インタヴューは渋谷O-nestでのライヴ翌日、04年10月5日にキングレコードで行なったモノです。
(Translated:川原真理子)
―昨日ライヴ観ました。4バンドの中で一番よかったです。
クレア・イングラム(ギター、ヴォーカル)「アリガトウ(笑)」
―自分たちではどうでしたか? 手ごたえは。
ポール・レセンド(ヴォーカル)「昨日の方がよかったね。ハコも小さくて、お客さんも近かったし」
クレア「ステージが低い方が、お客さんとより近いところで接することが出来るし」
―ドラムのドミニク(ヤング)がいなかったのが俺的には惜しいところで。
クレア「じゃあ、次回ということで…みんなにヨロシクってことで(笑)」
―前のアルバムが出てから約2年と、けっこう長いインターバルが開いてるんですけど、その間隔が開いた訳は?
ポール「まず、かなり長いアメリカ・ツアーをやってたのと、あと、ご存知のとおり、メンバーチェンジがあったのと。まあ、別に仲たがいしたとかじゃなくて、お互い同意の上で別々にやることになったんだけど、次のメンバーを見つけるのに時間がかかってね」
クレア「バンドの心情的には、作ったものはすぐにでもリリースしたいんだけど、出来上がったとしてもレコード会社の事情でリリースが遅れることってあるじゃない? そういうこともあって…」
(ここでトレイシーが登場。明らかに二日酔い)
―こんにちは!
トレイシー・ベラリーズ(ベース)「ポールの誕生祝いでカラオケに行って、ノド潰しちゃった(笑)」
―やり過ぎです(苦笑)。…はい、トレイシーが来たところでメンバーチェンジについて訊きましょう。新作リリースに際してメンバーが代わってるんですけど。…前任ベースのジョンがソングライティングで7曲に関わってて、演奏自体も4曲あるんですけど、メンバーチェンジはレコーディングの途中にあったんですか?
クレア「そうなの。だからレコーディングは2回に分けてやったのよ。そういうこともあって、アルバムの制作が余計に遅れてしまったんだけど、ジョンの書いた曲もよかったし、それを捨てる理由もなかったし、それでジョンもクレジットされてるの。ジョンが辞めた後も、バンドは続けていこうっていうことで私たちは続けてるワケ」
―トレイシーが加入したのは昨年ですか。
トレイシー「8月」
―トレイシーはそれまでのキャリアとか、何してたんですか?
トレイシー「このバンドに加入する前はしばらく何もやってなかった時期があったんだけど、しばらく前にSOUL BOSSAっていうバンドで…」
―“BOSSA”ってボサノヴァの?
トレイシー「全然ボサノヴァっぽくはなかったんだけど(笑)」
―今回のアルバムでは演奏のみで、ソングライティングには全く関わっていないんですけど、これからは?
トレイシー「シングルB面用の曲を一緒に作ったりしてるし、これからは書くわよ」
―あと、ちょっと意外だったのが…ベースが女性に代わったことで、もう少しコーラスを厚くするのかなと思ってたんですけど、ステージを見たらトレイシーの前にマイクスタンドがなかったと。この先、コーラスを増やしていく予定とかは?
トレイシー「私、こんな声だし…(苦笑)」
(通訳・川原さん)「回復してからでいいんですけど(笑)」
トレイシー「歌も下手だから、歌えないわ(笑)。…歌うのはクレアだけで」
クレア「私的には、歌はともかくとして、もう一人女の子がバンドに入ってくれて嬉しいわ!」
トレイシー「私はカラオケだけでいいの(笑)」
―ライヴを観ていて、バンドのヴィジュアルが向上したっていうか、ステージ映えするのは凄くイイですよね。
全員「イェー!(笑)」
―真ん中にハンサムなヴォーカリストがいて、両側にそれぞれタイプの違う女性メンバー、キュートなクレアとセクシーなトレイシーが。
クレア&トレイシー「アリガトー!(笑)」
ポール「誰が見てもどこかにオイシイところがあるワケさ(笑)」
―あと、最近、ポールみたいな楽器を持たない“立ちヴォーカル”を見たのは凄く新鮮だったんですけど…元々はベースを弾いてたんでしたっけ?
クレア「それは長い話になるわよ(笑)」
―どうぞ!(笑)
ポール「僕は元々このバンドでもベースを弾いてて、ヴォーカリストを探していたんだ。1年かけて、何十人もオーディションしたんだけど、どうも見つからない。入っても1週間でやめちゃったり(苦笑)。それでもううんざりして、仕方がないから僕がやることになったんだ。だから、僕はいまだに“代役”なんだよ(笑)。ベースに関しては…その頃ジョンと一緒に住んでいたんだよ。当時ジョンはギタリストだったんだけど、僕がヴォーカルをやるからジョンはベースをやってくれ、という話をして…」
―元々ヴォーカルをやる気はなかったということですか?
ポール「なかった。作詞作曲は僕がやってたし、それをシンガーに歌ってもらおうと思ってたんだ。でも見つからなかったし、自分で書いてるんだから自分で歌おうか、となって」
―ステージでのパフォーマンスは天性のモノっていう気がしたんで、意外な話ですね。
クレア「それはやっぱり経験の賜物で。最初の頃はヘッドライトを浴びたウサギみたいに(日本で言うところの“蛇ににらまれた蛙みたいに”ということ)、固まっちゃってたのよ(笑)」
ポール「今は慣れてきたからね」
―じゃあアルバムの話を…ikara coltっていうバンドはジャケットのアートワークが非常にスタイリッシュですよね。これは誰のアイディアですか?
クレア「1stアルバムでは“Praline”っていうアーティスト集団に頼んだんだけど、それはドミニクの友達だったの。その時の出来がよかったんで、2ndではその中の一人に頼んだのよ。だからどちらも同じ人物が関わってるわ。私たちはみんなアート・スクール出身で、アートの感覚には長けてるつもりなんだけど、バンド内で決めようとすると、アイディアがまとまらないの(苦笑)。だからこれは第三者にやってもらう方がいいってことで、アイディアはみんなで出すけれど、最終的にやってもらうのは外部の人なの」
トレイシー「バンドとしては、いかにもロックっぽいのは避けたいのよ。これならエレクトロニカ系のジャケットにも見えるでしょ?(笑)ジャンルがわからないようなのがいいの」
―どっちも凄くシンプルに見えるんだけど、凝った作りになってますよね。
クレア「ミーティングを重ねに重ねたのよぉ(笑)」
―モメたんですね?(笑)
クレア「そういうこと!(笑)」
―余談ですけど、1stアルバムの国内盤はCCCDなんですよね…。
クレア「CCCDは音質が落ちるっていうけど、私たちは最初からローファイだから関係ないわね(笑)」
―いずれも印象的なジャケットなんですけど、対照的な作風ですね。アルバム自体の内容も、ジャケットに反映してるところがあると思います。1枚目はわりとモノトーンで、ダークで攻撃的な感じ。それに対して2枚目のアルバムは、非常にカラフルな感じっていうか、ポップなセンスがあるし、曲に幅が出てきましたよね。
ポール「いい指摘だね!」
クレア「前と同じような作り方をしてもつまらないし、幅を広げたい。新しいものを作っていきたいわ」
―わりと意識的にメロディアスな部分を出したりとか?
ポール「そういう意識はなかったね。1曲1曲やりながら出来ていくっていう感じで、自然なプロセスだよ」
クレア「曲って、それ自体が生き物みたいで、作り始めにある方向性を示していたとしても、結果的に全然違っていることがあるでしょう? それは曲の行きたい方に任せるし、私たちは忍耐力がないんで(笑)、リハーサルで何度か試してみてダメだなと思ったリフやフレーズはすぐに捨てちゃうのよ。いい曲は最初からいいものよ」
―ソングライティング能力が間違いなく向上している一方で、前のアルバムにあったプリミティヴな感覚は少なからず失われていると思うんですけど、それについてはどう思いますか?
ポール「(あっさりと)そのとおりだね。バンドっていうのはそういうものだと思うよ」
クレア「バンドって、いつまでも続かないわ。必ず終わりが来る。私たちの場合は、1日1日を大事にしてる。長期の展望っていうのはなくって、このバンドが5枚アルバムを作るとはメンバーの誰も思ってないの。…最初はシングルを作るだけでよかった。世界を征服してやろうとか、凄いことをやってやろうっていうつもりは全然なくて、最初の目標はシングルを作ることだったの。で、シングルを出したら次はアルバムを作って、というのが続いて。今はまだ、曲を作ってレコーディングをするというのを新鮮に感じられるから、バンドを続けてるの。それが新鮮に感じられなくなったら、もうやめるでしょうね」
ポール「やめ時っていうのは、自分たちでわかると思うよ」
―…この話は、ポールの発言に“すべてのバンドは5年で消えるべきだ”というのがあったのを受けてのことなんですが。音楽的な洗練やスキルのアップと、初期衝動とのバランスのとり方について、どう思います?
(クレアとトレイシーが笑いながらポールを指差す)
ポール「…難しい質問だね…。自分たちでも上手くやっていけるかどうかはわからない。さっきも言ったとおり、バンドには寿命があると思ってるんだ。最初の3枚は凄くいいけど、その後はダラダラと、枯渇していくばかりというバンドは多いよね? それは確かに悲しいことだけど、仕方がないことだと思うんだよ」
―ikara coltにはその辺のバランスを上手く保って、もう少しアルバムを作り続けてほしいですね。
ポール「ベストを尽くすことだけは約束するよ(笑)」
―ROLLING STONESみたいにはならなくてもいいから、MOTORHEADみたいにはなってほしいですね(笑)。
(一同笑)
―その話はこのへんにして…あ、ひとつ訊き忘れてました。『MODERN APPRENTICE』っていうタイトルは、どこから来てるんですか?(“Apprentice”は“見習い、研修生”などの意味)
ポール「それは正に今のこのバンドのあり方を示しているんだよ。このバンドは常に学んでいて、進んでいくということを表わしてるんだ」
―…で、キーボードが入ってる曲が何曲かあって、ステージでどんな風に再現されるかというのが楽しみだったんですが、意外だったのは、アルバムではベースだけでクレジットされているトレイシーが、ステージでは1曲キーボードを弾いていましたよね。
トレイシー「そう、カシオのね」
クレア「80年代の安物で、本体よりケースの方が高価いのよ(笑)」
―あの独特のキーボードの音色が、このバンドのひとつの特色になってますよね。まあ全曲に入ってるワケではないにしろ。
全員「イエス」
―ikara coltに80年代前後のポスト・パンク的な匂いがするのは、キーボードとベースによる部分が大きいですね。特に、「Motorway」を聴いて思ったんですけど、SUICIDEの影響が…。
クレア「ワ~オ! グレイト! そう言ってもらえて嬉しいわ。SUICIDE大好き!」
―あの曲のキーボードはSUICIDEっぽいですよね。個人的には、ライヴで「Motorway」聴いてみたかったんですよ。
クレア「あの曲はライヴでやるのは難しいの。ライヴで出来ることには限りがあって、幾らアンプをいじっても、ペダルとかを使ってもあの曲は再現出来ないわ。「Motorway」のあの音はスタジオでのその瞬間だけ出せたもので…。でもひょっとしたら演る時もあるかも」
―…で、また全然話は変わるんですけど、ikara coltの今の編成、男性二人、女性二人、現時点で2枚のアルバムを出してて、なおかつベーシストは後から加入してる。フロントの3人の年代もそうなんですけど…デトロイトのTHE VON BONDIESっていうバンドとまるっきり同じなんですよね。知ってますか?
クレア「あ~、知ってるわ! キャリー(ベース)辞めるみたいね。NMEに載ってたわよ」
トレイシー「音楽は全然違うわよね(笑)」
―違いますね。
クレア「ポールはあのバンドと違ってギター持ってないわよ(笑)」
―あ~、そうですね(笑)。そうか、キャリー抜けるのか…。トレイシーは抜けないでくださいね。
(一同笑)
―1枚目から2枚目まで2年かかってて、さっきの話からするとそんなにテンポ良くは行かないでしょうけど、ファンは次のアルバムをなるべく早く出してほしいと思うんですよね。で、なるべく長く活動してくれるとイイな~と思うんですけど。
ポール「次のアルバムは4年後かもね(笑)。でもひょっとしたら半年後かも(笑)。超早いか超遅いかのどっちかだと思うよ」
―早い方がいいです(笑)。最後に、読者にメッセージをお願いします。
ポール「バンドを知ってる人、観に来てくれた人、本当にどうもありがとう! 知らなかった人、聴いてない人は、次回是非聴いてください!」
トレイシー「ファンと接する機会が多くて楽しかった。特に女の子のファンが多くて嬉しかったわ。そういう人たちに、自分たちが何らかの形でインスピレーションを与えて、何かのきっかけになれれば凄く嬉しい」
クレア「なんかもう、二人に言われちゃったわ(苦笑)。…日本大好き! 帰りたくないくらい好きよ!(笑)」
結局、このインタヴューの約3ヵ月後にバンドは解散してしまうのだった。他のメンバーよりも一回り近く年上だったトレイシー・ベラリーズは今でも音楽活動を続けているが、ポール・レセンドとクレア・イングラムがどうしているかはとんと聞かない。
追記:
トレイシー・ベラリーズだけはその後も音楽を続けている様子。
(2023.6.12.)
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