映画『金持を喰いちぎれ』

EAT THE RICH.jpgレミーが出演した最も初期の映画としてタイトルはそれなりに知られているのではと思われつつ、実際に観た人はかなり少なそうなカルト・コメディ、1987年以来実に36年ぶりとなる再公開。


ロンドンじゅうの金持ちが集まる高級レストラン「BASTARDS」(またえらい店名だな…)で働いていたウェイターのアレックス(ラナ・ペレイ)。
攻撃的な性格で、元々接客態度に問題のあったアレックスはかねてよりマネージャーににらまれていたが、遂にクビになってしまう。
一方同じロンドンでは、品性下劣な乱暴者ながら”実行力”(主にフィジカル的な方)を発揮する超タカ派の内務大臣・ノッシャー(ノッシャー・パウエル)が人気を集めていた。
MI5の司令官でありながら実はソ連のスパイだったフォーチュン(ロナルド・アレン)は、右腕である謎の男・スパイダー(レミー)と共にノッシャーの追い落としを企み、ノッシャーに高級コールガールのフィオナ(フィオナ・リッチモンド)を接触させてスキャンダルをこしらえようとするものの、日頃から下品なマッチョキャラが人気となっているノッシャーを失脚させることは出来ず。
任務に失敗した上、一発で妊娠させられたフィオナは、路頭に迷うことになってしまう。
仕事も家も失ったアレックスは、一部の上流階級ばかりが肥え太る現状を許せず、仲良くなったホームレスのロン(ロン・ター)や田舎暮らしの変人・ジミー(ジミー・ファッグ)、そしてフィオナを引き入れて、底辺の人間たちで社会をひっくり返そうとする。
彼らに気づかれないようにバックアップするフォーチュンとスパイダー。
その甲斐あって「BASTARDS」のマネージャーや同僚たちに復讐を果たしたアレックスは、店名を「EAT THE RICH」と改め。
店は新たな”名物”となったひき肉料理とアレックスの横柄な接客で「BASTARDS」時代以上の人気を得るが、一方でアレックスたち(そしてフォーチュンとスパイダー)は、上流階級と資本主義社会に一矢報いようとしていたのだった…。


…というのが、おおまかなあらすじ。
俺はその昔、日本語字幕なしのVHSで観ていて、台詞はほとんど理解出来ていなかったのだが、大体のストーリーだけ把握していた。
今回初めて字幕付きで観て、そのデタラメっぷりに改めてめまいがした。

当時の英国で”ポスト・モンティ・パイソン”として注目されたコメディ集団”コミック・ストリップ”の一員だったピーター・リチャードソンが監督した物語は、あれほど毒々しかったモンティ・パイソンを遥かに凌ぐ真っ黒けな社会風刺を展開し。
結果、1987年の公開当時は空前の大コケを記録している。
何故36年も経った今になって再公開?…と思うが、今の日本の方が、当時よりもずっと理解されやすい作品では。
一方で、アレックスたちのように怒りと共に立ち上がるような人は、今も昔も日本にはいないのかもなあという気も。

主演のラナ・ペレイは、当時日本のディスコや有線でもかかりまくっていた「Pistol In My Pockets」で有名なシンガー。
「Pistol In My Pockets」は劇中でも流れ、サントラ盤にも収録されている。
(ラナは近年映画評論もやっているとか)
映画の中では”黒人”とされているが、実際には(見ての通り)インド系。
ともあれ、有色人種のトランスジェンダーという、36年前には今より遥かに生きづらかったであろう彼(彼女)は、この映画の主役にはぴったりだったと思う。

アレックスを支えるロン役のロン・ターは『スターウォーズ』シリーズにも端役で出たことがあるというヴェテランで、当時50歳。
1997年に60歳で亡くなっている。
何とも言えない味わいのジミー役、ジミー・ファッグは、英国の有名コメディアン。
(当時58歳)
ヒロインと言えなくもないフィオナ役のフィオナ・リッチモンドは70年代に英国で人気だったセクシー女優。
(当時42歳だったはずだが、そうは見えない)
ノッシャー役のノッシャー・パウエルはヘビー級のプロボクサーから俳優に転じた人で、2013年に84歳で亡くなった。
フォーチュン役のロナルド・アレンは英国のTVドラマで長く活躍した俳優だったが、91年に60歳で亡くなっている。

どうかするとそれらの俳優以上に存在感を見せつけるのがレミー。
棒読みっぽかった『悪魔の毒々モンスター』シリーズ以前の出演映画ながら、意外と自然な名演技を見せてくれる。
(当時41歳には見えないなあ)
ソ連の手先(?)という役どころもユニーク。
この映画にはワーゼル、フィル・キャンベル、フィル・テイラーも出演していて、演奏シーンまであったりする。
もちろん全編にMOTORHEADの曲が用いられていて、サントラ盤にも収録されている。
(ワーゼルのソロ曲「Bess」も)

そして、カメオ出演で全編を彩る、綺羅星のごときロック・スター(および音楽関係者)の面々。
ポール・マッカートニー、ビル・ワイマン、シェイン・マガウアン、ヒュー・コーンウェル、スパイダー・ステイシー、ジュールス・ホランド、サンディ・ショウ、スティーヴ・ウォルシュ。
更にアンジー・ボウイやマイルズ・コープランドまで。
(映り込むだけではなく、大体みんな台詞がある)

およそデタラメなお話ながら、とにかく毒気の強い、ロックな一作。
デイヴィッド・ボウイやSEX PISTOLSなどの曲名や歌詞が台詞にちりばめられているのも、音楽好きにはたまらないはず。
少なくともこのブログを御覧の皆様なら必見でしょう。


『金持を喰いちぎれ』、シネマート新宿/シネマート心斎橋にて7月14日(金)より公開、ほか全国順次公開
公式サイト:https://bastards-eattherich.jp


© 1987 National Film Trustee Company Ltd. All rights reserved.

この記事へのコメント