JAYNE COUNTY/GODDESS OF WET DREAMS(1994)

画像音楽誌でニューヨーク・パンク関連の特集とか見ると、当然だがウェイン・カウンティはほぼ100%取り上げられている。
しかし大抵は“オカマ怪人”扱いで簡単に紹介して、「のちに性転換してジェイン・カウンティになった」で終わってる…くらいならまだしも、“ジェイン・カウンティ”についてはまったく触れていないことの方が多い、ような気がする。
かく言う俺も、あちこちの雑誌で何度もNYパンクについて書いたのに、ジェイン・カウンティになってからの“彼女”について書いた記憶がない。
実のところウェイン・カウンティ時代よりもジェイン・カウンティになってからの方がキャリア長いワケだし、今も現役…のはず。

ジェイン・カウンティ。
上に書いたとおり、元々はウェイン・カウンティ。
更に元々はシンガーじゃなくて、あのレニー・ケイが編集者の一人だった音楽誌「ROCK SCENE」のコラムニスト。
(DJや“女優”もやってたらしい)
並行して自身も音楽活動を始め、QUEEN ELIZABETH→THE BACK STREET BOYS(後のマーキー・ラモーンことマーク・ベルが在籍)を経て、THE ELECTRIC CHAIRS。
QUEEN ELIZABETHを結成した頃はまだNEW YORK DOLLSがデビューしてなかった時期だというから、何しろキャリアは古い。

…コレは何故かフリー・ジャズで有名なレーベル、ESPディスクから出たジェイン・カウンティのアルバムで、それ以前に出ていたEPや1993年のライヴ・テイクも収録した、半ば編集盤みたいな1枚。
ESPは元々ニューヨークで64~76年にかけて活動していたフリー・ジャズのレーベルで、フリー・ジャズ以外にもTHE FUGSやPEARLS BEFORE SWINEやTHE GODZといったアヴァンギャルドなロック・バンドもリリースしていた。
経営難でレーベルは閉鎖となったが、92年にドイツのZYXが発売権を獲得。
旧譜の再発だけじゃなくて、ESPとしてリアルタイムでロックを、それもよりによって(?)ジェインをリリースすることになった経緯は、知らない。

話を戻して、アルバム『GODDESS OF WET DREAMS』。
(“夢精の女神”って…嫌なタイトルだなあ)
何故かパーソネルはジェイン・カウンティ(ヴォーカル)、ポール・ウェインライト(ギター)、マーティン・エインスコウ(ギター)の3人しかクレジットされてなくて、リズム・セクションについては“Unknown Celebrity”とか書いてある。
ポールは80年代末からジェインのバンドに参加していたギタリストだが、マーティンというのは、ひょっとしてNew Wave Of British Heavy Metalのグラム系バンド、SACRED ALIENのメンバーだった人?
THE ELECTRIC CHAIRSは英国を拠点にしていたから、そうかも知れない。

で、1曲目からライヴ音源なんだけど、コレがTHE STRANGELOVESのガレージ・クラシック「Night Time」のカヴァーで。
それ以前のロックとの断絶をことさら強調されがちなロンドン・パンク(実はそうでもないんだけどね)に対して、ニューヨーク・パンクというと60年代ガレージやサイケデリックからの多大な影響を指摘されることが多いが、ウェイン/ジェイン・カウンティもやはり例にもれず…というのを感じる、興味深い1曲。
THE ELECTRIC CHAIRS時代にも、THE ELECTRIC PRUNESの代表曲「I Had Too Much To Dream」をカヴァーしてたな。
(あと、前にも書いたけど、ガレージやNYパンクからは遠そうなジョージ・サラグッドも「Night Time」をカヴァーしてる。やはりすべてはつながっているのだ)
興味深いといえば「Lookin' For A Kiss」「Private World」とNEW YORK DOLLSのカヴァーが2曲も収録されていることにも、なるほどと思わされます。

もちろん「F**k Off」「Johnny Gone To Heaven」といったオリジナル曲もスリージーでパンクなイカしたR&Rばかり。
このアルバムがジェイン・カウンティの作品の中でどういう位置にあるのかとか、世間的にどのくらい認知されているのかとか、そういうことはまったく知らないんだけど、個人的にはけっこう愛聴してる1枚。
ジェイン・カウンティ…「Max's Kansas City」のウェイン・カウンティ、だけでは済まされない存在なのだ。


(2023.1.9.改訂)

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