DAVID GILMOUR+SYD BARRETTの10作

DAVID GILMOUR.jpgデイヴィッド・ギルモアのソロ・アルバム6作、シド・バレットのソロ・アルバム2作とレア音源集、そしてPINK FLOYDとシドのソロをまたいだベスト盤…の計10作が、紙ジャケ+Blu-spec CD2で一挙再発。







DAVID GILMOUR『DAVID GILMOUR』(画像)

1978年、デイヴィッド・ギルモアの1stソロ・アルバム。
PINK FLOYDのアルバム『ANIMALS』に伴う大規模なツアーを終えた77年後半から制作に取り掛かったという。
PINK FLOYD以前にギルモアと活動していたリック・ウィリス(ベース:元COCHISE。のちにFOREIGNER)、ウィリー・ウィルソン(ドラム:元QUIVER~COCHISE)とのトリオを基本に、WYNDER K. FROGのミック・ウィーヴァー(キーボード)も参加。
この時点で巨大な存在となったPINK FLOYDからいったん離れてソロを制作するうえで、昔馴染みのリズム・セクションがプロとしてシーンに残っていたのは、ギルモアにとって幸運だったはず。
基本的にはPINK FLOYDでのギルモア楽曲と同傾向ながら、ずっとシンプルでブルージーとも言える演奏が聴ける。


DAVID GILMOUR『ABOUT FACE』

1984年、デイヴィッド・ギルモアの2ndソロ・アルバム。
俺が洋楽初心者だった頃に大ヒットした「Blue Light」が収録されていて、個人的には一番馴染み深い。
プロデュースはボブ・エズリン。
前作と違って参加メンバーは超豪華で、ジェフ・ポーカロ(ドラム:TOTO)、スティーヴ・ウィンウッド(キーボード)、ピノ・パラディーノ(ベース)、ジョン・ロード(シンセサイザー:DEEP PURPLE)、アン・ダッドリー(シンセサイザー:THE ART OF NOISE)、エルトン・ジョンとの仕事で知られるレイ・クーパー(パーカッション)、ポール・ヤングと活動していたイアン・キュリー(キーボード)、そしてTHE WHOのピート・タウンゼンドが2曲で作詞している。
その後ソロでヒットを飛ばすサム・ブラウンがコーラスで参加しているのは、ジョン・ロードの引きがあったのかも知れない。
前作とはまるっきり違った、いかにも80年代的な華美なプロダクションとポップなメロディが聴ける1作。


DAVID GILMOUR『ON AN ISLAND』

2006年、前作から実に22年ぶりとなったデイヴィッド・ギルモアの3rdソロ・アルバム。
ギルモアとフィル・マンザネラ(元ROXY MUSIC)とクリス・トーマスの共同プロデュースとなっている。
ロジャー・ウォーターズが離れたあとにギルモアと共にPINK FLOYDを支え続けたリチャード・ライト(キーボード)が全面参加。
もちろんマンザネラも演奏に参加し、他にもデイヴィッド・クロスビー&グレアム・ナッシュ(ヴォーカル:CSN&Y)、ロバート・ワイアット(トランペット)、ジュールス・ホランド(キーボード:元THE SQUEEZE)、ジョージー・フェイム(キーボード)、ウィリー・ネルソン(ヴォーカル)、そしてロジャーに代わって80年代後半以降のPINK FLOYDのボトムを担当したガイ・プラット(ベース)、更にはPINK FLOYD最初期のメンバーだったボブ・クローズ(ギター)まで参加している。
音楽性はロジャー離脱後のPINK FLOYDを更にレイドバックさせたような、盤石のギルモア節。
全英1位、全米6位の大ヒット作となった。


DAVID GILMOUR『LIVE IN GDANSK』

2008年、デイヴィッド・ギルモアのソロとしては初のライヴ・アルバム。
『ON AN ISLAND』に伴うツアーの最終日、ポーランドのグダニスク造船所でのライヴをCD2枚に完全収録している。
楽曲はもちろん『ON AN ISLAND』収録曲と、PINK FLOYDの名曲群。
ギルモアを支えるバンドはガイ・プラット(ベース)とスティーヴ・ディスタニスラオ(ドラム)のリズム・セクションに、ガイ同様80年代後半以降のPINK FLOYDをサポートしてきたジョン・キャリン(キーボード)、そしてリチャード・ライト(キーボード)にフィル・マンザネラ(ギター、ヴォーカル)という鉄壁の布陣。
加えてオーケストラとの共演もあり。
『ON AN ISLAND』がまるっきり後期PINK FLOYD路線で、往年の名曲群と並べてもまったく違和感がないことがよくわかる。
一方でロジャー・ウォーターズ時代初期を代表する「Echoes」どころか、ギルモアが参加していなかったPINK FLOYDの1stアルバムから「Astronomy Domine」(イントロで大歓声)がほとんど完全再現のように演奏されるのには、ギルモアこそが(シド・バレットのスピリットを継承するバンドとしてのPINK FLOYDではなく)思想云々を抜きにした“PINK FLOYDの音楽そのもの”を継承しているのだという自負を感じずにいられない。
そこに賛否はあると思うが…。


DAVID GILMOUR『RATTLE THAT LOCK』

2016年、『ON AN ISLAND』から約10年ぶりとなったデイヴィッド・ギルモアの4thアルバム。
全英1位。
ギルモアとガイ・プラット(ベース)、スティーヴ・ディスタニスラオ(ドラム)のトリオを基本に、フィル・マンザネラ(キーボード、アコースティック・ギター)、ロジャー・イーノ(ピアノ)、デイヴィッド・クロスビー(ヴォーカル)、グレアム・ナッシュ(ヴォーカル)、アンディ・ニューマーク(ドラム)、ロバート・ワイアット(コルネット)、ジュールス・ホランド(ピアノ)といった豪華メンツを迎えて制作。
80年代後半以降のPINK FLOYDに聴ける重厚さを維持しつつ、『ABOUT FACE』のポップさ、キャッチーさにやや揺り戻した感のある作風。


DAVID GILMOUR『LIVE AT POMPEII』

2017年リリース。
PINK FLOYDでのレコーディング以来実に45年ぶり(!)に、16年7月、ポンペイの“円形闘技場”に登場したデイヴィッド・ギルモア。
その円形闘技場に2600人以上の観客を入れて録音されたライヴ・アルバム、CD2枚組。
これまたギルモアとガイ・プラット(ベース)、スティーヴ・ディスタニスラオ(ドラム)を中心に、ブライアン・フェリーやマドンナやシールと活動したセッションマン、チェスター・ケイメン(ギター、ヴォーカル)、THE ROLLING STONESとの活動でも有名なチャック・リーヴェル(キーボード:元THE ALLMAN BROTHERS BAND~SEA LEVEL)、かつてミニー・リパートンやマイケル・ジャクソンと活動し、あの「We Are The World」でキーボードを担当したグレッグ・フィリンゲインズ(キーボード)らを加えたバンドで、『ON AN ISLAND』『RATTLE THAT LOCK』、そしてPINK FLOYDの名曲群を演奏する。
「Wish You Were Here」での観客の大合唱は鳥肌モノ。
しかし『LIVE IN GDANSK』同様に、ロジャー・ウォーターズ色の強いレパートリーが完全に排除されているのには「やっぱりなあ…」と思ったりも。
その点このアルバムで「One Of These Days」のベースを弾いたガイ・プラットは大変だったろうな。
チェスター・ケイメンのヴォーカルが意外と重要な役割を担っている一方で、「The Great Gig In The Sky」でのスキャットがヴォーカリスト3人がかりというのは、ちょっとトゥーマッチな感も(苦笑)。


SYD BARRETT『THE MADCAP LAUGHS』

PINK FLOYDを脱退したシド・バレットが1970年にリリースした1stソロ・アルバム。
全英40位。
当時のSOFT MACHINEのメンバーとHUMBLE PIEのジェリー・シャーリー(ドラム)、元JOKERS WILDのウィリー・ウィルソン(ドラム)、そしてデイヴィッド・ギルモアとロジャー・ウォーターズが参加。
コレについては今更あれこれ言うことがあんまりない。
バンド編成の曲以上に、音数が少ないほどシドの狂気と天才がむき出しになる気がする。
シドの死後に遺族が語ったところでは、シドはいわゆる発達障害だったという。
世間一般に言うドラッグに伴う“狂気”というよりも、元々まったく違った感覚を持って生まれて来た男がありのままに歌ったのがコレだった、ということなのか。
もっとも、LSD他を介した感覚の異化がどれほど作用していたのかに関しては、今では真実はわからない。
ともあれ音数が圧倒的に少ないのに絢爛たるサイケデリック。
コレはいわゆるアシッド・フォークなどではない。
「わかる奴にはわかる」などとは絶対言いたくないのだが、一方でPINK FLOYDの1stアルバムやシドのソロを「退屈」と断じる人間がいまだにいるということは、多分「わからない奴にはわからない」世界なのだろう。


SYD BARRETT『BARRETT』

1970年、前作から1年足らずでリリースされたシド・バレットの2ndアルバム。
そこから推測する限り、当時のシドには相当の創作意欲があったはずなのだが、結局彼にとって最後のオリジナル・アルバムになってしまった。
「誰もシドをプロデュース出来ない」と言い残してロジャー・ウォーターズが制作から離れ(ロジャーはいつでも思わせぶり)、デイヴィッド・ギルモアとリチャード・ライトが前作同様ジェリー・シャーリーやウィリー・ウィルソンらとバックを務めている。
基本的には前作の方向性を受け継いでいるものの、リチャードの全面参加で音楽的にはややソフィスティケイトされた感もアリ。
前作に較べると聴きやすい一方で、切っ先はやや鈍いかも。
シドはこの後故郷ケンブリッジでトゥインク(ドラム:元PINK FAIRIES)とTHE STARSを結成したりするものの、結局リリースのないままシーンから消える。
(STARSの録音はトゥインクが持っているとも噂される。しかし今後世に出る可能性は限りなく低い)


SYD BARRETT『OPEL』

『BARRETT』から実に18年後(!)、1988年にいきなりリリースされたレア音源集。
コレがリリースされた時は大騒ぎだったのを覚えている。
ほとんどがギター弾き語りによるデモ音源だが、一方でSOFT MACHINEとの「Clowns And Jugglers」(「Octopus」の原曲)もあったり。
オリジナル・アルバム2作以上に重要な作品だとは思わないものの、天才で奇才で異才なシドの音楽の、“原型”に近い部分が垣間見られる1枚として非常に興味深い。


SYD BARRETT & PINK FLOYD『AN INTRODUCTION TO SYD BARRETT』

2006年にシド・バレットが60歳の若さで亡くなった後、10年に初期PINK FLOYDとシドのソロ活動をまたぐ形でリリースされたベスト盤。
今回初の紙ジャケ化となる。
オリジナル・アルバムを全部持っていれば無用の作品…かと思いきや、曲によりデイヴィッド・ギルモアがベースを重ねたり大胆にリミックスしていたりするので、賛否は別として無視を決め込むことも出来ない。
(特にPINK FLOYDの「Matilda Mother」はオリジナルとかなり違う感じに仕上がっている)
個人的にはPINK FLOYDの曲を外してシドのBBC音源を入れてくれた方がよかった…と思っているのだが、多分権利関係で無理だったのだろう。
これからシドを初めて聴くような人には、入門編としては最適かも知れない。


以上10枚、21日リリース。


(2025.9.22.改訂)

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