そこでこの名盤を。
まあ今更俺が言えるようなことなんてそんなにないけどね。
1969年、自主制作で500枚だけプレスされ、2週間で完売。
ジャケットも違っていた。
翌70年にリバティ・レコーズが権利を買い取り、有名なこのジャケットで再発売。
この巨大ロボットみたいなの、”ギャラクタス”っていうアメコミのキャラクターなんですってねえ。
この時点ではバンド名はTHE CANとなっている。
(違和感…)
俺が初めて聴いたのは、友人に借りた1983年の国内盤LP。
帯に”1969年!! 君は生まれていたか?”と書いてあったやつ。
のちにそのレコードを安く譲り受けた。
友人は「これでうちのレコード棚から黒人はいなくなった」と言い放った(…)。
CANのオリジナル・アルバムとしては、以前再編作『RITE TIME』(1989年)を紹介したが。
この『MONSTER MOVIE』は、『RITE TIME』同様にマルコム・ムーニーが歌っている。
ヴェトナム戦争の時代、徴兵を逃れて渡欧していたアメリカ黒人の彫刻家。
それまで歌ったことなどなかったという。
いわゆるクラウト・ロックといえば、執拗な反復を特徴とするバンドは多い。
マルコム・ムーニーの場合、歌も執拗に反復する。
「Father Cannot Yell」での”アッア、アアアア”とか、「Mary, Mary, So Contrary」での”まりまりまりまりまりまり”とか、「You Doo Right」での”Doo Right, You Doo Right”とか。
明かに様子のおかしい人。
正直あんまり友達になりたくないタイプ。
結局『MONSTER MOVIE』リリース後に精神を病み、アメリカに帰国してしまった。
(実際のところ、精神を病んでしまったのでは帰国しても徴兵されることはない、というのもあったのだろう)
一方、アカデミックに音楽を学んだキーボードとベース、フリー・ジャズで活躍したドラムに、若く意欲的なギター、という4人のドイツ人がこの時点で自分たちのロックを真に独自なモノとするために、イカレポンチな歌を聴かせる素人の黒人…の存在は、必要欠くべからざるピースだったのだろう。
土俗的でバーバリックなドラミングに狂気そのもののような歌唱が乗る「You Doo Right」は、ヤキ・リーベツァイトがいなくてもマルコム・ムーニーがいなくてもあり得なかったはず。
活動前期は一貫してケルン郊外の古城で2トラックで録音した即興演奏を編集してアルバムを作っていたというCAN。
基本的にすべてのベースが即興だったが故、固定したアレンジの楽曲を固定的なレパートリーとして演奏し続ける意識は限りなく希薄。
当然ながら、『MONSTER MOVIE』の楽曲をライヴでダモ鈴木が歌うなんてことはなかったはず。
強力な1回性の演奏を、アルバム制作の機会がある毎にその時その時で音盤に刻んでいったのがCANだった。
そして、マルコム・ムーニーがいなくなった後、やはりプロフェッショナルなシンガーではない日本人ヒッピーを後任に迎えるのも必然であったと言える。
ってかさあ、ギターソロとかもないしベースはボンベンボンベン上下してるだけだしドラムは1969年のドイツ人とは信じられないぐらいトライバルだし(いや、同時期にAMON DUULもいたか)、多少なりとも根っこにあるアカデミックさみたいなのが感じられるのはほとんどキーボードだけだよね。
何だろうなこりゃ。
やっぱりイカレてるよ。
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