しかしライヴ活動自体は活発に行なわれていた。
88年に遠藤賢司バンドを結成し、89年から湯川トーベン(ベース)、嶋田吉隆(ドラム)とのトリオとなる。
89年にはソノシート「壱円玉よ永遠なれ!」が、90年にはシングル「エンケンのミッチー音頭」とVHS『純音楽』が登場し。
そして89~90年にかけての遠藤賢司バンドのライヴをCD2枚組で収録したこのアルバムが出た。
『オムライス』から8年経とうとしていた。
俺がこのアルバムを最初に聴いたのは、友人からダビングしてもらったカセットテープでだった。
「なんか、随分音が悪いなあ」と思った。
のちにCDで改めて聴き直し。
「やっぱり音質悪い!」となった(笑)。
音質ではなく勢い重視で選曲したらしい。
そして、繰り返し聴く毎に、この作品はこのブートレグのような音でなくてはイカンのだと納得するようになった。
CD2枚組約85分で11曲しか入っていない。
各レパートリーはライヴで長大に生まれ変わっていた。
長大なだけでなく爆音。
70年代からフォークの枠などとっくに超越していた遠藤賢司、自身の名を冠したパワー・トリオを得て、長年吸収し続けたロックの滋養をアンプから大音量で吐き出した。
(80年代のミュージックマガジンだったかレコードコレクターズだったかでエンケンさんがMC5やAMON DUULを紹介していたのを思い出す)
「不滅の男」(ラウドでノイジーなギターからリズム・セクションが加わり、歌に入ったところで初めて「不滅の男」だとわかるようなアレンジ)や「満足できるかな」などが熱いのは当然のこと、あの「外は雨だよ」の中でも”Light My Fire!”と歌われるのだった。
一方でアコースティックの「ねえ踊ろうよ」(ギター・ソロは湯川トーベン)やピアノ・ソロ「もうすぐ雪が降る」など、変化に富んだ自在なステージ。
何より、収録時間の約3割を占める新曲「輪島の瞳」。
ここでは25分45秒あるが、ライヴによっては1時間近い時もあったという。
そのギターのサウンドが琵琶に例えられることもある遠藤賢司、ここでは轟音のエレキギターを存分に鳴らす一方で、まさに琵琶法師の語り物のごとき”輪島大士物語”が展開する。
その語り口、そして演奏の迫力たるや。
(渋谷CLUB QUATTROの後ろの壁際にいるスーツ姿の輪島がありありと頭に浮かぶではないか)
そしてエンケンさんはここでもSEX PISTOLSに言及する。
ここには当時既にプロレスを引退していた輪島へのエールだけでなくプロレスへのエールがあり、一方で輪島やプロレスを語ることがエンケンさん自身の生きざまを問い直すことに直結するのだという意識がある。
それにしても、途中に挿まれる嶋田吉隆のドラム・ソロさえもがエンケンさんの語法にきっちり呼応するようなモノになっているのが凄い。
吉田よりも上手いドラマーは世に数多いるはずだが、コージー・パウエルだろうとマルコ・ミネマンだろうと、ここまで”「輪島の瞳」の一部としてのドラム・ソロ”はそう叩けまい。
「不滅の男」で始まったライヴは、「不滅の男」で終わる。
最初の「不滅の男」のバンド・サウンドに対し、最後の「不滅の男」の主役は、遠藤賢司のアコギ弾き語りにかぶさる観客の大合唱。
コレがまた熱い…。
「猫が眠っている」と「プンプンプン」には石塚俊明(ドラム)がゲスト参加。
そしてその後、遠藤賢司バンドのドラマーは正式にトシに交代。
このライヴ盤が出た1991年にはシングル「史上最長寿のロックンローラー」も出ている。
ただし、新たなオリジナル・アルバム『夢よ叫べ』(96年)までは更に5年待たねばならなかったのだが。
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