの1stアルバム『FAUST』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202205article_25.html)と2nd『SO FAR』(https://lsdblog.seesaa.net/article/202210article_25.html)も聴きまくっていた。
HENRY COWと同様に当時レコメンデッドから再発されていたFAUSTの音楽…が”鏡”であるとは、俺には思えなかった。
今でもそうだ。
あるバンドについて音楽誌やライナーノーツなどで書かれたことに対しての「違う、そうじゃない」という想いは、俺がその後ファンジンや音楽雑誌やこのブログなどで音楽に関して書く際の指針になっただけではなく。
よろず売文業として音楽以外のあれこれの文章で生計を立てている今でも、自身の知識や考えや経験に基づいて、出来る限り違った視点からの自分なりの考察をしようという姿勢につながっていると思う。
(そしてそれがあるからこそ、いまだ仕事が切れずにどうにか食えているのではと)
1989年のNEWSWAVEに載ったFAUSTの記事、及びそれに対して抱いた違和感は、その端緒となったかも知れない。
今でも思う。
FAUSTの音楽は断じて鏡などではなかったと。
俺にとってのそれは、大きくて重いハンマーだった。
FAUSTの70年代のアルバム4枚については既に全部紹介してしまったので、今後このブログでFAUSTについて書くことはあまりないのではと思う。
しかしFAUSTは今後も俺の人生にいびつな影を落とし続けるだろう。
(HENRY COWについてはまだ書く余地がある)