遠藤賢司/東京ワッショイ(1979)

画像遠藤賢司については、以前『KENJI』(1974年)を紹介したが。
https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_876.html
その後CBSソニーに移籍して75年に『HARD FOLK KENJI』をリリースしたものの、それ1枚きりでCBSソニーを離れ。
しばらくブランクのあったエンケンさんが、キングレコードに移籍して放った大傑作が『東京ワッショイ』だった。

四人囃子+山内テツをバックに従え、いきなりロック…どころかパンク/ニュー・ウェイヴ方面にアプローチ。
…というか、別にいきなりではなかったのだけど。
遠藤賢司はいつだってロックだったし、パンクだった。
『KENJI』について書いた時にも言ったが、『HARD FOLK KENJI』を制作した時点で“パンク・ロック”というジャンルがなかったから“ハード・フォーク”と名乗らざるを得なかっただけで。
エンケンさんは昔から相当パンクだった。
そしてパンクだけでなく、ここにはブルーズもプログレも電子音楽もある。
もちろんフォークも。

SEX PISTOLSの「Holidays In The Sun」のコーラスが“ワッショイ”に聴こえて、そこから「東京ワッショイ」…というその発想が実に素晴らしい。
パンク・ロックを聴いて、自分のロックを作り上げてしまう…いわゆるフォーク・シンガーには絶対に持ち得ないセンスだった。
奇しくもニール・ヤングが「Hey Hey, My My」でジョニー・ロットンに言及したのと同じ年。
そして、自分が住む東京で文句を言わず地に足を着けてやって行くことへのこだわり。
それが、何の衒いもないストレートな言葉で歌われる。

一方でエレポップ「哀愁の東京タワー」があり。
このアプローチはニール・ヤングよりも早い(!)。
当時、SEX PISTOLSと共にKRAFTWERKにも入れ込んでいたという。
それでいてメロディは歌謡曲的。
次作『宇宙防衛軍』(1980年)で平山三紀を迎えてリメイクするのも納得。

『KENJI』あたりから前面に出るようになった宇宙感覚も横溢。
(何しろアナログA面が“東京サイド”、B面が“宇宙サイド”)
バックを務めた四人囃子の「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ」に対して、遠藤賢司の「UFO」は自分がUFOになっちゃうんだから。
宇宙をひとっ飛びするその感覚は、四人囃子よりもピンクレディーよりもむしろHAWKWIND「Silver Machine」に近いとさえ言える。
デビュー曲「ほんとだよ」もシンセサイザーをフィーチュアして生まれ変わっているが、コレは本人よりもキングレコードの要望が大きかったのかも。

そして、後にライヴのハイライトとなる「不滅の男」はこのアルバムが初出。
何度倒れても立ち上がる不滅の男、象形文字で歌う言音一致の純音楽家・遠藤賢司ここにあり。
この曲こそが後のエンケンさんのイメージを決定づけたと言って間違いないだろう。
“頑張れよなんて言うんじゃないよ/俺はいつでも最高なのさ”という歌詞に奮い立った男や女がどれほどいたことかと。

『宇宙防衛軍』を出して以後、ミニアルバム『オムライス』(1983年)を除いてしばらくスタジオ・オリジナル・アルバムのリリースが途絶えた遠藤賢司だったが、『夢よ叫べ』(96年)以降は旺盛なリリースを続けることに。
もちろんリリースがない間も、強力なライヴを展開していたワケで。
何しろ不滅の男ですから。




次の旧譜レヴューを遠藤賢司にしようと決めたのは、24日の晩、THE DOORSについて書いた後だった。
呼ばれたとしか思えない。
翌25日の早朝、エンケンさんは逝ってしまった。
70歳。
レミーへのシンパシーを語っていたエンケンさんだったが、享年までレミーと同じにしなくても。

胃癌については既に公表されていたが、いなくなるのはもっと先のことだと思っていた。
いや、手術して復帰すると思っていた。
だって不滅の男なんだから。

エンケンさんには2回インタヴューしたことがある。
「ほんとだよ」をバンドでカヴァーしていた身としては、得難い経験だった。
2回目のインタヴューの時、カヴァーしていたことを白状すると、エンケンさんはニヤリと笑って「礼は言わないよ」と言った。
しかしそのアレンジがKING CRIMSON「Epitaph」風だった、というのはかなり面白がってくれたモノだ。

今だから言うが、初インタヴューの後、エンケンさんにカレーライスをおごってもらった。
「他の人にもおごらなきゃならなくなっちゃうから」と口止めされていたが、もうばらしても問題ないだろう。
「カレーライス」の遠藤賢司にカレーライスおごってもらった…一生忘れられない思い出だ。

エンケンさん、その節は御馳走様でした。
俺にとってエンケンさんは今後も不滅の男です。


(2025.2.28.改訂)

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック