IGGY POP INTERVIEW 2007

DOLL STOOGES.jpgDOLLでのインタヴュー記事を復刻するシリーズ。
コレはDOLLの2007年5月号、アルバム『THE WEIRDNESS』リリースに伴って組まれたTHE STOOGES特集、その目玉となったイギー・ポップへのインタヴュー記事。
ブライアン・ジェイムズのとき同様、俺が質問作って通訳さんが電話インタヴューするというスタイルで行われたが、時間が20分(!)しかもらえなかったということで、コレがノーカットの全文です。





―THE STOOGESとしてアルバム1枚分のレコーディング、『SKULL RING』の時と雰囲気は違いましたか?
「ああ、全然違ってたよ。『SKULL RING』の時は、それまで約30年間会ってなかったからね(笑)。ま、チラッと会ったぐらいでさ」

―バンドとしてのケミストリーを取り戻すのは簡単にいきましたか?
「(アルバム『SKULL RING』のタイトル曲)「Skull Ring」では全員一緒に少しジャム・セッションっぽいことをやったんだけど、他の3曲は先にアシュトン兄弟だけでバック・トラックを録ってもらったんだ。彼ら兄弟に心置きなく、居心地よく演奏出来るスペースを与えたかったんで、スタジオを数日間彼らに明け渡して、「きみたちのセッションが終わったら俺がヴォーカルを重ねることにするから、納得行くまでとことんやってくれ」といって、彼ら兄弟だけで好きなようにやらせたんだよ。当時は長いブランクの直後だったので、まだ少しだけぎこちなさがあって、別々のセッションが最良の策だと思ってそういう手段をとったんだ。あれから3年半、ほとんど毎日のようにバンドと過ごしてきた。THE STOOGESが再び俺の人生そのものになってきた感じだね。新作の曲は、メンバー全員が密接に関わって、共同で作り上げたものなんだ。メンバー全員が同じ部屋にこもり、グルーヴを築き上げては曲を展開していき、ところどころで止まって違う方法を試したり、変更を加えたりしてきた。そうやって全員で曲を作り上げ、デモを繰り返し作り、そのデモを聴き返してはその都度意見を交わし、修正してきたんだ。その間に常にライヴ活動もこなしていた。そしてレコーディングのためにスタジオに入る頃になると、演奏面でも精神面でもタイトなバンドになっていた。おまけにプロデューサーのスティーヴ・アルビニは、非プロデューサー的な立場をとりたがるプロデューサーで、バンド内のもめごとには一切関わろうとしないし、自分自身のテイストを他人の音楽作品に反映させるのも嫌がるし、曲が形になるまでは一切聴きたがらない、という珍しくプロデューサーとしてのエゴをまったく持たない人物なんだ。だから、スティーヴを迎え入れる前に俺たちは準備を完璧にしておく必要があった。どの曲をどの日にレコーディングするかというスケジュールも完璧に準備していたし、パート毎の演奏もしっかり練っていた。俺も珍しく、歌詞を97%、ほぼ完璧に書き上げてスタジオに入った。アルバムの85%はライヴ・スタイルでのレコーディングだった。つまり、ドラム、ベース、ギター、ヴォーカルがいっせいに、ライヴみたいに演奏してレコーディングしたんだ」

―アルバム・タイトルが印象的です。THE STOOGESを象徴しているようでもあるし、今の世界に向けて発したものでもあるように感じますが。
「まあ、ものごとはすべて、なんというか、weird(=変、奇妙)なものなんだ!(笑)きっとそれこそがこのアルバムの最重要メッセージになるだろうね(笑)。このバンドの内輪の言葉として、人間関係において好ましくない雰囲気や姿勢を表す人を描写するときに使う表現が“weird”なんだ。つまり、イヤな奴やムカつく奴のことを言う時に使う言葉だね(笑)。メンバーとの会話の中で「あいつはweirdだ」という表現は、「あいつはイヤな奴だ」と同等の意味を持つんだ。「The Weirdness」という曲では、人と疎遠になる状況を描いている。アルバムタイトルの候補として、他には『FREE & FREEKY』というのが最後まで残っていたんだけど、それじゃあまりにも自分たちのことについてだけ語っているような気がしてね。自分たちを囲む世界のことまで意味が及ばないような気がして。それに、ちょっとキュート過ぎるな、と思ってね(笑)。もしかすると、『THE WEIRDNESS』というタイトルは意味深長で抽象的なタイトルかもしれない。THE STOOGESっぽいタイトルといえば、きっと誰もが、例えば『FIRECRACKER UP YOUR BUTT!』(=ケツの穴に爆竹!)みたいなタイトルを連想するものかもしれないけど(笑)、『THE WEIRDNESS』というタイトルが自分たちにとってどんどん広い意味を持つようになって、作品全体のタイトルとして的確だと思えてきたんだ」

―ところで、60年代のTHE STOOGESと70年代のIGGY AND THE STOOGESは実質的に別のバンド、くらいに認識しているのですが…。
「自分たちとしてもまったく異なるバンドだと思ってるよ」

―(ああ、やっぱりな…)
「ただ、同じバンドだと思ってしまう人が出てくるのも理解出来る。4人のメンバーのうちの3人、俺とアシュトン兄弟の3人がTHE STOOGESをスタートさせたオリジナル・メンバーだというのは紛れもない事実だ。THE STOOGESが名声と富を手に入れる前、THE STOOGESのことを好きだったのは世界に俺たち3人しか存在していなかった。それだけ、俺たち3人はTHE STOOGESに対する思い入れが深く、そして強い。別のメンバーを迎えながらバンドとして変化し続け、成長し続けてきたけど、人間としては基本的に昔から変わっていないね」

―今のTHE STOOGESも昔とは違うと思いますが、特に違っている点と変わっていない点は?
「昔と変わっているのは、今は昔ほど派手ではない、昔と較べて控えめになった、という点ぐらいかな。でも、昔と同じような欠点や弱点を今でも相変わらず持っているんだ。ただ、今の方が昔よりずる賢くなったかもね(笑)。いろんな問題に対して以前よりは上手く対応出来るようになった、ということなんだけどね。音楽面においては、新作はTHE STOOGESの他のどのアルバムとも違うサウンド、違う雰囲気を持つアルバムだと思う。…いや、よく考えてみると、他のアルバムもそれぞれに独自のサウンドと雰囲気を持っていて、1枚として同じような作品はない。それこそがこのTHE STOOGESというバンドを象徴するような現象かもね。『FUN HOUSE』も『RAW POWER』も『THE STOOGES』も、それぞれに違ったサウンドと方向性を持つ作品群だけど、同じweirdな人間が演っているということがわかるような、すべての作品に共通するものが根底に流れている。“Stooge sound”だ。俺自身、振り返ってみたときに気付いたことがひとつあって、作品を重ねる毎に音質がどんどん汚く、混沌としてくる。何故だかわからないし、それがいいことなのか悪いことなのかわからないけどね(笑)。1stが一番クリーンな音質で、2ndは少し空間が空いてきて、『RAW POWER』はダーティーになった。そして、今回の新作は更に輪をかけてダーティーな音質になっている。もちろん、過去のアルバムと似たようなサウンドのアルバムを作ろうと思えば、簡単に作ることも出来る。この新作みたいに3年もかかったりしないでね。でも、そんなのはクソな作品にしかならない。まったく意味がない。確かに、昔のTHE STOOGESと同じ人間が演っているけど、断然トシをとっているし、THE STOOGESのキャリアの中で初めてバンドの状況が良好なんだ。というのは、現実の世界でこれまでTHE STOOGESが上手くやれていたことは一度もなかった。アーティストとしては素晴らしい作品を生んでいたと思うけど、そのせいで俺たちは苦しむことになった。だまされ、模倣され、まるで身ぐるみ剥がされて道端に捨てられたあとの30年間も、他人が俺たちの芸術を通して大金を稼ぎまくっていた。自分たちの作品だというのに、作品の作り手である俺たち自身にはほとんど金が渡ってこなかった。最近までね。そういう意味でも、今のバンドは上手く行ってる。過去と比べ物にならないくらい状況がいい」

―この4月で60歳になられるはずですが、60~70年代の頃、60代を迎えてもこんな風に活躍出来ていると予想していましたか?
「いや~、まったく思っていなかったね。ただひとつ確実に言えることは、15歳の時に音楽家労働組合の組合員証を初めて手にしたときに、一生音楽を演り続けて行きたいと思った。あの頃から、俺の音楽は決して商売優先ではなく、ヘアージェルを髪の毛に塗りたくってシャツの襟を立てて若年層をターゲットに5年間だけやるようなものだとは決して思ったことはなかった。俺はそんなクソッタレな偽者には絶対にならないと誓った。いったん歩み出した道を決して引き返すことはしないと自分に誓った。俺はそんな信条を持つ人間だからこそ、現在の自分があると思ってる」

―THE STOOGES結成から既に40年経とうとしています。時代は変わったと思いますが、あなたがいつまでも“イギー・ポップ”のままでいられるのは何故だと思いますか? そのパワーの源は?
「ブルーズ、ロック、あるいはリズム&ブルーズの極上のショウ以上に、真のエンターテインメントと呼べるものはないと思ってるんだ。そんな極上のエンターテインメントは頻繁に遭遇出来るもんじゃない。俺自身、これまでに十数回ぐらいしか経験してきてないくらいだ。その他の、日常茶飯事に行なわれている音楽のショウは、大抵クソだ。クソの程度にもピンからキリまであるけどね。そして、極上のショウと同じくらい俺の世界を揺るがす神秘的なものが、極上の音源だ。そのふたつが俺にとって最重要のものだね。俺自身が極上だと自認出来るほどのライヴをやったり作品を作ったりすることに、底知れない情熱を傾けてるんだ。THE STOOGESの他のメンバーも、そんな俺と似たような人間ばかりだ。“意志あるところに道あり”というけど、“道”はたくさんある。ドラッグとか、愛とか、厳しい鍛錬とか、それぞれにとって方法は違う。だけど、意志は誠実なものでなきゃいけない。その意志が芸術でも、金儲けでも、美貌でも、何であってもとにかく偽りのない誠実な気持ちでないと極上にはなれないね。俺は子供の頃から、クソ同然の音楽がラジオから流れてくる度にもの凄い怒りを覚えてたんだ。クソッタレな音楽を聴かせやがって、みたいな感じで。音楽を冒涜する奴は許せなかった。今でも許せない。だから、自分自身でも音楽を冒涜することがないように、常に極上のものを目指してるんだよ」

―これからについての希望や、実現したい夢などはあるでしょうか。
「今後については、俺自身も含めて、人を破壊することなく、音楽を続けていくことだね。それに、俺にだって“普通”といえるような私生活だってあるんだ。大切なガールフレンド、犬、猫、鳥がいるし、たくさんの素晴らしい仲間や友人たちに囲まれてやって行けてる。音楽以外にも俺を充実させてくれる人やモノに対して、常に感謝の気持ちを忘れたくない。私生活といえば、俺だって歯を磨いたりもするし(笑)。俺は歯を磨くのが煩わしくてしょうがないんだよ。俺は歯を磨くのが大嫌いなんだ!(笑)だけど、俺みたいに60歳にもなれば、真剣に、よーく歯を磨かなきゃならないんだ。参るね(笑)」

―THE STOOGESとしてフジ・ロック・フェスティヴァル参加がアナウンスされましたね。
「ああ、フジ・ロックには確実に行くよ! 楽しみにしていてくれ」

―最後に、ファンにメッセージをお願いします。
「THE STOOGESのことを愛してくれて心から感謝してるよ。日本は俺にとって特別な魅力を感じる国なんだ。世界で最も魅惑に溢れる国だと思っている。日本の芸術にも強い関心を抱いてるんだ。特に、日本の映画は世界一だと思ってる。こうして、俺が最も憧れ、リスペクトしている国に触れることが出来るのを光栄に思ってるよ。本当にありがとう」



…直接会って話したワケじゃないが、ともあれこうしてイギー・ポップへのインタヴューが実現したのだった。
イギーとレミーがいなかったら、今こんな生活してないワケで、俺がどれだけ感無量だったかは…話すと長くなるんでやめておこう(笑)。
“意志あるところに道あり”という言葉は、昔付き合っていたカノジョが度々口にしていた言葉でもあり、感慨深かったな。


(2023.1.2.改訂)

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