(もっとも音楽的にはJUDAS PRIESTと180度違う)
JUDAS PRIESTの場合、ドラマティックなハード・ロック路線はその前の『SAD WINGS OF DESTINY』から始まっているが、KRAFTWERKの元祖エレクトロ・ポップ的な方向性はこの4thアルバムから。
…というだけではなく、その後の再発ではそれ以前の3作が無視され、まるでこの『AUTOBAHN』が1stアルバムであるかのような扱い。
まあKRAFTWERKのレーベル名である“クリングクラング”は2ndアルバムの曲名に由来するので、初期3作が完全になかったことになっているワケではないのだろうけど。
俺の手元にあるのは1977年の米マーキュリー盤LP。
(しかし何故か国内盤の帯が付いている。中古で買ったんだけど、どういうことか)
LP時代はジャケット手前に車のダッシュボードが描かれ。
ルームミラーにはメンバー4人の姿が小さく映る。
そして裏ジャケットにはメンバー写真が大写しに。
74年当時のメンバーはラルフ・ヒュッター(ヴォーカル、エレクトロニクス他)、フローリアン・シュナイダー・エスレーベン(ヴォーカル、エレクトロニクス、フルート他)、クラウス・レーダー(ギター、ヴァイオリン)、ヴォルフガング・フリューア(パーカッション)。
前作『RALF & FLORIAN』(73年)同様にラルフがまだ長髪なのも印象的だが、それ以上にびっくりするのは超ロン毛にヒゲでヒッピーにしか見えないクラウスの姿だろう。
この時点では、その後のようなヴィジュアル・イメージの統一はまったく図られていなかった。
で、80年代にCD化された時にはジャケットからダッシュボードが消え。
裏ジャケットのメンバー写真もなくなり。
更に2009年にリマスター再発された際にはジャケット・デザインそのものが完全に変更されてしまい。
(インナーにはオリジナルのデザインが見られるものの、やはりダッシュボードは消されていた)
15年の再発LPでようやく裏ジャケットのメンバー写真が復活したが、表ジャケットのダッシュボードはやっぱりないままで。
人間臭い部分を徹底的に排除しようとするような意志は、音楽性だけでなくアートワークでもどんどん強められていったKRAFTWERKだった。
その一方で、妙に人間臭い部分やもっさりした感覚を常に何処かに残し続けてきたKRAFTWERKでもあった。
この『AUTOBAHN』はもちろんのこと、その後のアルバムでも聴ける、キャッチーかつ朴訥なヴォーカルなんかはその最たるモノだろう。
あと、この頃はまだフローリアン・シュナイダーのフルートがかなりフィーチュアされていたり。
LPの裏ジャケットにはタイトル曲の歌詞がドイツ語と英語で表記されている。
“Wir fahr'n fahr'n fahr'n auf der Autobahn”=“We are driving, driving, driving on the Autobahn”
朴訥というか、ほとんど間抜けな感じのメロディが、ひたすら繰り返される。
大体この曲を聴いても、速度制限なしの高速道路、というアウトバーンのイメージが全然湧かんのですが。
なんだかもの凄くのんびりしてるし…。
とはいえ1974年にコレだ。
もちろん今聴くとテクノロジー的な限界が違い過ぎるし、なんとも言えんメロディのせいもあって牧歌的に聴こえてしまうかもしれないとはいえ。
それにしても…イギリスじゃDEEP PURPLEが「Burn」やってた頃に、コレですよ。
当時のドイツ人(特にデュッセルドルフ界隈)の感覚は、異質にもほどがあった。
同じ頃にアーサー・ブラウンのKINGDOME COMEがドラム・マシーンを導入しているが、アレは脱退したドラムの穴を埋めようとして結果的に酷薄で異様なビートを手に入れてしまった、怪我の功名的なモノだったと思っている。
KRAFTWERKのセンスは、むしろ(やはりドラム・マシーンを用いた)SLY & THE FAMILY STONEあたりに近かったのでは…と考えれば、後にアメリカの黒人たちがKRAFTWERKを“再発見”して、その後ハウスやテクノが生まれたのも納得、という気がする。
それで言うと77年の時点で“ジェイムズ・ブラウンとKRAFTWERKの邂逅”と言われた『THE IDIOT』を世に出したイギー・ポップとデイヴィッド・ボウイも凄かったと思うけど、話がどんどんそれていくのでこのへんにしておこう。
シンセサイザーと歌で22分半に渡ってアウトバーンのドライヴを描写したA面に対して、B面は全曲インストゥルメンタル。
「kometenmelodie」(Comet Melody)2部作→「Mitternacht」(Midnight)→「Morgenspaziergang」(Morning Walk)という曲名からも明らかなとおり、夜が更けて行き、そして朝を迎える…という流れを楽曲化したモノ、らしい。
それにしても「Mitternacht」の当時の邦題が「深夜そして姿なき足跡」…ってなんだそりゃ。
ドイツのエクスペリメンタルなロック全般をいわゆるプログレッシヴ・ロックの一種として扱い、“ジャーマン・プログレ”と一括りにしていた当時の日本での受容のされ具合が窺われる。
前述のとおり、俺が持っているLPは1977年のアメリカ盤なので、内袋には77年当時のマーキュリーのお勧め盤が広告のように並んでいる。
見ると、BACHMAN TURNER OVERDRIVE、RUSH(『2112』)、SPIRIT、ロッド・ステュアート…。
うん、やはりKRAFTWERKは特異過ぎた。
(2025.9.17.全面改訂)
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