THE DEBUTANTES/THE DEBUTANTES

画像昨年9月のリリース。
先日書いた2018年の年間ベストでリイシュー/発掘盤のベストに入れているが、年をまたいで改めて紹介。

デトロイトで1964~69年にかけて活動していたガールズ・バンドの編集盤。
中心人物であるジャン・マクレラン(ギター、ヴォーカル)以外のメンバーは交代を繰り返し、活動中にはシングル3枚を残したのみだが、このCDにはシングルの6曲に未発表曲9曲を加えた15曲が収録されている。

ジャン・マクレランことジャニス・マクレランは1964年2月9日に「Ed Sullivan Show」でTHE BEATLESを観て、たちまち虜になる。
しかしジャンが他の多くの女の子たちと違っていたのは、バンドを観てキャーキャー叫ぶ側ではなく、即座に自分もバンドをやろうと決意したところだった。

10歳からウクレレを弾いていたジャン・マクレランは、12歳の時にはアコースティック・ギターをプレイするようになっていた。
THE BEATLESに感化されたジャンは、同じ中学校のBEATLESファンの女の子たちと早速バンドを組む。
それがTHE DEBUTANTESだった。
メンバーたちはこの時14歳。
ジャンは兄たちからギターとドラムを借りて、リン・ホーキンス(ギター)とダイアン・アブレイ(ドラム)の二人に自ら演奏を教えたという。
アルバムのブックレットには、当時のDEBUTANTESがゼネラル・モーターズの重役だったジャンの祖父のツテでスティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイと一緒に撮影した写真が載っている。
(お嬢様だったのね)

当時のTHE DEBUTANTESのレパートリーは、当時ラジオから流れていたトップ40の数々だった。
ジャン・マクレランはテープレコーダーとギターとノートを用意してラジオの前に座り、ヒット曲の歌詞とコード進行を聴き取って耳コピしていたという。
アコースティック・ギター2本とドラムのトリオだったDEBUTANTESは1965年に入るとエレキに持ち替え、コリンヌ・ヘルコ(ベース)が加入して4人組となる。
この頃バンドにはマネージャーも付いて、クラブでBOB SEGER & THE LAST HEARDやQUESTION MARK AND THE MYSTERIANSの前座を務めるようになっていた。

その後リズム・ギターとベースが当時14歳だったメアリー・リントンとキャロル・リントンの双子に交代。
1966年に入るとドラマーもジノ・コミニスキーに替わり、ジャン・マクレラン以外のメンバーは総入れ替えとなる。
更に、この頃THE ROLLING STONESを観たジャンはやはり専任のシンガーが必要だと考えるようになり、ヴォーカリストとしてバーバラ・マケッチニーを加入させる。
しかしバーバラはすぐに脱退。
結局その後は解散までジャンがリード・ヴォーカルとリード・ギターを兼任し続けるのだった。
(ジャケットの写真はリントン姉妹が在籍していた66年のモノだろう)

当時のジャン・マクレランはまだ16歳だったが、音楽で食って行こうと真剣に考えていた。
THE DEBUTANTESはTHE SUPREMES、マーヴィン・ゲイ、MARTHA & THE VANDELLAS、SERGIO MENDEZ & BRASIL '66などとプレイし、アメリカ国内だけでなくカナダにもツアーしたという。
バーバラ・マケッチニー在籍時からレコーディングを経験していたバンドは、1966年に4人編成でデビュー・シングル「Shake A Tail Feather / Strong Foundation」をリリースする。
このシングルはなんと「Shake A Tail Feather」の作曲者であるあのアンドレ・ウィリアムズがプロデュースしていた。

その後リントン姉妹が脱退し、彼女たちは新たなガールズ・バンドTHE LORELEISを結成する。
THE DEBUTANTESにはダーレン・グロンキ(オルガン、ギター)とクリス・ジャンセン(ベース)が加入。
ダーレンを加入させたのは、当時ジャン・マクレランがVANILLA FUDGEを気に入っていたからだとか。
このCDのブックレットに載っている写真はこの頃のモノが多いようだ。
(ジャンはモズライトのダブルネックを手にしていたりする)

THE DEBUTANTESは新編成で1966年に2ndシングル「Love Is Strange / A New Love Today」をリリース。
リリース元は初期GRAND FUNK RAILROADのマネージャーとして知られるテリー・ナイトが主宰していたレーベル、ラッキー・イレヴンだった。
(B面は録音が残っているDEBUTANTES唯一のオリジナル曲)

1967年に3rdシングル「On Broadway / Little Latin Lupe Lu」をリリースしたTHE DEBUTANTESは、激化しつつあったヴェトナム戦争を背景に、米軍基地への慰問で稼ぐようになる。
68年には遂に大西洋を越えて西ドイツへ。
しかしジノ・コミニスキーはこのツアーに同行せず、バンドを脱退してリントン姉妹のTHE LORELEISに移ってしまう。
ジャン・マクレランは当時のデトロイト界隈で唯一女性のツーバス使いだったデニス・マンデルを加入させる。
この頃の写真を見ると、ジャケット写真のようなキュートな感じよりも、かなりセクシー&ワイルドなイメージになっている。

西ドイツでは米軍基地だけではなくハンブルクのTHE STAR CLUBなどでも演奏して好評を博したTHE DEBUTANTES…がアメリカに帰国したのは1969年だった。
しかし長いツアー生活に疲れたのか、ジャン・マクレラン以外の全員が脱退してしまう。
ジャンはすぐにメンバーを補充し、今度はアジアへとツアーに出たが、戦火のヴェトナムでは護衛もなしに前線まで慰問に行かされるような状態で、過度のストレスにさらされたバンドは帰国と同時に解散となるのだった。
この時点でまだ19歳だったジャンは、その後ラスヴェガスで歌手として成功した、らしい。

…といったあれこれはCDのライナーノーツから拾った。
で、レーベルの惹句には“Gutsy, Girly, Glam, Garage?”とあるが、実際に音を聴いてみるとそんなにガッツィーとかグラムとかガレージとかいう感じではなく、かなりソフトでポップ。
レパートリーもSONNY & CHERとかTHE RONETTESとか、R&R/R&Bよりはポップスが多い。
(THE ROLLING STONES「The Last Time」をカヴァーしている一方で、ジャン・マクレランに最初に衝撃を与えたTHE BEATLESが1曲も取り上げられていないのはちょっと不思議)
ジャン(そして3曲で聴けるバーバラ・マケッチニー)のヴォーカルもメンバーのハーモニーもかわいらしく、デトロイトと言ってもTHE PLEASURE SEEKERSみたいな(それこそガッツィーな)感じではない。
しかしジャケット写真に代表される、キュートで品の良いフィーリングがとてもイイ感じ。
超ガーリーなのは間違いない。
(1966年頃までのメンバーはみんなお嬢様っぽいし)

それにしても、このバンドが解散してから今年で半世紀。
いまだにこうやって知られざる音源が発掘され続ける60年代音楽、恐るべし。


(2025.7.18.全面改訂)

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