クルブシーズ・インタヴュー 2007

KRUVCIES 2nd.jpg 6月3日に東高円寺UFO CLUBでクルブシーズのライヴがあって、行きたかったんだけど、行けなかった。行ってたらまたここで何か書いてたと思う。…その代わりというワケじゃないんだけど、今夜はそのクルブシーズが2007年に2ndアルバム『KRUVCIES Ⅱ』をリリースした時のインタヴューをお届けしましょう。
 このバンドにインタヴューしたのはこの時が2回目だったのだが、メンバーは以前インタヴューしたときとはまるっきり変わってしまっていて、唯一のオリジナル・メンバー:ジョニーこと岩瀬隆之(ヴォーカル、ギター)、“宮城マリオ”としても有名な宮城剛(ベース)、相馬正士(ドラム)の3人。岩瀬のよく歌うギターを中心にした繊細にしてハードなサイケデリック・サウンドは、あんまり売れてないんだろうけど(←大きなお世話)聴きどころ多し。
 インタヴューは07年3月28日に新宿で行われ、DOLL誌07年6月号に掲載された。その時は2000字余りだったが、ここでは約4000字、ほぼノーカットで掲載。


―6年ぶりのアルバム…オリジナル・メンバーはジョニーくん一人になっちゃいましたけど、今のメンバーで何年くらい経ちました?
宮城剛「ちょうど2年くらいですね」
―ヴォーカルの性別も音楽性も変わっちゃったけど、バンド名自体を変えるとかは考えなかった?
岩瀬隆之「…考え、は、しましたけどね…でも、はたから見てて音楽性も変わったように見えるんでしょうけど、僕自身は変わったつもりはなくて。なので…バンド名もこのままでいいんじゃないかと思ったんですけど」
―宮城くんはエアギターでも有名だけど、バンドや仕事との比重はどんな感じ?
宮城「僕が今やってる仕事は、バンド活動が出来るっていう前提でやってる仕事なんで、そこのバランスは変わらないんですけど、そこに一個、エアギターっていうでっかいのがバーンと入ってきてしまって(苦笑)、わりと四苦八苦してます」
―紅白出てるからねえ(笑)。
宮城「ただ、僕自身はわりと別物と考えていて、エアギターの観衆をクルブシーズには持って来てないので」

―では本題行きましょう、アルバムの話。タイトルが『KRUVCIES Ⅱ』って、やっぱり2作目っていう位置づけで。
岩瀬「そうですね」
―前のアルバムは、メンバーも違うし、CD-Rだったし、ここで“再デビュー”みたいなのもと思ったんだけど、やっぱりジョニーくんの中では続いてるモノと?
岩瀬「そうですね。うん…」
―アルバム・タイトルはシンプルに『KRUVCIES Ⅱ』となってるけど、最初は『I DON’T LIKE MYSELF』とかいう…。
岩瀬「ああ!…そうですね、ちょっと、大仰過ぎるかなと思って、やめにして」
―『KRUVCIES Ⅱ』とか付けると、アメリカのサイケのアルバムみたいで…『ULTIMATE SPINACH Ⅲ』とか。
岩瀬「AMON DUUL Ⅱとかね」
―ああ、なるほどね…ってそれバンド名じゃん!(笑)
宮城「僕は個人的に『LED ZEPPELIN Ⅱ』とか」

―ジョニーくんって、以前にヴォーカルは?
岩瀬「高校の頃とかに…」
宮城「大学の時に弾き語りやってましたよね?」
岩瀬「ああ、うん。それくらいですね」
―以前はサウンドがもっとストレートな印象があったんだけど、今回のアルバムはデリケートな感じが前面に出ていると思うんだけど。
岩瀬「録る前も、今回録音したようなイメージで曲作りはしてたんですけど、ただ、ライヴではそういう風に見えなかったんでしょうね」
―以前、“自分たちはステージ上で起きることしか信じない”みたいなコメントがあって、凄く印象的だったんだけど、スタジオ録音に当たって、意識は変わった?(1stアルバムはライヴ録音)
岩瀬「…当時思っていたようなことは今でも思ってますけど、ただ…どう言ったらいいのかな…」
相馬正士「録り方的には一発録りで、本当に自分たちで録音して自分たちでミックスして、って感じだから、ライヴ録音みたいなノリで作ったんで」
宮城「ギター重ねたりとか、録音でしか出来ない入れ方っていうのは試しました」
岩瀬「やり直そうと思えば、何回でもやり直せますしね。ただ…前回のアルバムを作ってからこれだけ間が空いちゃったっていうのは、メンバーチェンジがわりとちょこちょこあったってのもあるんですけど、どうやったら自分が思い描いている形で、録音物に形を残せるのかっていうのを模索していて、“こうやったらいいんじゃないか?”と思った矢先に続々とメンバーが抜けていったという…(苦笑)。録音物っていうのは、絵画だったら画集とかそういうものだと思うんですけど。音ってやっぱりその場その場で瞬間のものだけど、録音物って時間を越えていくわけですよね、何十年も何百年も。それは凄いことだと思うんですよ。そういう形に残せるものに対する興味は凄くあったんですけど。ライヴ録音だって録音物には違いないわけですからね」
―そこのところでは、根底は変わってないと?
岩瀬「そうですね。さっき宮城くんも言ってたけど、違う魅力があるんですよね」

―ヴォーカルとギターに、ニューヨーク・パンク的な感覚があると感じるんだけど。
岩瀬「そうですね、やっぱり、凄く好きだし、影響も受けたと思います」
―リフにちょっとTELEVISIONっぽいところも。
岩瀬「そうですね、ギター2本の絡みとかね」
―初期から、サイケデリックな音を出していたけど、いわゆるジャンルとしてのサイケデリック・ロックではなかったよね?
岩瀬「そうですね」
―今現在はサイケデリック・ロックといって差し支えないものになってる気がするんだけど。
岩瀬「そうなのかな?…う~ん、まあ、確かにサイケと呼ばれる音楽は好きで、よく聴きますけど。サイケ的な要素は、クルブシーズの中にもきっとあると思うんですけど、でも、サイケ・バンドじゃないと思うんですけど。広い意味ではサイケだとは思いますけど」

―今度のアルバムから感じるのは、ある種の“とりとめのなさ”みたいな。
岩瀬「そうですね」
―以前ジョニーくんが言ってたけど、“何処にも着地しない”感じ…それを言葉で敢えて説明すると?
宮城「…メンバー同士で、こういう音楽が好きとか最近こんなの聴いてるとかいう話はするんですけど、じゃあクルブシーズはこういうジャンルでとかこういう方向性でとかいう話はないですよね」
岩瀬「…上手い説明になってるかわからないけど…さっきニューヨーク・パンクの話が出たけど、リチャード・ヘルの音楽とか凄く好きで、でもアレもなんか凄く不思議な音楽ですよね。普通のロックに求める魅力的な部分が見事に削げ落ちてるっていう印象があって。聴いてて気持ちよくはないんだけど、昔からなんかひきつけられるような感じがあって。“どこにも着地しない”…おきまりな感じになるのが凄くイヤなんですね。ここでこういうキメがあったりとか、するとみんな安心する、みたいな、無言のお約束みたいなものが、いっぱいあるじゃないですか。ライヴだったら、2~3曲やったらMCしなきゃいけないとか、次のライヴの告知をしなきゃいけないとか(笑)。面白くないんですよね、そういうのって」
宮城「サイケの様式美とか、パンクだったらこういうリズムでとか、スカだったら裏打ちで、みたいなジャンルに寄りかかるやり方はやってない。結果そうなってるのかなっていう気も」
―わかりやすいモノを目指すつもりはない。
岩瀬「そうはいっても、自分たちのやっていることはロックの範疇に入ると思ってますけどね。ロックというフォーマットの上で、既製の何ものでもないようなものをやりたいと思ってますけどね」
―ジャンルに関係なく、メンバーの中での了解事項みたいなモノはあるワケだよね?
岩瀬「価値観みたいなものはありますよね」
―それを敢えてわかりやすい方向に持っていこうとしないとか、離れていこうとか?
相馬「敢えて、はしてないと思うんですけど」
宮城「3人の共通点として、微妙にひねくれてて、微妙に恥ずかしがり屋で、微妙に人見知りで…的な部分が、音楽にも。様式美になっちゃうとちょっと恥ずかしかったり(笑)」

―メンバーの好きなバンドもバラバラだったりする?
岩瀬「バラバラですね」
―ジョニーくんは?
岩瀬「やっぱり60年代とか70年代の、メインストリームじゃなかったロックって、ハマっちゃうことが多いですね」
―最近はアシッドフォーク?
岩瀬「そうですね。大好きです」
宮城「僕は凄く広く浅くなんで。最近好きなのは、ザ・コレクターズ。最近のバンドだとフジファブリックとか。それと並行して、今SLY & THE FAMILY STONEが自分の中でキてて。スライ聴いたり、ジェームス・ブラウン聴いたり」
相馬「僕は、プログレ全般。でも、出来ないんですよね(苦笑)。5拍子とか7拍子とか」
岩瀬「前のメンバーのときは、僕も含めて各々プレイヤー志向な感じがけっこうあって。今のメンバーになってからそういう感じが薄まったっていうか。それで僕も、自分がギタリストっていうこだわりが薄れてきて。歌うようになったのも関係してると思うんですけど、各々のパートがどうとかじゃなくて、全体的な仕上がりを全員で思い描くっていう感じになってきてますね」
―それは納得するね。3人でひとつの、有機体としてのバンド。個人的には、ゆらゆら帝国が好きな人とかに好まれそうな気がするんだけど。
岩瀬「好まれるといいですね(笑)。どうなんでしょうね?…僕の周りにもゆらゆら帝国が好きな人はたくさんいるんですけど、その人たちがゆらゆら帝国を好きって言ってる部分が、僕らにはないので…(苦笑)。(クルブシーズの)どのへんがゆらゆらファンにウケそうですか?」
―個人的には、歌詞の世界観と、ギターとヴォーカルのバランス。
岩瀬「なるほどね」

―アルバムの間隔が空いたけど、今後の希望は?…来年もまたアルバム出したいとか。
岩瀬「出したいですねえ!」
相馬「曲がたまらないと…(苦笑)」
岩瀬「次にやってみたいことは、漠然とあるんですけど、ただ、まだちょっと…具体的にそれをどうやったら形になるかっていうのが見つかり次第っていう感じですね。やり方が見つかったら、来年にでもアルバム作りたいくらいですけど」
―最後に、読者様にメッセージをお願いします。
宮城「ワンマン観に来てください!」(このインタヴューはレコ発ワンマンライヴの直前に行われたモノ)
岩瀬「…なんか、そんなに、変な音楽じゃないと思うんですよ(笑)。言うほどヘンな音楽じゃないと思うけれども…とらえどころみたいなのが、聴いたり観たりしてくれた人に、ロックってこういうもんだとか、ライヴってこういうもんだとか、そういう気持ちで聴こうとすると、本当にとらえどころがないと思うんですよね。そうじゃなくて、まっさらな状態で聴いてもらえたら、それなりに楽しんでもらえるんじゃないかと思いますけどね」


 かのう葉蔵(中学生棺桶)あたりに言わせれば、“U.F.O.CLUBによくいる、2番まで歌終わったらギターソロでファズ踏めばいいと思ってるようなバンド”とかいうことになってしまうのかもしれないけど、個人的にはそんなにありふれたバンドじゃないと思ってる。俺は好きだな。


(2023.2.13.改訂)

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