2011年に結成され、結成から5年でメジャー契約もないまま日本武道館公演を果たしたバンドのドキュメンタリー映画。監督はCARCASSのMVや、ARCH ENEMYやCHURCH OF MISERY(!)のライヴDVDなどを手掛けてきた木村和亮。
MY FIRST STORY。
正直言って、名前しか知らなかった。
更に正直に白状すると、この映画でその音楽に触れたものの、個人的には全然ピンとこない。
「ふーん、今はこういうのが人気あるんだ、ふーん」みたいな。
しかし、この映画には、思わずグッときてしまったのだった。
Nob(ベース)ら3人で結成したバンドに、ヴォーカルとギターが加わり、ギター2本の5人組として2012年4月にデビュー。
以後順調に人気を高めて来たようでいて、好事魔多し。
映画が始まった時点ではオリジナル・メンバーを欠いて活動が曲がり角…というのは、昨年紹介したRADWIMPSのドキュメンタリー映画(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_2110.html)にも似て。
結成当初からバンドを牽引してきたギタリスト、そしてドラマーも脱退。
バンドは新ドラマーを迎える一方で、ギタリストを補充せずギター1本の4人組として再スタートを切る。
そして、47都道府県すべてを廻るツアー、更にはツアー・ファイナルとして日本武道館公演を決定する。
カメラは過酷なツアーを続けながら武道館を目指すバンドの姿を映し出して行く。
メンバー4人のキャラクターが良い。
バンド最年少にして才気と小生意気さ溢れるフロントマン、Hiro(ヴォーカル)。
(単にキレイなハイトーンじゃなくて、なかなかひっかかりのある声質)
繊細でアーティスティックな感じ、ぼんやりしたハンサムのTeru(ギター)。
バンドのボトムを支える最年長、落ち着いた兄貴分のNob(ベース)。
(楽屋で他の3人があーだこーだ言っている時も、Nobはその輪に加わっていない時が多い)
そして、関西弁のムードメイカー、Kid'z(ドラム)。
漫画に出てきそうなくらいのバンドらしいキャラ分け。
Kid'zにとっては、新加入後初のツアーが全国47公演(!)。
しかも加入8ヵ月で日本武道館。
しかし彼がすぐにバンドに馴染んでいたことは、画面から十分に伝わってくる。
Teruにとっては、ギター2本から1本へというのは(特にライヴでは)相当厳しいモノがあったはずだが。
飄々とした風情で乗り切っていく。
とはいえ、蓄積する疲労。
Hiroの喉の不調。
不安要素を抱えたまま、ツアーは転がり続ける。
そして、ツアーの模様を切り取るだけでなく、カメラは各メンバーの内面に踏み込んでいく。
特にピックアップされるのはやはりというか、シンガーであるHiroだ。
音楽一家の三男として生まれ、“親の七光”“兄の二番煎じ”という外野の声に耐えながら自身の歌を磨き続けてきた。
彼の真情吐露はいつしかバンドそのものからも離れ、バラバラになってしまった家族、それが故に形成された、若くして無常観とも言えるような人生観を吐き出して行く。
そして、バンドの名付け親でありながら既にこの世にいない人物についての思慕も。
そうして迎えた日本武道館公演。
それまでのライヴハウス公演とはまるっきり次元の違うステージ・セットがまず素晴らしい。
METALLICAもかくやの円形ステージでメンバーが縦横に舞う。
しかもパイロばんばん!
そんなステージで、Hiroは自身の生い立ちに起因する諸々の想いをさらけ出す。
日本武道館を埋め尽くした12000人のオーディエンスを前に、Hiroの叫びはただ自分の家族4人に向けられる。
最早ライヴのMCとも言い難い、エモーション垂れ流し。
俺はそれを「けっ、自家中毒が」と斬って捨てることは出来なかった。
むしろ、思わずウルッとしてしまった。
今の今までMY FIRST STORYを聴いたことがなかった俺がそんな調子だから、ファンの女の子たちは涙腺決壊間違いなし。
コレは、木村和亮監督の構成の上手さにもよると思う。
東宝さんから怒られそうな勢いで突っ込み気味に書いているが(笑)、コレでもネタバレを避けるためかなりぼかして書いている(つもり)。
当然ながら、MY FIRST STORYのファンはもちろんのこと、このブログを読んで少しでも興味を持った方は観て損なしの映画だと思います。
俺がこの映画の試写会に出かけたのは先週の話だが。
今日は映画の完成披露上映会の、舞台挨拶も見てきましたよ。
メンバーの発言にビシビシ突っ込むHiro。
かなり天然なことが判明したTeru。
やっぱり手堅いNob。
やっぱりお笑い担当の(?)Kid'z。
「今回のツアーを知っている人にとっては、答え合わせになるような映画」というHiroの発言が、すべてを象徴していたと思う。
500席近い場内を埋め尽くした若い女の子中心のお客さんたちが、メンバー登場にキャーキャー声を上げるでもなく、メンバーの一挙手一投足を静かに熱く見つめていたのも印象的。
『MY FIRST STORY DOCUMENT FILM ―全心―』、2月17日(金)~3月2日(木)まで、全国で2週間限定ロードショー。
配給:東宝営業事業部
(c)2017「MFS DOCUMENTARY FILM」製作委員会
追記:
MY FIRST STORYは2022年に再び日本武道館公演。
23年にはONE OK ROCKと東京ドームでのライヴ開催。
24年には『鬼滅の刃』の主題歌を担当。
…と、その後もバリバリ活躍している。
30代になったHiroは父親の若い頃に似てきた気も。
(2024.12.27.)
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