V.A./都市通信

都市通信.jpg1月29日にリリースされていたが、入手が遅くなった。
実際、あちこちで品切れ・再入荷待ちの状態となっている話題作。

東京のポスト・パンク/ニュー・ウェイヴにおける幻のアルバムとして語られてきたオムニバスが、オリジナル・リリースからなんと40年を経て奇跡の再発。
1980年にオリジナルがリリースされた直後に企画者が失踪し、通信販売を申し込んでいた人たちの大半は代金を支払ったきり現物を手にすることはなかったといういわくつきの1枚。
そんなブツであるからして再発はあり得ないこととされていたのが、まさかのCD化となった。
そのあたりの事情については現在、当時の企画者である森未来(野本耕作)氏自身がネット上で明らかにしているので、ここではコレ以上触れない。

収録されているのはSynchronize、美れい、NON BAND、螺旋の4組。
アルバムをリリースしていてCD化もされているNON BAND以外は、初めて聴いた。
Synchronizeも螺旋もこのオムニバス以外には7inchやソノシートしか音源がなく、美れいは単独音源がなかったはず。
オムニバスに付随するブックレットでは“東京パンクシーン気骨の4バンド”とされているが、4バンドとも先に書いたとおりいわゆるポスト・パンク/ニュー・ウェイヴに分類されると思う。

Synchrionizeはシンセサイザーをフィーチュアした4人組で、意外なほどにポップなサウンドを聴かせる。
しかし歌詞は無機質というかダークな感じ。
曲によっては歌詞の乗せ方やヴォーカルのリズム感など、突然段ボールあたりに通じるモノを感じたり。

美れいはリズム・ボックスを用いた二人組。
シンプルにして冷たいマシーン・ビートに乗せて、突き放すように短い言葉を連続的に放つ。
やはりというかSUICIDEっぽいところもアリ。
このバンドはアルバム中最多の5曲を収録。
(LPのA面にSynchronizeと併せて8曲も収録されていた)

NON BANDは「Vibration Army」「Home」の2曲。
このバンドについては多くの説明は不要だろう。
アルバム『NON BAND』(1982年)のCD化に際してボーナス収録された曲でもある「Vibration Army」のプリミティヴでセクシャルな表現は、何度聴いてもぞくぞくさせられる。

螺旋はSynchronize同様にシンセサイザーを前面に出しているが、曲によってはオーソドックスなロックと言える演奏も聴かせる。
メンバー全員が曲を書いていたようで、収録された4曲はすべて作詞・作曲のクレジットが違い、それぞれに違ったテイスト。
突然テンポアップして疾走&シャウトしたかと思えばまたミドルに戻ったり、シンフォニックなキーボードが入ったりする「地獄に堕ちた勇者共」が特に面白い。

当時のブックレットが復刻されている他、ブックレットにはMr.エレクト(エレクトレコード)、タイロウ(原爆オナニーズ)、小西昌幸(「ハードスタッフ」)、野々村文宏(美術評論家・メディア論研究者:なんとこのオムニバスの録音に関わっていたとのこと)という濃い4氏によるライナーノーツが掲載されている。
スマホのアプリでも音楽が作れてしまう今と違い、リハーサルも録音も音源の制作も流通も何もかもが制約の中での手探りだった時代(俺が札幌のU.K.EDISONに通い始めた80年代半ばの時点でも、エサ箱の仕切りには”インディーズ”とかではなく“自主制作盤”とあった)、音源を出すのに多分今とは比べ物にならないほどの苦労と熱量が必要とされた時代の記録が、真空パックされて21世紀に蘇ったかのごとし。
当時の状況を知る4氏のライナーからも、時代の空気が伝わってくるようだ。

2020年の再発盤ベストの有力候補が早くも出た。


(2025.11.28.改訂)

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