そういうワケで(?)…以下は、DOLL誌2009年1月号に掲載されたTHE LOVEMASTERSについての記事を修正したモノです。LOVEMASTERS…かなり無名だし実際なんというかB級なバンドだと思うけど、その歴史と人脈を紐解けば実に興味深い。
THE LOVEMASTERSとその周辺のバンド群を語るとき、キーパーソンになるのがブーツィーXという男だ。本名ロバート・マルルーニー。またの名をボビー・ビヨンド(統一しろよ!)。
彼の名がデトロイトのロック・シーンに登場するのは、THE RAMRODSのメンバーとして、だ。RAMRODS…LOVEMASTERSよりもむしろこっちの方が有名だろう。結成は1977年秋。メンバーはマーク・ノートン(ヴォーカル)、ピーター・ジェイムズ(ギター)、デイヴ・ハンナ(ベース)、ロバート・マルルーニー(ドラム)の4人。
RAMRODSは78年冬には解散してしまっていて、活動期間は実に1年余り。アルバムも出さずにシーンから消えたんで、その存在は幻だった。しかし98年にバーバンクのトータル・エナジーからリリースされたデトロイト・ロックのオムニバスCD『MOTOR CITY’S BURNIN’』に「I’m A Ramrod」が収録され、その後2004年には77~78年にかけて録音されていた音源をまとめたアルバム『GIMME SOME ACTION』がデトロイトのヤング・ソウル・レベルズからリリースされて、その真価に触れられるようになった。
『GIMME SOME ACTION』にIGGY AND THE STOOGES「Search And Destroy」とTHE STOOGES「Real Cool Time」のカヴァーが収録されていることでわかるように、RAMRODSのサウンドは60~70年代デトロイト・ロックのコアな部分を継承しつつ、77年型のパンク・ロックに仕立て直したモノだ(そのへん同じデトロイト出身のTHE DOGSにも通じる)。もちろんオリジナルも強力で、「I’m A Ramrod」「Here It Comes」なんかは後述するDARK CARNIVALでも再演されたりしているし、「Nothin’ To Do In Detroit」なんて強烈にパンクな曲名も。
ピーター・ジェイムズはTHE RAMRODS解散直後にTHE ROMANTICSに参加し、その後あのNIKKI AND THE CORVETTESで作曲・演奏それにプロデュースまで手がけているから、これまたTHE LOVEMASTERSよりも全然有名だろう(ニッキー・コルヴェットと付き合っていたことがあるそうで)。しかし今回の主役は、RAMRODSではドラムを叩いていたロバート・マルルーニーの方だ。
ロバートはRAMRODS解散後、80年代に入って何故かドラマーからヴォーカリストに転向し、何故かブーツィーXというヘンなステージ・ネームを名乗って、自分のバンドを結成する。それがLOVEMASTERSだ(またはBOOTSEY X & THE LOVEMASTERS)。
当時のTHE LOVEMASTERSはデトロイトのクラブ・シーンではけっこう人気だったらしい。しかしTHE RAMRODS同様にアルバムなんぞとは縁のないまま解散してしまい、知る人ぞ知らない(?)存在として消え失せた。
ところがそれから10年ほども経ってから、前述の『MOTOR CITY’S BURNIN’』に1987年録音という「Pusherman Of Love」が収録されることに。ブーツィーXはドラムも兼任していて、他のメンバーはゲイリー・アダムズ(ギター)、クレイグ・ピーターズ(ギター)、パサデナ(ギター)、ドン・ジョーンズ(サックス)、マーク・カーン(ベース)、ヴァロリー・ドーン・ムーア(ラップ…というかイントロで叫んでるだけ)…という大所帯(パサデナは後にデトロイトのバンド、THE MUTANTSに参加)。
「Pusherman Of Love」は…MC5「Kick Out The Jams」の後期ヴァージョン(「BEAT CLUB」で映像が観られるアレ)を下敷きにした…というかほとんど替え歌みたいな曲。3本のギターがグイグイうねり、サックスが吠えまくる。そこにブーツィーXの、明らかにイギー・ポップの影響を受けつつもユルユルなヴォーカルが乗っかる。本当にB級なんだけど、ユニークな、愛すべき1曲だと思う。
さて80年代。THE STOOGESもMC5も既になく、THE LOVEMASTERSも解散の憂き目となったワケだが、もちろんデトロイトのロック・シーン自体が死に絶えたワケじゃなかった。そこに、解散したり地味な活動に甘んじていたバンド連中を集めてのスーパー・セッションを画策した男がいた。その名はコロネル・ギャラクシー。
STOOGESのロン・アシュトン(ギター)が70年代後半に参加していたDESTROY ALL MONSTERS。そのヴォーカリストとして妖艶な美貌でシーンに君臨したナイアガラ。コロネルはナイアガラの彼氏で、長い間デトロイトのシーンに関わってきた男だ。そのコロネルがデトロイトの錚々たるメンバーを集めて1984年、ハロウィーンの夜にスタートしたのがDARK CARNIVALというプロジェクトだった。
DARK CARNIVALは、簡単に言えばデトロイト・パンクのオールスター・レヴューみたいなもんだった。名うてのミュージシャンが集まって、THE STOOGESやDESTROY ALL MONSTERSやその他のバンドの曲を披露する、という。
そのオールスターズ、かなり濃い顔ぶれだ。中心メンバーはもちろんナイアガラとロン・アシュトン。他にTHE RAMRODS~THE 27のマーク・ノートン(ヴォーカル)、THE MUTANTSのアート・リザック(ヴォーカル)、RAMRODSのデイヴ・ハンナがやっていたTHE BONERSからジェリー・ヴィル(ヴォーカル)、更にSTOOGESのパワーハウス・ドラマー、スコット・アシュトンなどなど。そんな中に、我らがブーツィーXも参加していた(オリジナルLOVEMASTERSのゲイリー・アダムズも)。
スーパー・セッションとしてのDARK CARNIVALは、フランスのリヴェンジ・レコーズから2枚のライヴ・アルバムを出している。まずは1990年6月29日にクリーヴランドで行なわれたスティーヴ・ベイターズ(もちろんDEAD BOYS~THE LORDS OF THE NEW CHURCH)追悼ライヴの模様を収録した『WELCOME TO SHOW BUSINESS』(90年リリース)。アタマからいきなり「Here It Comes」「I’m A Ramrod」とTHE RAMRODSのレパートリー2連発。ヴォーカルはもちろんブーツィーX。もっともこのアルバムの売りは元DEAD BOYS、チーター・クローム(ギター)の参加だろうが…。
もう1枚は同時期(収録日不明)のデトロイトでのライヴを収めた『GREATEST SHOW IN DETROIT』(91年リリース)。ブーツィーはTHE LOVEMASTERSのレパートリー「Bomb For Whitey」を歌っている(もう1曲、ロバート・カルヴァート/HAWKWINDのカヴァー「The Right Stuff」も、クレジットされてないが多分ブーツィー)。このアルバムでは、ナイアガラがLAのFEAR(!)の「I Love Livin’ In The City」を歌っているのも聴きモノだろう。どっちのアルバムもリード・ギターはもちろんロン・アシュトン…デトロイト・ロック好きなら外せない2枚だ。
その後のDARK CARNIVALはロン・アシュトンとナイアガラを中心とする固定メンバーの正式なバンドとして機能するようになり、何枚かのアルバムを出している。一座の面々は自分たちの活動へと戻っていき、もちろんブーツィーXも再び自身のバンドで活動を始めた。THE LOVEMASTERSがここに再始動する。
今度はちゃんと音源が出た。1995年、トータル・エナジーから6曲入りのCDEP「Hot Pants Zone」、ハッピー・アワーから7inch「Hot Pants Power」がリリースされる(どうでもいいけど、なんだよそのタイトル!)。ブーツィー以外のメンバーは全員代わっているが、基本路線は80年代とほとんど変わっていない(「Hot Pants Zone」のうち1曲はオリジナルLOVEMASTERSの演奏、1曲はDARK CARNIVALのアルバムから。そして「I’m A Ramrod」のリメイクも)。ちょっとTHE ROLLING STONESみたいなスリージーさも加わったかな、という感じ。
この新生THE LOVEMASTERSから、ブーツィーXは何故かボビー・ビヨンドと名乗るようになる。そして1997年にはサー・アクエリアスという全然知らないレーベルから、初レコーディングから実に10年を経てデビュー・アルバム『PUSHERMAN OF LOVE』がリリースされたのだった。
EPとはリズム・セクションが違っているが、ブーツィー/ボビー・ビヨンドを中心に、ジェラルド・ショーハン(ギター、ドブロ、ヴォーカル)、リッキー・ラット(リズム・ギター)というフロント陣がバンドの主要メンバー。THE ROLLING STONES風なフィーリングはEPよりも増していて、基本的に重心低いのに妙な軽さと浮遊感(多分ジェラルドが持ち込んだファンキーな感覚がキーになっている)。そして代表曲「Pusherman Of Love」はますます「Kick Out The Jams」風になっている…。かつての盟友ピーター・ジェイムズが1曲でソングライティングに関わっていたり、THE PRETTY THINGSの名曲「L.S.D.」をカヴァーしていたりも。THE RAMRODSと違ってパンク・ロックとはいえない音楽性ながら、興味深い1枚だと思う。
アルバムのリリースから既に15年経過した。その後のTHE LOVEMASTERSの噂は聞かない…。しかし、ブーツィーXは多分今もデトロイトで歌い続けているに違いない(ミュージシャンとしての才能はピーター・ジェイムズの方が明らかに上だったと思うんだが、彼は最近どうしているんだろうか)。“BOOTSEY X & THE LOVEMASTERS”で検索すると、YouTubeにも上がってるしね。
(2023.8.17.改訂)
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