このブログを御覧の皆様で、Less Than TVのリリース作品を1枚も聴いたことがないという人は、少ないのじゃなかろうか。(多分)
コレはそのLess Than TVを主宰する谷ぐち順とその周辺を1年に渡って追いかけたドキュメンタリー映画。
当時GOD'S GUTSをやっていた谷ぐち順を中心に、Less Than TVが発足したのが1992年。
SSTやシミー・ディスクを手本にしていたという。
BLACK FLAGを軸としつつ、SONIC YOUTHなんかもリリースしていたSST。
鬼才マーク・クレイマーを中心に何でもアリだったシミー・ディスク。
Less Than TVもなんだかよくわからないまま25年。
俺が最初に聴いたLess Than TVのリリースは、GUITAR WOLFの2ndアルバム『RUN WOLF RUN』だったと思う。
でもこの映画にはGUITAR WOLF出てきません。
その代わりと言ったらアレだけど、プンクボイやらニーハオ!やらジョンのサンやら脳性麻痺号やらトンカツやらMASTERPEACEやらWARHEADやら、次から次へと出てくる楽しかったりキテレツだったりする雑多に過ぎるバンド群。
音楽ドキュメンタリー映画でも、ここまでいろんなバンドがたくさん出てくるのって稀じゃないだろうか。
(俺自身が実際に観たり聴いたりしたことないバンドの方が圧倒的に多い)
そして、谷ぐち順が現在やっている“FUCKER”名義での弾き語り、谷ぐちの妻YUKARIを擁するLimited Express(has gone?)、更には谷ぐち夫妻の息子・谷口共鳴(ともなり:小学生)が結成したハードコア(?)バンド、チーターズマニアまで。
映画は谷ぐち一家の日常やら谷ぐちの仕事である介護やらチーターズマニアのリハーサルからライヴに至るあれこれやらを並列しながら転がって行く。
障害者も健常者もフツーに共生出来る社会が当たり前、という谷ぐち順の考えは、どんなジャンルだろうと楽しければ、アピールするモノがあれば何でもアリだ、というLess Than TVの基本姿勢と通底していると思う。
よって、谷ぐちが目指すすべての人がフツーに共生出来る社会は、どんなジャンルのバンドでも面白ければ分け隔てなく受け入れるLess Than TVと根底では一緒だ。
それが社会全体の話かロック・シーンの話かという違いだけだ。
“なんでもアリ”は、どうかすればカオスだ、闇鍋だ。
しかしこの映画で次々と登場するなんでもアリは、楽しさに満ち満ちている。
この映画のキャッチコピーも“楽しい、ことだけ!! ぶちかませ!!”となっている。
(チーターズマニアの歌詞に由来)
もちろん実際には、楽しいことだけではないだろう。
実務の問題で諸々がとんでもないことになりかけたり実際とんでもないことになったりという話も、映画の中には次々と登場する。
谷ぐち順とYUKARIも喧嘩したりするし(だがその脱力具合!)、谷口共鳴も泣いちゃったりする。
しかし、それもすべて含めてのなんでもアリなのだ。
何しろ、自力でステージに立っていることすら出来ない脳性麻痺の人(谷ぐちが介護する相手)をヴォーカルに立てて、脳性麻痺号なんてバンドを組んじゃったりするんだから。
(バンドやればモテると思ったらしいが、そうでもなかったみたい)
監督はコレがデビュー作となる大石規湖。
カメラは、近い。
谷ぐち一家に限りなく近い。
多くのドキュメンタリーにフツーに見られる客観性やフラットさが感じられない…その分、観客はカメラを通した谷ぐち一家というよりも、自分の目でその場で見ている谷ぐち一家、みたいな錯覚を覚えるかも知れない。
そして、監督と一緒に笑ったりジワったりするかも知れない。
で、衝撃のラスト(笑)。
谷ぐち順さん、昨年秋にお会いしたきりだけど、あの時はまだこの映画の撮影中だったのかな。
『MOTHER FUCKER』、8月26日(土)より渋谷HUMAXシネマを皮切りに全国順次公開。
(C)2017 MFP All Rights Reserved.
追記:
谷ぐち順氏、その後もけっこうあちこちで会っている。
(2025.2.5.)
この記事へのコメント