1970年8月23日、アンディ・ウォーホルの”スーパースター”の一人だったブリジッド・ポークがMAX'S KANSAS CITYに持ち込んだカセット・レコーダーで録られたモノラル録音。
アトランティック・レコーズはブリジッドからテープを5000ドルで買い取ったとか。
バンドは1970年6月24日から8月28日までの2ヵ月間、MAX'S KANSAS CITYで1日2回公演の契約をしていたという。
(いわゆるハコバンというやつですね)
4thアルバム『LOADED』リリースの直前だったが、妊娠したモーリン・タッカー(ドラム)はアルバムのレコーディング中にバンドを離れ。
この時点でのパーソネルはルー・リード(ギター、ヴォーカル)、スターリング・モリソン(ギター)、ダグ・ユール(ベース、ヴォーカル:元THE GRASS MENAGERIE)、ビリー・ユール(ドラム)の4人。
モーリンに代わって『LOADED』で2曲叩いたビリーはダグの弟で、当時16歳(!)。
デビュー時のメンバーは半分になっていたが、会場にはモーリンも客として訪れていたらしい。
MCに続いて「I'm Waiting For The Man」が始まった時点で、バンドがすっかり変容していることが明らかになる。
スネアとバスドラとタムとハイハットで”フツーの”ドラミングを聴かせるビリー・ユールは決して下手ではなく、それどころか年齢を考えれば大したモノだと思うが。
一方でビリーのあまりにもフツーにR&Rなプレイのために、あのTHE VELVET UNDERGROUNDがここではちょっと上手い学生バンドのようにも、シンプルなフォーク・ロック・バンドのようにも聴こえてしまう。
逆に言えば、かつて禍々しく聴こえた初期の楽曲の数々も、こうしてアレンジが違えば実は元々シンプルでキャッチーなR&Rに他ならなかったことがわかる、ということでもあるのだけれど。
(よりによって「Femme Fatale」の途中で客が高笑いしているのが聴こえる)
オリジナル盤に収録された10曲のうち、「Lonesome Cowboy Bill」「I'll Be Your Mirror」「New Age」の3曲はダグ・ユールが歌う。
かつてニコが歌った「I'll Be Your Mirror」にも、当然ながらかつての妖気も優美さも微塵もない。
ウィリアム・S・バロウズのことを歌ったという「Lonesome Cowboy Bill」なんかは、ルー・リードがMCで「ロデオについての歌だよ」と言う通り、快活なカントリー・ロックみたいに聴こえる。
バンドを存続させるためにビリー・ユールを迎え入れた判断が誰のモノだったのか知らないし、ルー・リード自身もそれを望んだからこそこのラインナップとなったはずだが。
しかしここでの演奏を聴くと、ルーがバンド活動を通じて求めたモノがこの場にあった、とも思えない。
まあ、それだからこそバンドを抜けたんだろうけど。
(実際のところはどうだったのだろうか。「ありがとう」を連呼するこのライヴ盤でのルーの軽妙なMCからは、とてもじゃないが最後のライヴみたいな感じはしないというか)
ともあれルーはその後『TRANSFORMER』や『BERLIN』といったソロ作で再び退廃の色を濃くしていく。
でも、ここでの骨組みだけみたいなシンプルな、かつポップな演奏も個人的には大好き。
ルーが地声で歌う「Sunday Morning」も聴きモノだ。
ちなみにブリジッド・ポークの隣にでも座っていたのか、男性客の声がやたら大きく入っているが、コレは若き日のジム・キャロル(https://lsdblog.seesaa.net/article/201607article_434.html)なんだそうで(!)。
ルー・リードが脱退した後、ダグ・ユールはすぐさまギターに転じ、THE GRASS MENAGERIEで一緒に活動していたウォルター・パワーズ(ベース:元THE LOST)を迎えて残りのライヴ日程をこなしたらしい。
バンドには『LOADED』に続くアルバム1枚分の契約があり、ダグは自分が中心となって活動を続ける気だったようだが、1970年9月にリリースされた『LOADED』は売れず。
ダグとウォルターが書いていた新曲もアトランティックに受け入れられず、レーベルはダグを中心とするバンドに新作を作らせるよりもルー在籍時のライヴ盤を出した方が、まだ幾らか商品価値があるだろうと判断したらしい。
それでリリースされたのがこのライヴ・アルバムだった。
曲順は実際のライヴとは違っていて、ルー脱退後にテキトーに出されてしまったアルバムに違いないと思っていたら、曲を選んで曲順を入れ替えたりといった編集は、ルー自身が行なったのだという。
THE VELVET UNDERGROUNDはその後1973年まで、ダグ・ユールとウォルター・パワーズを中心に、これまたTHE LOST~GRASS MENAGERIEのウィリー・アレキサンダー(キーボード、ヴォーカル:もちろんのちにTHE BOOM BOOM BAND)や、ビリー・ユール、復帰したモーリン・タッカー、マーク・ナウシーフ(ドラム:のちにIAN GILLAN BAND他)などが出入りしながらニューヨークやニュー・イングランドあたりのバーで演奏を続け。
そしてあの『SQUEEZE』(73年)をリリースすることになる。
その後ダグは何故か(?)ルー・リードのソロ作に参加したりもして、地味ながら近年も活動している様子。
このライヴ盤はのちに”デラックス・エディション”もリリースされ、そちらには当日の曲順通りに17曲が収録されている。
元の音源を録音したブリジッド・ポークは昨年7月に80歳で亡くなったという。
この記事へのコメント