MICK COLLINS INTERVIEW 2004(後編)

DIRTBOMBS 2nd.jpg ミック・コリンズのインタヴュー、以下が後編です。笑顔の絶えない陽気な語り口から連発される屈折トーク。そして漫画・アニメファンとしての素顔が!









―そもそも、この特殊なバンド編成は、どこから来てるんでしょう?今回のアルバムを聴いて、「Motor City Baby」に凄くびっくりして、その時に思ったのが、ひょっとしてこのツイン・ドラムって、ゲイリー・グリッターなのか?…と思ったんですけど。
「(笑)ある時、車の中で「どんなバンドにしようかな?」と考えていて、ふと「ドラムとベースが二人ずつっていうバンドはないよな」と思いついて、面白そうだと思って始めたんだ。で、後になって、ゲイリー・グリッターもツイン・ドラムだったって知ったんだよ。でも君の言うとおり、「Motor City Baby」「21st Century Fox」と「I’m Through With White Girls」の3曲は、確かにゲイリー・グリッター、T.REXそれにSWEETといったグラム・ロックに影響された曲だ。最初は全編グラム・ロックのアルバムにしようかと思ったんだけど(笑)、それはやめにした」
―それはそれで聴きたかったですね!
「その頃グラム・ロックは流行ってなくて、ダサいと思われていたんで是非自分たちでやってみようと思ったんだが(笑)、そのうちグラムの人気がちょっと盛り返してきて、みんながそういうのをやり出すと、僕はもうやりたくなくなっちゃうんだな(笑)」
―…(屈折してるなあ…)。
「…例えば、パンク・バンドは聴き手にショックを与えたり毒づいたりというのを、過激なサウンドとかで実行するワケだよね。DIRTBOMBSも、基本的にそういうことをやりたいんだけど、そのままの方法論ではやらないんだ。聴き手の期待を、いきなり裏切るようなアルバムを作り続ける(笑)。それで、人の気持ちを逆なでするという(爆笑)…そういう方法を取っているんだ。だから毎回サウンドが変わる。DIRTBOMBSのアルバムを買う人っていうのは、どこかでTHE GORIESみたいなのが聴きたいと期待している人がほとんどだろう?(笑)…でもアルバムを出すたびにそういう期待はことごとく裏切り続けるワケだよ(笑)。ガレージ・パンクのファンも気に入らないようなモノを作ってみせる、それが僕にとってのパンクなのさ(笑)。それがようやくヨーロッパのファンの間でも理解されるようになって。過激な音や暴力なんかじゃなく、聴き手を急激な変化にさらす、そうしてハズし続けていくのがコンセプトなんだ」
―(ホントに屈折してんなあ…!)…DIRTBOMBSに限らず、いろいろなバンドでのリリースがあって、実際GORIES以来のファンがついていけてるのかは心配だったんです(笑)。俺みたいに(各リリースがどれも)いちいちストライク・ゾーンっていう人間はミックさんから見てどうなのかと思うんですけど?
「全部好きでいてくれるならもちろん嬉しいよ。DIRTBOMBSももう3枚出してるし、GORIES以来のファンはもういないと思ってたんだけどね(笑)」
―い、いや、そんなことないですって!(苦笑)
「好きでいてくれる人がけっこういるんだよね?…それは僕にとってはけっこうな驚きで。GORIESのファンを寄せ付けないようなのをやってたつもりだったから(笑)。特にコレ(テーブルの上にあったVOLTAIRE BROTHERS名義のアルバム。ちなみに、完全にファンク)は全然違う。…GORIESも、DIRTBOMBSのファンさえも無視したモノだから。僕のやってることのうちのどれかひとつが好きって人は多いよね。複数とか、全部好きとかいう人はもの凄く少ないと思う。でもそういう人は、音楽のジャンルに関わらずミック・コリンズという一人のアーティストを認めてくれているということだろうから、それは凄く嬉しいよ。当初の予定とは違ってるけどね、ワハハハハ」

―このアルバム(VOLTAIRE BROTHERS)は買ってすぐにDOLLのレヴューのトップに持っていって。ただレヴュー書きながら「DOLLの読者、わかるかなあ…?」とか思いながら書いてたんですけど(笑)。完全にファンクですよね。
「そう、モロにファンクだ(笑)」
―同じグループで次々に違う音楽性を追求するのも凄いですけど、更にいろんなバンドをやっちゃうっていう、そのヴァイタリティはどこから来てるんでしょうか?
「わからないね~(笑)。ただ、やりたいことは凄くたくさんあって、VOLTAIRE BROTHERSにしても97年からレコーディングしたいと思っていたものなんだ。でも予算の関係とかもあって、出来なかった。やっと環境も整って、もう1枚作ろうかと思ってるんだけど…やっぱり、レコードを作りたいっていう気持ちが常にあるから。もうひとつ、実は漫画家になりたいという夢もあるんだけど(笑)、それを実現するだけのエナジーは流石に…。あと、テクノもまだやらないよ(笑)」
―やりそうですね(笑)。
「(DOLLは)パンク・ロック誌だろ?そのへんはあまり語らないでおくよ。フフフフフフ」

―VOLTAIRE BROTHERS、次も出るとしたら楽しみですね。ここではドラムも自分で叩いてますよね?
「元々ドラマーだったんだよ。THE GORIESで初めてギターを弾いたんだ」
―そうなんですか!…どうりでドラムが上手いと…。ところで、(VOLTAIRE BROTHERSは)ストレートなファンクなんですけど、聴けば、マーヴィン・ゲイとフランク・ザッパをくっつけたりとか、一筋縄ではいかないこともやってたりしますよね?
「フランク・ザッパは60年代末にあるソウル・バンドのために「Trouble Coming Everyday」っていう曲を書いていて(註:THE MOTHERS OF INVENTIONの1stアルバムに「Trouble Everyday」として収録)、マーヴィン・ゲイには「Trouble Man」っていう曲があって…この曲(「Trouble Man Everyday」)自体はJ.C.グレイ(VOLTAIRE BROTHERSのベーシスト)が作ったオリジナル曲だけど、インスピレーションの源としてフランクとマーヴィンの名前をクレジットしてあるワケだ」
―いろいろなバンドで、カヴァー曲もいろいろやってますよね?…フランク・ザッパの曲はTHE SCREWSでも出てくるんですけど、ザッパ好きなんですか?
「ザッパについては複雑な思いがあってね…。ソングライターとしてもギタリストとしても素晴らしいんだけど、何であんなに有名になれたのかちょっとわからない(笑)。70年代のザッパはプログレっぽいじゃない?…僕はプログレ大嫌いでさ(笑)。ザッパはプログレだけじゃなくてR&Bやソウルもやってて、そういう部分は高く評価しているんだ」
―フランク・ザッパもメタルは大嫌いだったんで、そこはミックさんと共通してますね(笑)。
「(笑)少なくともそこはね」

―俺はこれまでに、ミックというファースト・ネームの人ともう一人インタヴューしたことがあって、それはTHE DEVIANTSのミック・ファレンなんですけど、彼もやってますよね、フランク・ザッパの「Trouble Coming Everyday」。
「ハハハハ! グレイトなレコードだよね。(テーブルの上のミック・ファレンのアルバムを指して)僕は今持ってないけど。出た当時(1978年)に聴いたね」
―リアルタイムですか!
「凄くいいアルバムだよね。買おう(笑)」
―コレは日本盤なんですけど、ライナーノーツは俺なんですよ。
「おお! 素晴らしいね!(笑)」
―(ミック・ファレンを)観たことありますか?
「いや、デトロイトでは演ってないと思う。彼は今でもライヴ活動してるのかい?」
―たまにやってるみたいですよ。でもスポークン・ワードみたいな。東京で1回観ましたけど。
「グッド・ショウだった?」
―やっぱり、スポークン・ワード+演奏、みたいな感じでしたね。
「なるほど」
―凄く太ってました(笑)。
「(笑)」
―(やっぱり好きだったか…)
「彼の「Let’s Loot The Supermarket」っていい曲だよね」
―ああ! 俺もフェイヴァリット・ナンバーで! いつもDJで使ってます!
「好きな曲なんで、今度THE DIRTBOMBSでカヴァーしようかと思ってるんだよ」
―それは是非!
「ハッハッハ!…でも、バンドであの曲知ってるのは僕だけなんだよね(笑)」
―そうだろうなあ…(苦笑)。
「でも、これからやるかもね」

―…で、80年代からずっと活動してきて、今みたいに日本に2回も来たり、ガレージ系が人気出るとか、予想したことがありましたか?
「(テーブルの上にあったDIRTBOMBSのEP『CHARIOTS OF THE GODS?』を見て)それ、入手困難だよ。そのEPのアートワークを手がけた人間すらそれを持ってなくて、僕もずっと持ってなかったんだけど、ベン(DIRTBOMBSのドラマー)がどこかで見つけてくれたんで、自分で買ったんだ(笑)。コレを出した後にレーベル(オーストラリアのAU-GO-GO)が潰れちゃったんでさ 。以前ツアーに出た時に、レーベルから「物販で売れ」といって送られてきたのを売り切っちゃって、その後レーベルが潰れちゃって、持ってなかったんだ。今度アナログ盤で再発しようと思ってるんだ」
―そう、コレは出てすぐ買って、ずっと持ってたんですけど、どういうポジションの作品なのか謎だったんです…。
「ディスコグラフィーを作ってるような人でもコレの存在を知らない人は多いだろうね。多分1900枚くらいしかプレスされていないはずだし。今度自分でホームページにディスコグラフィーを作るんで、そこには載せるよ。…7インチシングルを除いたら、それが一番レアだと思うね。…で、質問に答えると、日本には前からずっと来たかったんだ。THE GORIESの頃はそんなこと考えもしなかったけど、99年にTHE SCREWSで来た時に凄く楽しかったんで、今度は絶対DIRTBOMBSで来ようって思ってたんだ」
―明日、凄く楽しみです。
「気に入ってもらえるといいんだけど(笑)。2日間オフだったんで、調子を戻さないとね…」

―最後に、全然関係ない話でシメようと思うんですけど…さっき、漫画家になりたいという発言もありましたが、日本のマンガやアニメもお好きだそうですが?
「日本のアニメはアメリカでも人気があるよ。僕は宮崎駿が好きだね。アメリカでは、漫画というのは子供向けか“ドウジンシ”しかなくて…」
―に、日本語で同人誌って言ったよこの人!
「…で、大人の鑑賞に堪えるものはあまりないんだけどね…。CLAMPとか人気あるよ」
―CLAMP知ってんですか!
「アメリカではかなり有名だよ(笑)。あと、『うる星やつら』とか。ええと…」
―高橋留美子?
「そう、アメリカでもTVでやってる。マニアック過ぎてDOLLの読者にはついてこられないだろうね…(笑)」
―『HORNDOG FEST』(DIRTBOMBSの1stアルバム)のジャケを見た時、コレは完全に日本のコミック文化の影響を受けたイラストだなあ、と思ったんです。
「“ケモノ”(また日本語で)と呼ばれるサブカルチャー系のアーティスト集団がいて、その中でも有名な一人が手がけたんだよ。日本人でこういうの(アニマライズ・コミックとでもいうか…)専門にやってる人は逆にいないだろ? それも皮肉な話だがね(笑)」
―ちなみに、宮崎駿の新しい映画は今年の秋に完成するそうですよ。
「Super!…『魔女の宅急便』にしても『となりのトトロ』にしても、ストーリー以上に背景なんかのアートワークが素晴らしくて…それで何度も観てしまうんだよね」
―あと、宮崎駿は昔、日本のTVシリーズで、登場人物が全部犬のシャーロック・ホームズものを作ったことがありますよね。
「ダハハハハハハ!…アメリカでも手に入るんだけど、英語吹き替え版が出てないんで買ってないんだ。あと、子供向けに作られてる感じだったんで…」
―なるほど。…ともあれ、質問はこれで全部です。どうもありがとう!
「アリガトウ!(日本語で)」


 翌日のライヴは本当に素晴らしかった。剛性と弾力性を兼ね備えた真っ黒いグルーヴにぶっ飛ばされた。THE DIRTBOMBS、4thアルバムから2年くらい経ってるし、そろそろ新作出ないかな。


追記:
インタヴュー中で「テクノもまだやらないよ」と語っていたミック・コリンズ、その後THE DIRTBOMBSでデトロイト・テクノの人力カヴァー・アルバム『PARTY STORE』をリリースすることになるのだった。

(2023.1.20.)

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