映画『ゴーストロード』

画像かつて西海岸のカルトなパンク・バンド、THE ROTTERS(『パンク天国3』やシンコーミュージックのディスクガイド本にも載ってる)のシンガーとして活躍し、現在はラジオ・パーソナリティとして知られるマイク・ロジャースが製作・監督・脚本を務めたR&Rムービー。
コレが『ファントム・オブ・パラダイス』と漫画『俺と悪魔のブルーズ』を無理矢理合体させてオフビートな感覚で料理したような怪作(?)に仕上がっている。

バンド・THE SCREAMIN' TELSTARSを率いるトニー(THE NEATBEATSのMr.Panが演じる)はうだつが上がらないまま悶々としつつ活動を続けていた。
かつてライバルだったはずのシンゾー(THE PRIVATESの延原達治!)率いるTHE MAD READERは今や海外ツアーに出るほどの人気バンドになっているというのに、SCREAMIN' TELSTARSは演奏技術も上がらないまま小さなライヴハウスで演奏する日々。
ある日、リハーサル中にトニーのアンプ(VOXの年代物)が煙を吹き、トニーは翌日のライヴに間に合わせるために怪しげな中古楽器屋へと。
そこで見かけたいわくありげな(これまた年代物の)アンプを、店主の忠告も聞かずに入手したトニー。
しかし彼のギター・プレイはその日から別人のように素晴らしいモノとなる。
そう、そのアンプこそがトニーにとって、かのロバート・ジョンソンが立った“クロスロード”に等しいモノだった…。

…というのが前半のあらすじ。
(あとは実際に観て下さい)
人ならぬモノと手を組んだが故に手に入る才能や栄光、そしてその後に待ち受ける代償。
まさに『ファントム・オブ・パラダイス』や『俺と悪魔のブルーズ』の世界じゃないですか。
しかしこの映画、全編がなんとも言えないユルさに貫かれている。
アンプから出現する“亡霊”もそんなに怖いワケじゃないし(しかし、得体の知れない狂気じみた不気味さ)、悲劇的なはずの終幕にも悲壮感はなく。
(しかもオチまで用意されている)
なんとも言えないテンポとリズム感で、物語は淡々と転がって行く。
そこらへん、『パンク天国3』であのTHE GIZMOSとも比較されていたTHE ROTTERS…を率いたマイク・ロジャースの独特なセンスによるモノかも知れない。
人によっていろいろなツッコミどころがあると思うけど、そういうのを含めてトータルに楽しむべき作品だと思う。
あと、トニーと亡霊“ピーナッツ・バター”がそれぞれ日本語と英語でフツーに会話しているのには、スティーヴン・スピルバーグ最大の駄作と言われる『1941』(俺は大好き)を思い出したり。

キャストは豪華。
THE SCREAMIN' TELSTARSはTHE NEATBEATSが、THE MAD READERはTHE PRIVATESが、それぞれ演じている。
他にもザ50回転ズのダニーや、SCOOBIE DO、更には伝説のDJロドニー・ビンゲンハイマーまで。
まあ豪華とは言ってもメイン・キャストは俳優じゃなくてミュージシャン、演技力には期待しちゃいけない。
(一番イイ演技をしているのはダニーか。ひょっとしたら“演技”じゃないのかも知れないが)
しかしかつて映画に出演したリチャード・ヘルやジョニー・サンダースの迷演技(?)を知っている人なら、別に気にしないだろう。
(むしろNEATBEATSの面々はよくやってると思う)
もちろん演奏シーンはたんまり出てくるし、当然ながらお色気も(コレは不可欠だよね)。
あと、ナレーターというか狂言回し的な役どころで登場するミスター・タロヲを演じるラジオDJ・古川タロヲの存在感が抜群。

この映画に推薦コメントを寄せた顔触れは、むしろ出演者以上に豪華。
リッチー・ラモーンにTHE WiLDHEARTSのジンジャー、大貫憲章、SAのTAISEIなどなど。
ここまでに出てきたバンドやミュージシャンの名前にひとつでもひっかかった人は、そりゃ観るしかないでしょう。


『ゴーストロード』、9月30日(土)より渋谷HUMAXシネマを皮切りに全国順次公開。


(C)2017 Mike Rogers / Robot55 LLC.


(2025.2.6.改訂)

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