映画『JUST ANOTHER』

JUST ANOTHER.jpg1982年結成、今年で実に38年のキャリアとなる、愛知県が世界に誇るパンク・バンド、the 原爆オナニーズ…のドキュメンタリー映画。
監督は2017年の『MOTHER FUCKER』(https://lsdblog.seesaa.net/article/201707article_14.html)でデビューした大石規湖。

アルバムを持っていたりライヴを観たりということがなくても、パンク・ロックを聴いている人でthe 原爆オナニーズの名前を聞いたことがないという人はまずいないだろう。
それだけ、愛知を通り越して日本のパンク界に燦然と輝くthe 原爆オナニーズなワケであります。
今手元にオムニバス『THE INDIES LIVE SELECTION 86 TO 87』があるのだが、収録されたバンドの中で一度も解散せずに現存しているのはthe 原爆オナニーズだけのはず。

解散したこともないが、インディーズ・ブームを並走していた他の多くのバンドのようにメジャー・デビューしたこともなく。
メジャー・デビューどころか名古屋から拠点を移すことすらなく、メンバー全員が会社勤めなどの生業を持ちながらバンド活動を続けて38年。
(ヴォーカルのTAYLOWは早期退職したのだそうで)
メンバー交代を重ね、21世紀に入ってギタリストが二人になったりした(しかも一時期は横山健が参加)こともあったものの、現在の4人(TAYLOW、EDDIE、JOHNNY、SHINOBU)がそろってから既に20年近い。
TAYLOWとEDDIE(ベース)は既に60代。
彼らは何故続いてきたのか、何故続けているのか。
この映画はそこに迫っている。

一応最低限のバイオグラフィは説明されるし、過去の映像も少し挿まれたりするものの、この映画はthe 原爆オナニーズの歴史をたどるようなドキュメンタリーではない。
あくまで現在進行形のバンドにスポットを当て、今の彼らの姿を映し出す。
なので4人のメンバー以外に登場する人たちは、1stアルバム『NUCLEAR COWBOY』のリリース元であるアルケミー・レコードのJOJO広重をはじめとして、非常に少ない。
その分メンバー自身の言動に焦点が絞られている。

いろいろな意味でカメラと被写体の”近さ”が際立っていた『MOTHER FUCKER』に較べると、『JUST ANOTHER』はメンバー4人と大石規湖監督との間に距離を感じる。
何しろ親子ほどの年齢差がある(はずだ)し、TAYLOW気難しい感じに見えるし。
しかし気難しく見えるTAYLOWの言動も、自分たちの音楽とパンク・ロックに真摯であるが故ということが、観ているうちにじわじわと伝わってくる。
メンバーそれぞれの監督との距離感から、各メンバーのパーソナリティも垣間見えるような。
そしてクライマックスの「今池まつり」で遂にカメラはステージに突入し、メンバーに肉薄する。
地域のお祭りなのにthe 原爆オナニーズで老若男女が大盛り上がりというとんでもないカオスと圧倒的な楽しさ。
生活の場としての名古屋に密着したパンク・バンドの生きざまを見事に映し出していると思う。

少しではあるが、the 原爆オナニーズが「消毒GIG」に出演した際のGAUZEの演奏が観られるのもお得(?)。
あの『パンク天国』シリーズ執筆者の中核だったTAYLOWの”パンク博士”たるコレクションが垣間見られるのも楽しい。
(あと、ちょこちょこ知ってる人たちが出てくるのでニヤニヤしながら観てた)
何よりも、『MOTHER FUCKER』同様に生活と音楽の関係、市井の生活者であることとパンクであることが相克ではなくフツーに併存しているひとつのあり方、が捉えられている映画だと思う。
バンドをやっている人はもちろん、フツーに働きながら創作をしたり趣味を追及しているような多くの人に観てほしい1本。


『JUST ANOTHER』、10月24日(土)より新宿K's cinema他にてロードショー、以降全国順次公開。


(C)2020 SPACE SHOWER FILMS


(2026.1.19.改訂)

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