SCORPIONS/LOVEDRIVE(1979)

SCORPIONS.jpg70年代末からの1~2年ほどの間に、イギリスを中心に新しいヘヴィ・メタル・バンドが大挙して登場すると共に、従来単にハード・ロックと呼ばれていたような中堅・ヴェテランのバンドの幾つかが一気にメタリックな方向に舵を切った。
それらの中でも代表的なのは、70年代末にそれまでの総決算的なライヴ・アルバムをリリースした後にメンバー交代して新しいサウンドを提示したJUDAS PRIESTとSCORPIONSだったと言えるだろう。
(同じようにライヴ・アルバム発表とメンバー交代を経ながら今ひとつ時代の波に乗りそこなったのがマイケル・シェンカーとピート・ウェイを相次いで失ったUFOだったか)
特に、まだNew Wave Of British Heavy Metalがそれほど顕在化していなかった1979年の時点で、いきなりドイツの地からえらくメタリックなアルバムを世に出したSCORPIONSはひとつの先駆けだったと思う。

SCORPIONSがサイケデリックな(?)『LONESOME CROW』でデビューしたのは1972年。
結成は実に65年という、ドイツのロック・シーンでも古株のバンドだったが、実際には2ndアルバム『FLY TO THE RAINBOW』(74年)をリリースした時点で名前を残しただけの別のバンドだったと言ってもイイ。
ともあれウルリッヒ・ロートとクラウス・マイネという、それぞれ凶悪とも言うべきギターとヴォーカルをフィーチュアして徐々に大きな存在となり。
しかしそのウルリッヒがライヴ盤『TOKYO TAPES』(78年)を最後に脱退。
元FARGOのマティアス・ヤプスを迎えたSCORPIONSがRCAからマーキュリーに移籍し(ドイツではハーヴェスト/EMIエレクトローラ)、新たな方向性に踏み出したのが『LOVEDRIVE』だった。

この時点では、マティアス・ヤプスの真価は今ひとつわからなかった。
『LONESOME CROW』に参加し、その後UFOに加入~脱退していたマイケル・シェンカーが「Another Piece Of Meat」「Coast To Coast」「Lovedrive」の3曲で弾いているとクレジットされていたものの、実際には他の曲でもかなり弾いていたそうだし。
しかしこのアルバムで重要なのは誰がリードを弾いているかということよりも、それまでソングライティングをウルリッヒ・ロートと分け合っていたルドルフ・シェンカーが全曲の作曲を主導したことだったろう。
ウルリッヒ在籍時の、超絶にハードながらも暗く湿った、いかにもヨーロッパ的なハード・ロックから、キャッチーなリフ押しのメタリックなサウンドへ。
結果として『LOVEDRIVE』は全米55位を記録し、SCORPIONSがアメリカで認められるきっかけとなる。
(一方で近年のシェンカー兄弟の不仲は、その発端をこのアルバムでのクレジットの曖昧さにまで遡るという…)

ミドルの「Loving You Sunday Morning」(‟日曜の愛劇”というとんでもない邦題!)から始まるのがいきなりメタルの王道を外している感じがするものの、そこからスピーディーな「Another Piece Of Meat」へ、という流れはむしろアリだろう。
バラードの「Always Somewhere」から、ユルいがメロディアスなインストゥルメンタル「Coast To Coast」(いかにもマイケル・シェンカーらしいソロが聴ける)と続けてアナログA面が終わり。

レコードをひっくり返すと、いきなりとんでもなくハードでアグレッシヴな「Can't Get Enough」が飛び出す。
この曲でのクラウス・マイネのヴォーカルは本当に凄まじい。
ロバート・プラントもイアン・ギランも既に盛りを過ぎていた1979年の時点で、ハイトーン・ヴォーカリストとしてはロブ・ハルフォード、グレアム・ボネットと並ぶ三大巨頭と言えたのでは。
ルドルフ・シェンカーのソリッドかつ耳にこびりつくリフも素晴らしい。
(一部のファンの間では「実はマイケル・シェンカーよりルドルフの方が上手い」という説が根強くあったモノだ。…ってかAC/DCのヤング兄弟でもそういうのあったな)

何より凄いのは(?)レゲエとヘヴィ・メタル/ハード・ロックが完璧に融合してしまった異色中の異色ナンバー「Is There Anybody There?」(これまた‟瞑想のレゲエ”という意味不明な邦題…)かも知れない。
初めて聴いた時、黒人音楽のひとつであるレゲエに手を出すというのは、やはり黒人のジミ・ヘンドリックスを崇めるウルリッヒ・ロートの置き土産だったのでは?…などと思ったモノだったが。
実際にクレジットを見ると、立役者はハーマン・ラレベル。
なるほど、ドラマーならではのリズムに対する雑食アプローチに他のメンバーが付き合ったか。
(‟とんとことんとん・どんすこどんどん♪”というフィルインの入れ方も完璧にレゲエのそれをモノにしている)
ちなみにハーマンは「Loving You Sunday Morning」「Another Piece Of Meat」にもクレジットされていて、作曲面での貢献度はなかなか大きかったようだ。

そしてタイトル曲(「Lovedrive」とか「Blackout」とか2語を1語にまとめるのはこのバンドの趣味なのか)を経て、絶品と言えばあまりに絶品な泣きのバラード「Holiday」。
それ以前にも「Yellow Raven」などバラードを演っていたSCORPIONSだったが、その後のバンドを大スターの座に導くパワー・バラード路線はこのアルバムで確立したと言ってイイだろう。
全8曲約36分半、A面B面のあったアナログLP時代の作品としては極めて完璧に近い曲の流れになっていると思う。
大ヒットした『BLACKOUT』(1982年)や『LOVE AT FIRST STING』(84年)の陰に隠れがちながら、素晴らしいアルバムだ。
そして「Holiday」のフェイドアウトで「はぁ~…」とか言ってまた最初から聴き直す。

あろうことか(?)リリース後のツアーにはリード・ギタリストとしてマイケル・シェンカーを帯同させたSCORPIONSだったが、マイケルはすぐに脱退して自身の道へ。
一時期宙ぶらりんな立場に置かれたマティアス・ヤプスは、その後SCORPIONS不動のリード・ギタリストとして活躍することになる。

それにしても、このジャケット…。
3rdアルバム『IN TRANCE』(1975年)以来、ほとんど‟炎上狙い”のように物議を醸すジャケットを送り出し続けたSCORPIONS。
ここではあのヒプノシスがバンドの意を見事に汲んで(?)、また何とも言えないデザインを。
アメリカでは当然のように発禁→ジャケット差し替えとなり、CD化の際も初期のアメリカ盤は差し替えヴァージョンだった…。


(2025.12.10.全面改訂)

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