映画『スティーヴ・マックィーン その男とル・マン』

スティーヴマックィーン.jpgスティーヴ・マックィーンといえば、個人的には何と言っても『大脱走』(1963年)だ。
その『大脱走』でカッコよくバイクを乗り回していたマックィーンだけど、実人生でもスピード狂だった。
そんなマックィーンが、モータースポーツ愛全開で取り組んだのが『栄光のル・マン』(71年)。
『スティーヴ・マックィーン その男とル・マン』は、その『栄光のル・マン』製作秘話にまつわるドキュメンタリー。

『栄光のル・マン』が、日本だけで大ヒットしていた…というのを、今回初めて知った。
欧米では惨敗だったそうで。
そんな映画を、45年も経った今になってどうして改めてドキュメンタリーに?
…と、不思議な気分だったんだけど。
どうも近年は、欧米でもモータースポーツのファンを中心に再評価されているようで。
更に、本編のフィルム以外は残っていないと思われていたのが、最近になってメイキング映像その他が新たに発見されたというのもあったらしい。

『荒野の七人』(1960年)、『大脱走』、『ブリット』(68年)…とヒット作が続き、自身のソーラー・プロダクションを設立したスティーヴ・マックィーン。
大スターとして出演作を自由に選べる立場となったばかりか、製作も自分で出来るようになっていた時期。
そこでモータースポーツをテーマにした映画に着手する。
F1を題材にした『グラン・プリ』(66年)が先にあったため、マックィーンは“ル・マン24時間耐久レース”を題材とし、レースが添えモノでメロドラマが主だった(?)『グラン・プリ』とは全く違う、硬派なリアリズムを追及する。
本物のレーサーをそろえ、実際のレースと同じスピードで走行しながらの撮影。
脚本も用意せず、ドキュメンタリー・タッチでレースのリアルだけを追い求め。
リアリズムに立脚したヒット作が出来るはずだった。

しかし。
ヒットのためにはドラマ的な要素が不可欠と考えていたジョン・スタージェス監督とは対立し。
脚本がないままの撮影は製作期間と予算を大幅にオーバー。
遂にスタージェス監督は降板し、スティーヴ・マックィーンは製作元のシネマ・センター・フィルムズ社からプロデュース権を剥奪され、単なる主演へと。
更に、マックィーンの女癖の悪さを悲観した妻ニール・アダムスが自身も不倫に走ったことで結婚生活は破綻。
無名だったリー・H・カッツィンが監督を引き継ぎ、どうにか映画は完成したものの、ソーラー・プロダクションは倒産に追い込まれ、映画は(日本以外では)興行的に惨敗。

この映画は、そんな事態へと至ったスティーヴ・マックィーンの、『栄光のル・マン』製作に賭けた妄執に近い思い入れと、出演者やスタッフをはじめとする関係者の記憶をたどる。
ある意味悲劇的とも言える作り。
しかし、救いも用意されている。
ニール・アダムスやデイヴィッド・パイパー(映画に出演して重傷を負ったレーサー)らが映画の後半に発するコメントを見れば、気難しい男と言われたマックィーンが半面愛すべき男でもあったことがわかるだろう。

昔のレーシングカーのフォルムの美しさにも、改めてほれぼれする。
今になって何故このような映画を作ったのか、そして製作者たちは何を言わんとしているのか…ちょっと不思議な感じのする映画でもあるのだけど、そこは是非実際に観て確かめてもらいたいと思うのだ。

あと、スティーヴ・マックィーン、かのマンソン・ファミリーに狙われていたということで、映画にはファミリーもちらっと登場するんだけど、ステージ衣装みたいなキンキラキンのいでたちでニタニタ笑うファミリーが実に禍々しいです…。


『スティーヴ・マックィーン その男とル・マン』、5月より新宿シネマカリテにてモーニング&レイト・ショウ。


(C)THE MAN & LE MANS LIMITED, 2015


(2024.10.16.改訂)

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