未完成のままお蔵入りしていた映画『7s』に関わった人たちのあれこれを描いた群像劇。
自主映画を撮っていたサワダ(アベラヒデノブ)が大学の同級生だったサナガワ(淵上泰史)と一緒に作った映画が、インディーズ映画祭“東京映画祭”でグランプリを獲得。
賞金100万円を元手に新作を撮ろうと構想していたサワダだったが、普段は居酒屋のバイトに明け暮れていた。
しかし、その居酒屋にやって来た小劇団のメンバーの一人が、サワダの受賞の模様を見ていた。
そこから一気にサワダの、そして周辺の若者たちの運命が動き出す。
飲み会に居合わせた売れないモデルのカブラギ(深水元基)たちは、同じく飲み会に参加していた人気お笑い芸人・ゴギョウ(サンガ)や劇団の看板女優・ナズナ(小林夏子)と共に、サワダの新作映画『7s』に出演することに。
なんとなくモデルを続けていたものの、ブレイクするでもなかったカブラギ。
小劇団の看板女優ではあったが、若い後輩がステップアップしてくるのを感じ取っていたナズナ。
そして、アクション俳優への夢を持ちながらも裏方に甘んじていたセリ(網川凛)。
『7s』出演を決めた面々は、それぞれがこの映画の成功によって自分が“何者か”になれることを夢見ていた。
もちろんサワダも。
そして『7s』の撮影開始。
キャストもスタッフも一丸となって、大盛り上がりで撮影は進行する。
しかし、それも長くは続かなかった。
先輩のカブラギにくっついて、モデルからなんとなく演技の道に入ったイムラ(須賀貴匡)が、大手の事務所に拾われたのを機にブレイクし、あっさりと『7s』を降板。
撮影スケジュールはたちまち崩壊し、スタッフ間の不和は修正し難いモノとなり。
そして、なんと撮影データが消失。
(デジタルって怖いね)
資金も使い果たし、『7s』は完成することなく、制作中断となってしまう。
スタッフもキャストもばらばらになり。
イムラは俳優として、サナガワは映画監督として成功するが、サワダはただの居酒屋バイトに戻り、ゴギョウの人気は凋落して“あの人は今”的な番組で醜態をさらす。
上では敢えてあっさり書いているけど、物語の中で成功から見放されたスタッフとキャストにふりかかる負のスパイラルは、観ていて本当に気が滅入るほどのモノだ。
凄く陰鬱な気分になる。
(それがどんなモノかは、是非実際観て下さい)
しかし、それがポイントなのだった。
挫折があまりにも大きく、失ったモノがあまりにも大きかったが故に、終盤改めて前を向くサワダの表情は、逆に見モノだ。
こっちまで救われたような気分になる。
コレ以上はネタバレになりそうなので、終盤以降のストーリーについては触れないが、葛藤や対立や裏切りや挫折がそれぞれ深い故に、ラストのカタルシスのようなモノがその分だけ大きくなる。
万事が無事に解決するワケじゃなくても、ほろ苦い余韻がまたリアルな味わいになるというもんだ。
『7s』に直接関わってない人たちも含めて、登場人物それぞれの状況が次々と錯綜気味に描かれるので、最初のうちはちょっととっつきづらい。
誰が何の人だかよくわからなかったりして。
それにしてもコレはお勧めの拾い物。
今年は昨年に較べても映画を観てないんだけど、ともあれ現時点では個人的暫定1位。
『7s/セブンス』、11月7日(土)より新宿武蔵野館にてレイトショウ公開。
(C)7s/セブンス製作委員会
追記:
藤井道人監督は、その後『新聞記者』や『ヤクザと家族 The Family』などで名声を確立している、というのは多くの人が知るところだろう。
『7s』で印象的な演技を見せたアベラヒデノブも、多くの主演作があり。
ゴギョウを演じたサンガ(三箇一稔)は、富山県で農業をやりながら芸能活動を続けているという。
(2022.2.2.)
追記2:
藤井道人監督はその後も活躍を続けている。
小林夏子は永(はる)夏子と改名し、カウンセラーとしても活躍。
(2024.8.26.)
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