DOCTORS OF MADNESS/DARK TIMES

DOCTORS OF MADNESS DARK TIMES.jpg現在絶賛来日中のDOCTORS OF MADNESS(東京でのライヴ・レポートは後日某誌に載せます)、実に41年ぶりとなる4thアルバム。

オリジナル・メンバーはリチャード・ストレンジ(ヴォーカル、ギター、キーボード、プログラミング)ただ一人なので、実質的には彼のソロ・プロジェクトにも近い内容。
しかしリチャードは1980年以降ソロや様々なバンドやプロジェクト、ユニットなどで活動してきているワケで、それがわざわざDOCTORS OF MADNESSを名乗って作ったアルバム…70年代とサウンドは違えど、聴けばやはりDOCTORS OF MADNESSでしかないと納得させられる。

参加メンバーは非常に多く…リチャード・ストレンジの義理の娘であるリリー・バッド(ヴォーカル)、COMMUNARDSのサラ・ジェーン・モリス(ヴォーカル:かつてリチャードとDOCTORS OF MADNESSとして来日したデイヴィッド・クールターの妻でもある)、アダム・グレン(ヴォーカル)、XTCのアルバムに参加していたネヴィル・ファーマー(ヴォーカル)、元ATOMIC ROOSTER(!)でポール・ヤングのバンドでも活動したスティーヴ“ボルツ”ボルトン(ギター)、アタール・シャフィジアン(キーボード)、PJハーヴェイやニック・ケイヴとも活動したテリー・エドワーズ(サックス、トランペット)、COMUSやCRASS(!)に参加したこともあるディラン・O・ベイツ(ヴァイオリン、ピアノ、オルガン)、アンディ・ギャロップ(パーカッション)、そしてススム(ベース)とマッキー(ドラム)というSISTER PAULの二人。
(現在行われている日本ツアーは、リチャードとススム、マッキーによるトリオでDOCTORS OF MADNESSとして演奏している)
更にゲストとして、DEF LEPPARD(!)のジョー・エリオットと、ジョーのバンドやTHE QUIREBOYSでギターを弾いているポール・ゲリンが参加。
プロデュースはかつてDOCTORS OF MADNESSの2ndアルバム『FIGMENTS OF EMANCIPATION』(1976年)を手掛け、その後STONE ROSES他で有名プロデューサーとなったジョン・レッキーが担当している。

ブックレットにはリチャード・ストレンジ自身によるセルフ・ライナーノーツ的な一文が寄せられている。
“私は1951年に生まれ、そして我々は今、人生でこれまでになかったほどのかくも暗い時代を経験している。このアルバムは、そんな暗い時代に対する私の個人的なレスポンスだ。私の子供たちのため、孫たちのため、共に働いている学生たちのため、世界のあらゆる場所にいる若者たちのために、私は約束しよう、すべての人の自由、正義、平等、そして人権のための戦いをやめることはない、と。人間がよりよい世界を創造出来る確かな知識のもと、どうか私と肩を組んで立ち上がっていただきたい”
(俺が自分で訳したんで何処まで正確かはアレだけど、大体合ってると思う)
…かつてデカダンスの権化だった“キッド・ストレンジ”とも思えない、力強くも前向きな宣言だが、今の世界はそれほどよくない状態ということだろう。
80年代以降に退廃や背徳のイメージを脱して「This Is No Time」と歌ったルー・リードにも通じるモノを感じる。

アルバム自体は、全体に暗いトーンで統一されている。
プロト・パンクとして知られたDOCTORS OF MADNESSだが、このアルバムでは意図的にR&R色を抑え、基本的に多人数による生演奏でありながら、暗鬱なエレクトロ・ポップ風というかダーク・ウェイヴ風というか。

リチャード・ストレンジ自身はポリティカルな曲が多いと語っているが、アルバムを再生すると「So Many Ways To Hurt You」に始まり、「Walk Of Shame」「This Kind Of Failure」「This Is How To Die」などと、先の前向きな宣言からは程遠い陰鬱な曲名が並ぶ。
暗い世相を反映しつつ、皮肉とブラック・ユーモアをまぶすリチャード一流のセンスというか。
やはりというべきなのか、意識的にわかりやすく前向きな言葉で書かれたと思われるライナーノーツに較べると歌詞は皮肉っぽく、ひねくれた感じ。

一方で「This Kind Of Failure」とか「This Is How To Die」なんてがっくりなタイトルを持つ曲がやたらヌケの良いポップなメロディで歌われていたり。
先行シングルとなった「Make It Sop!」をはじめ、耳に残るサビを持つ楽曲が多い。
文学的でダダイスティックな歌詞だけでなく、70年代以降幾多の名曲を生み出してきたリチャード・ストレンジの作曲のセンスも健在。
(R&R色が薄まったためか、80年代以降のTHE STRANGLERS/ヒュー・コーンウェルあたりに近いモノを感じたりもする)

あと、女性ヴォーカル/コーラスの使い方。
かつてジョン・レッキーがプロデュースした『FIGMENTS OF EMANCIPATION』を髣髴とさせる。
このアルバム、やっぱり70年代の諸作と地続きだ。

俺がDOCTORS OF MADNESSのファンになったのは70年代のアルバムがCD化された90年代以降だが、それからでも既に四半世紀以上。
2003年の初来日でさえ信じられなかったのに、新作を聴ける日がやって来るとは。
とりあえず生きていれば少しはイイこともあるというモノだ。


『DARK TIMES』、本日リリース。


(2025.10.14.改訂)

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