(もっとも、読んだら思い出すかも知れない。誰のなんていう漫画か覚えてないけど面白かった読みきりなんてのも、たくさんあるから)
そんな具合なので、コレを室井大資の最高傑作などと言い切ってはいけないのだろうけど。
それでも、室井作品の中で多分相当上位に入るはず。
2007~08年にかけて、角川の「コミック怪」に連載されていた作品。
ホラー・コミックといえば「ハロウィン」→「ネムキ」(あと「ほんとにあった怖い話」)一択だった俺は、この雑誌も読んでいなかった。
『イヌジニン』を読んだのは、単行本で。
“犬死人”じゃないよ、“犬神人”だよ。
遙か古から、とある神社で裏の仕事を引き受けていた民の一群があり。
そしてその組織は現代にも存続していた。
(どうやらその管理・運営は、今では国が関わっているらしい)
気が澱むと“怪(け)”が成る。
イヌジニンの仕事は、“おばけ”(怪)が成る…怪が「あっち」から「こっち」に来る、その前に退治すること。
ハイテクとローテク(とそれ以外も)がいびつに絡まり合うイヌジニンの在り方が、実にユニーク。
怪異を検証するため、現場に持ち込まれるのはノートPC。
しかしそこで走らせているソフトは、地磁気の計測だのに留まらず、タロットやら亀卜やらウィジャボード(西洋版こっくりさん)やら…(苦笑)。
組織の“頭脳”たる民俗学の生き字引・守谷は醜怪・巨躯・狡知の男色家。
“声”を務める樹(いつき)は、その発話があまりに禍々しく正し過ぎるが故に、お役目以外での会話を禁じられ。
(万一不吉な予言をしたなら、それは必ず成就してしまう)
“耳”であるもときは小学生だし。
実際に怪と対峙し、気を放って怪を鎮める“手”である、(一応の)主人公・三隅が何より良い。
体を張って怪と闘っているのに、当の怪を見ることが出来ず、“目”→“声”と(糸電話で!)もたらされる情報を頼りに、木銃で怪を撃つ。
ハードボイルドに見えて、無表情に放つボケの数々。
(それは怪との格闘の最中までも)
(一応)主人公なのに頭髪がちょっとヤバそうなところも、なんとも言えん(笑)。
ぶっきらぼうに見えて実は人間臭いキャラクター、それがとても良い。
こんな男だからこそ、カタブツの婦警さんや年期の入ったひきこもりも最後には彼に心を開くんだろう。
個人的には第2話「天言会事件」が特に気に入っている。
『秋津』の“いらか”もそうだけど、室井大資作品って、話が進む毎に男の子がどんどんかわいくなって行くんだよね。
(別にショタではないと思う)
「天言会事件」で、もときが“つか”に言う台詞「いいよ、友だちになっても。オンナだけどほかにいないし」が泣ける。
“耳”としての資質故に、一般社会から隔絶されて友達のいない少年期を送ってるんだなあ、と。
そしてこの話に限らず、『イヌジニン』に登場する怪異は、得体の知れない妖怪変化の類ではなく、すべて人間の営みに発している。
それがまた何とも。
あと、この作品に限らず、室井大資の描く女性キャラって…美人なのに、目力だけ強くて、薄ーい顔の薄幸そうな女ばかりなのは、何なんだろう。
『イヌジニン』では、婦警の広田さんが代表格。
別にそんなに巨乳じゃないのに、おっぱいのことばかり言われる不憫な人(苦笑)。
まあ不憫な人が一人いるのは、室井作品の特徴だ(笑)。
全1巻ではない。
2巻もあるはずだった。
しかし出ていない。
作者本人もこの作品には思い入れが強いようだし、いつか出るだろう。
続編にも期待出来るかも知れない。
しかし、今の室井大資にとって大事なのは、過去の作品の続編よりも、リアルタイムの新作。
噂の(?)新作に期待しつつ、それでも『イヌジニン』続編を(いつかはわからないが)待ちたいと思う。
(2024.8.15.改訂)
この記事へのコメント