そして、純然たるドキュメンタリー…ではない。
何とも不思議な映画に仕上がった。
『kocorono』などで知られる川口潤監督は、この映画のオファーを受け、まったくノープランでバンドのツアーに帯同することから始め、映像素材を録り貯めて行ったという。
それら(ライヴ、打ち上げ、スタジオ風景その他)に加え、アルバム『グッド・バイ』からのMV「シラフのうちに」用に撮影された映像を適宜交えて、映画は構成されている。
ツアーやレコーディングや打ち上げは(多分)ほぼ時系列に並べられているモノと思うが、随所に伊藤雄和がタクシー運転手役を演じる「シラフのうちに」の映像が挿入され。
そこでは伊藤をはじめとするメンバーやゲストは演技をしていて。
純然たるドキュメンタリーではない、というのはそこで。
イイ意味で、とりとめのない編集になっていると思う。
ロック・バンドのドキュメンタリーによくある、挫折を含めた紆余曲折が克明に描き出されるでもなく。
狂熱のライヴもあればハズしてしまうライヴもあるけれど。
メンバー間の葛藤や衝突も特になく。
(とはいえ、バンド自体はここまでに相当なメンバー交代を経てはいる)
年間3ケタのライヴをこなしながら、バイトとかで食いつなぐメンバーの表情が、基本淡々と映し出される。
(伊藤雄和の仕事場面はちょっと背筋が寒くなること請け合い)
ロックな生きざまとか何とかじゃなくて、当然の如くこのような生き方にならざるを得なかった…川口潤監督によれば“「規格外」のボンクラの集まり”、メンバーの言を借りれば“夏休みの宿題をやらなかったようなタイプ”の当然の帰結としてのバンド活動…を、カメラは捉えていく。
「シラフのうちに」MVのために集まったゲストは豪華。
中でも仲野茂(アナーキー)と中尊寺まい(ベッド・イン)の怪演は存在感デカい。
プロの俳優としては渋川清彦が出演しているが、これまた流石にイイ味を出している。
起きぬけの息が思いっ切り酒臭そうな伊藤雄和。
ヒゲのない顔も出てくるけど、往年の団次郎(帰ってきたウルトラマン)あたりを思わせるバタ臭いハンサム。
カラオケで歌うのは尾崎紀世彦…!
…で、言ってしまえば、ドラマティックな何かは起こらない映画。
しかし、川口潤監督が言うように、中毒してしまいそうな魅力が、このバンドにはある。
ファンはもちろん必見だし、このブログでOLEDICKFOGGYの記事を読んでちょっと気になってるような人にもお勧めの1本。
『オールディックフォギー 歯車にまどわされて』、8月11日(木)シネマート新宿にて公開。
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(2024.11.27.改訂)
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