岩明均(原作)・室井大資(漫画)『レイリ』第六巻

画像はい、『レイリ』最終巻。
あー、終わっちゃいましたよ。

最終巻、話の展開が早い。
天正10年、いよいよ武田軍と織田軍の全面衝突…と思ったら重臣の相次ぐ寝返りで、7ページでは15000人だった武田軍が2ページあとにはたちまち1000人に。
そして読み始まって最初の1話で武田信勝死んじゃうし。
まずここで泣く。
ボロボロ泣く。

1巻から5巻まで愚昧ぶりばかりが目立った武田勝頼も6巻では最期に男を見せ。
ヘタレだった孫次も覚悟を決める。
そして武田信勝の影武者の任を解かれたレイリに訪れる、師・土屋惣三との別れ。
ここでまた泣く。

誰よりも死にたがりのやけっぱち狂戦士だったはずのレイリを残し、主要登場人物のほとんどが先に逝ってしまう。
残されたレイリは、最後の“けじめ”のために再び刀を手に。

岩明均の作劇は最後まで冴える。
史実の中で詳細が明らかになっていない部分を上手く利用して、自分の色を加え、オチを付ける。
そしてその物語を活写する室井大資の作画。
18歳となったレイリの瞳にかつての暗い影はなく。
(それにしてもその瞳があまりに雄弁に物語る怒りや悲しみよ)
膝をついたままでの立ち回りや、穴山玄蕃一行をたちまち切り伏せるシーンでのシンプルな(あるいは、いかにもシンプルに見せる)まとめ方もナイス。
最終話、24歳になったレイリの女っぷりも実にイイ感じ。
(ラストシーンでまた意味なく泣ける)

で、6巻の帯コピーが“たとえ胸の傷が痛んでも”ですってよ。
アンパンマンか!
今世紀初頭に開始されたという岩明均のシナリオ執筆が完了したのが、東日本大震災から2年後の2013年。
“たとえ胸の傷が痛んでも”という言葉は6巻になっていきなりとってつけたワケではなく、最初から作品の世界観に織り込まれていたモノらしい。
震災直後にラジオやあちこちで流れまくったあの歌。
それはつまり、とてもシンプルに、押しつけがましくもなんともなく“生きろ”という。

5巻を紹介した時にも書いたが、この作品、絶望している人や、大きな絶望を経験したことのある人にはとても響くと思う。
もちろんそうでない人にも。
いやあ、面白かったな。
岩明均・室井大資の両氏には今後も活躍していただきたいと願う。


『レイリ』第六巻、本日発売。


(2025.8.20.改訂)

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